329 / 475
気まぐれ
しおりを挟む
「うーん、仕方ない。ロンでいいので手伝ってくれますか?」
言い方!!
「……それで快く引き受けてやる奴がいるなら俺はそいつを褒め称えてやりたい」
最近自分へのエニシの態度がおざなりになっているのは気のせいではないと思う。
「なら自分で自分を褒めてあげて下さい。こっちこっち」
「………」
もう怒るだけムダだと素直についていくとハイと調理用のナイフを渡された。
何となく受け取ってしまったが、なぜ自分がこれを渡されたのか分からずエニシを見れば笑顔で更にメロンを渡された。
「……あぁ、繋たちのオヤツか?」
「半分アタリで、半分ハズレです。繋たちへのオヤツではあるんですけど、これは皮を剥くんじゃなくて中をくり抜いてほしいんです」
意味が分からない。
どうせ食べるなら皮を剥いて食べればいいだけではないのか?
顔に出ていたのだろう、エニシがクスクス笑いながら教えてくれた。
「勿論そのまま食べるのも楽ですし美味しいですけど、どうせなら見て楽しむのも偶にはいいかなと。子どもたちも喜んでくれそうですし。こういうのはエルが得意というか器用ですしいつも頼んでいたんですけど、今日は子どもたち遊んでくれているみたいなので」
「で、通りすがりの俺が捕まったわけか」
理由は分かったが何とも下手な誘い方だったと苦笑いした。
「今なら試食第2号の特権がついてきますよ」
「………仕方ないな」
ルーではないが、ロンもまたエニシに餌付けされている自覚があるのだった。
「ん?待て。2号?なら1号はだ………ああ」
見ればキッチンの片隅で尻尾をふりふりしているフェンリルの姿に納得してしまった。
なんだろう………なにか複雑な気分になるが結局エニシだから仕方がないと自分を納得させるのだった。
言われるがままメロンの中をくり抜いていけば、今度はリンゴやオレンジの皮剥きを頼まれる。
「ロン、ロン」
呼ばれ差し出されたスプーンに反射的に口を開ければーー
「これはーー酒か?」
「大人たちにもご褒美がないとね?子どもたちには別に蜂蜜を入れたアイスにしておきました」
冷たさと共に口中に広がる酒の味に美味いなと感じた。
蜂蜜入りのものも食べさせてもらったが、これは確かに子どもたちにはいいだろう。
2人で会話するということがあまりなかったが、話してみれば思いの外違和感はなく、むしろ楽しいとも思った。
「ーーうん。完成です!綺麗でしょ?」
「まぁいいんじゃないか?」
ロンによってくり抜かれたメロンの中には色とりどりの果物が詰め込まれ、隠れて見えないが下にはアイスも入っている。
それなりに手間はかかったが、確かに目にも楽しく味も美味しいとなれば頑張ってよかったと思えた。
それから皆を呼びに行き出来たものを見せれば、子どもたちは目を輝かせて喜んでいた。
「ロンが手伝ってくれました。中にも仕掛けがあるので食べてみて下さい」
「おいしい~」
「アイのすきなりんご!」
「バナナ」
「ぎゃう?」
楽しそうに子どもたちが食べ進め、中にアイスが入っていると分かるとこれまた嬉しそうに食べてくれる。
「………言ってくれればオレが手伝ったのに」
ボソリと呟かれた声に振り返れば恨みがましい目でエルに睨まれていた。
いつもなら自分がいただろう場所にロンがいるのが気に食わないのだろう。
「繋たちと遊んでいたんだろ?」
「言ってくれればやめてたし!そこはオレの立ち位置だったのに…」
と言われても自分も誘われた立場なのでどうしろと言うのか。
断っていたらいたで何故手伝わないんだと責めてくるに決まっている。
「ありがとうエル。なら今度はエルにお願いしますね」
「うん」
態度が違い過ぎやしないだろうか?
