二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

文字の大きさ
297 / 475

応援

しおりを挟む
 急ぎ家まで戻るとジークたちにも説明し思い付く限りの準備をする。

 「必要な物は俺たちが用意するから縁とルーは卵に付いててやれ」

 ジークの言葉に甘え部屋に入るとタオルを敷き詰めたベッドの上に卵をそっと寝かせた。
 隣を見ればルーも緊張してるようでそわそわと部屋中を歩き回っている。

 「ルー、来て」

 それはセインたちの時にも見たもので微笑ましかったが、そう彷徨かれては縁が落ち着かないため呼び寄せると卵を眺める縁の椅子になってもらう。

 「夢の中での記憶が残っているかは分かりません。けどあの子であることは変わりませんから一緒に頑張っていきましょう」

 「うん」

 夢の中での出来事はどこまで覚えているか、はたまた全くなくなっているのかは聞いてみないことには分からない。
 それでも何かが変わるわけではなく、愛しい我が子を大切に育てていきたい。

 「産まれる時はどちらの姿なんですかね?ドラゴンですかね?それとも夢で会った姿かな?」

 「ドラゴンじゃない?人型なら卵の必要なかったはずだから」

 それもそうか。
 少し考えれば分かったはずだがやはり縁も緊張していたらしい。
 ルーに寄りかかり卵を見つめる。

 「そういえば何度か遊びましたけど性別を聞いたことがありませんでした。ルーは分かります?」

 「男」

 なんとも簡潔な言い方である。
 何故分かったのか聞いてみれば可愛いけど縁に抱っこされるのを見て妬いたからと言われ笑ってしまった。

 「そんなことで?本当ですか?」

 まさかそんなことで性別が分かるのかとルーを見るが真剣な顔で頷かれ笑いが止まらない。
 縁はどちらでも構わないが、ルーは容姿が自分に似てしまったためせめて性別は女がよかったと嘆いていた。

 「ならこの子の次は女の子がいいですね」

 「次?」

 きょとんとするルーの胸に背を預けると微笑み見上げる。

 「まだ先は長いですからね。私も女の子が欲しいので頑張りましょう?」

 「……え?あ…あのそれって…うん!うん、オレ頑張るから!」

 何も1人の番に子が1人しか出来ないというわけではない。
 人間である縁の寿命は彼らに比べ短いが、その中でも残せるものはたくさんあるはずだ。
 その1つが子であり、縁が産み皆で育てることで次へと想いを繋いでいってくれる。
 
 「きっと男の子より女の子の方が大変ですよ。頑張って下さいねパパ」

 「うん!頑張る!」

 ちがう意味でまた落ち着きがなくなってしまったが、心配し不安になるよりはいいだろう。
 それから数時間ジークたちも集まり皆で卵を見守っていたが何故かうんともすんとも言わない。
 やはりまだ早かったのではないかとロンが言ってきたが、縁は首を振り卵を見つめ続ける。

 「みんなここで待ってますからね。大丈夫ゆっくりでいいんです。ゆっくり……ゆっくり…ゆっくりでいいから、頑張って」

 縁には分かっていた。
 卵の中で自身の子が必死に頑張っているのを。
 だからこそ焦らずゆっくりでもいいからと応援する。
 ママ、ママと呼ぶ声が聞こえたが手は出さない。
 代わりに頑張れと優しく語りかけ呼ぶ声に応えてやる。

 「………ねぇ、ルー」

 「なに?」

 「この子の名前。もし本当にルーが言う通り男ならショウというのはどうですか?空高く飛ぶ、空を翔るという意味です。誰より元気に、誰よりも空高く、誰よりも皆を照らしてくれる子に育って欲しい」

 どうだろうかと見上げれば、これ以上ないほど優しい顔で微笑まれた。

 「いいね。すごくカッコよくていい名前」

 「ドラゴンとしてもこれ以上ないほど相応しい名前だ」

 ルーだけでなくロンも賛成だと頷いてくれた。
 
 「なら後は産まれるのを待つだけですね。頑張って、ショウ

 この子はどれぐらい大きくなるだろう?
 この子はどれだけ可愛いだろう?
 容姿はルーだが縁にはどれだけ似るだろう?
 大きくなったら縁を乗せてくれるだろうか?
 長い時間の中、しかし決して退屈ではなく子の未来を考える。
 途中繋たちが待ちきれず寝てしまいジークたちが隣の部屋に寝かせに行ってくれた。

 「ルーもそろそろ卒業しましょうか」

 「え?」

 「私の名前。呼び方は変わりませんけど意味を知らなかったでしょう?」

 それはセインたちにも話した縁の名前の意味。
 そんなこと知らずとも呼び方には変わりはないが知ったことで何かを感じてくれたら嬉しいと思う。
 ルーたちには知らない響きだろうが何と名付けてもいい中何故そう付けたのか、どういう想いが込められているのか。
 たった名前1つ。
 けれど親から貰う初めての贈り物。
 
 「人と人を繋ぐ線。ルーに出会えた奇跡。縁と縁が繋がって今の私があるんです。もちろんこの子ともきっと繋がっている」

 「……縁。縁、か。いい名前だね」

 今はもういないが、短い思い出の中で愛してくれた両親の想いを番である彼らが理解してくれたことが嬉しい。
 
 「大好きですよルー」

 「オレも大好きだよ、縁」

 振り返り頬にキスすればルーもお返しにと額にキスしてくれようとした瞬間ーー

 「あ、動いた」

 「え?」

 見れば先程まで微動打にしてなかった卵が急に激しく震え始めるのだった。

 「だから男だって言ったんだよ」

 ルーが何やら呟いていたが卵を見つめるのに集中していた縁には聞こえていないのだった。


 

 

 

しおりを挟む
感想 121

あなたにおすすめの小説

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件

表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。 病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。 この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。 しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。 ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。 強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。 これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。 甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。 本編完結しました。 続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください

牛獣人の僕のお乳で育った子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!

ほじにほじほじ
BL
牛獣人のモノアの一族は代々牛乳売りの仕事を生業としてきた。 牛乳には2種類ある、家畜の牛から出る牛乳と牛獣人から出る牛乳だ。 牛獣人の女性は一定の年齢になると自らの意思てお乳を出すことが出来る。 そして、僕たち家族普段は家畜の牛の牛乳を売っているが母と姉達の牛乳は濃厚で喉越しや舌触りが良いお貴族様に高値で売っていた。 ある日僕たち一家を呼んだお貴族様のご子息様がお乳を呑まないと相談を受けたのが全ての始まりー 母や姉達の牛乳を詰めた哺乳瓶を与えてみても、母や姉達のお乳を直接与えてみても飲んでくれない赤子。 そんな時ふと赤子と目が合うと僕を見て何かを訴えてくるー 「え?僕のお乳が飲みたいの?」 「僕はまだ子供でしかも男だからでないよ。」 「え?何言ってるの姉さん達!僕のお乳に牛乳を垂らして飲ませてみろだなんて!そんなの上手くいくわけ…え、飲んでるよ?え?」 そんなこんなで、お乳を呑まない赤子が飲んだ噂は広がり他のお貴族様達にもうちの子がお乳を飲んでくれないの!と言う相談を受けて、他のほとんどの子は母や姉達のお乳で飲んでくれる子だったけど何故か数人には僕のお乳がお気に召したようでー 昔お乳をあたえた子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!! 「僕はお乳を貸しただけで牛乳は母さんと姉さん達のなのに!どうしてこうなった!?」 * 総受けで、固定カプを決めるかはまだまだ不明です。 いいね♡やお気に入り登録☆をしてくださいますと励みになります(><) 誤字脱字、言葉使いが変な所がありましたら脳内変換して頂けますと幸いです。

この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

COCO
BL
「ミミルがいないの……?」 涙目でそうつぶやいた僕を見て、 騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。 前世は政治家の家に生まれたけど、 愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。 最後はストーカーの担任に殺された。 でも今世では…… 「ルカは、僕らの宝物だよ」 目を覚ました僕は、 最強の父と美しい母に全力で愛されていた。 全員190cm超えの“男しかいない世界”で、 小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。 魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは── 「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」 これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。

僕だけの番

五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。 その中の獣人族にだけ存在する番。 でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。 僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。 それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。 出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。 そのうえ、彼には恋人もいて……。 後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。

愛を知らない少年たちの番物語。

あゆみん
BL
親から愛されることなく育った不憫な三兄弟が異世界で番に待ち焦がれた獣たちから愛を注がれ、一途な愛に戸惑いながらも幸せになる物語。 *触れ合いシーンは★マークをつけます。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も皆の小話もあがります。 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

処理中です...