自分にはズルイと睨み付けてくるのに、何故エニシが言えばすんなり納得するのか。
また恨みを買いたくはないため言わないが、「元凶はそいつだ!」と心の中で叫ぶのだった。
「ロンも手伝ってくれてありがとうございました。おかげで美味しいものが出来ました」
笑顔で礼を言われてしまえば文句を言うことも出来なくなり、それを嬉しいとも思ってしまったのだから自分も相当エニシに甘いのだろう。
「まぁ俺もそれなりに楽しかったからな。美味いもの食えたし満足ーー繋?どうした?」
袖を引かれる感触に下を見れば子どもたちがわっと抱きついてきた。
「おいしかった!」
「リンゴすき!」
「バナナも」
「ぎゃう?」
ありがとうと口々に礼を言われ、これは手伝って良かったと心から思えた。
そしてエルがこの場所を譲りたくないと言っていた理由も納得出来るのだった。
「………お前も睨んでないでさっさと食え」
「兄貴ばっかズルイ」
言われるがまま手伝っただけなのに何故自分はこうも睨まれなければいけないのかと元凶であるエニシを少しばかり恨むのであった。
言い方!!
「……それで快く引き受けてやる奴がいるなら俺はそいつを褒め称えてやりたい」
最近自分へのエニシの態度がおざなりになっているのは気のせいではないと思う。
「なら自分で自分を褒めてあげて下さい。こっちこっち」
「………」
もう怒るだけムダだと素直についていくとハイと調理用のナイフを渡された。
何となく受け取ってしまったが、なぜ自分がこれを渡されたのか分からずエニシを見れば笑顔で更にメロンを渡された。
「……あぁ、繋たちのオヤツか?」
「半分アタリで、半分ハズレです。繋たちへのオヤツではあるんですけど、これは皮を剥くんじゃなくて中をくり抜いてほしいんです」
意味が分からない。
どうせ食べるなら皮を剥いて食べればいいだけではないのか?
顔に出ていたのだろう、エニシがクスクス笑いながら教えてくれた。
「勿論そのまま食べるのも楽ですし美味しいですけど、どうせなら見て楽しむのも偶にはいいかなと。子どもたちも喜んでくれそうですし。こういうのはエルが得意というか器用ですしいつも頼んでいたんですけど、今日は子どもたち遊んでくれているみたいなので」
「で、通りすがりの俺が捕まったわけか」
理由は分かったが何とも下手な誘い方だったと苦笑いした。
「今なら試食第2号の特権がついてきますよ」
「………仕方ないな」
ルーではないが、ロンもまたエニシに餌付けされている自覚があるのだった。
「ん?待て。2号?なら1号はだ………ああ」
見ればキッチンの片隅で尻尾をふりふりしているフェンリルの姿に納得してしまった。
なんだろう………なにか複雑な気分になるが結局エニシだから仕方がないと自分を納得させるのだった。
言われるがままメロンの中をくり抜いていけば、今度はリンゴやオレンジの皮剥きを頼まれる。
「ロン、ロン」
呼ばれ差し出されたスプーンに反射的に口を開ければーー
「これはーー酒か?」
「大人たちにもご褒美がないとね?子どもたちには別に蜂蜜を入れたアイスにしておきました」
冷たさと共に口中に広がる酒の味に美味いなと感じた。
蜂蜜入りのものも食べさせてもらったが、これは確かに子どもたちにはいいだろう。
2人で会話するということがあまりなかったが、話してみれば思いの外違和感はなく、むしろ楽しいとも思った。
「ーーうん。完成です!綺麗でしょ?」
「まぁいいんじゃないか?」
ロンによってくり抜かれたメロンの中には色とりどりの果物が詰め込まれ、隠れて見えないが下にはアイスも入っている。
それなりに手間はかかったが、確かに目にも楽しく味も美味しいとなれば頑張ってよかったと思えた。
それから皆を呼びに行き出来たものを見せれば、子どもたちは目を輝かせて喜んでいた。
「ロンが手伝ってくれました。中にも仕掛けがあるので食べてみて下さい」
「おいしい~」
「アイのすきなりんご!」
「バナナ」
「ぎゃう?」
楽しそうに子どもたちが食べ進め、中にアイスが入っていると分かるとこれまた嬉しそうに食べてくれる。
「………言ってくれればオレが手伝ったのに」
ボソリと呟かれた声に振り返れば恨みがましい目でエルに睨まれていた。
いつもなら自分がいただろう場所にロンがいるのが気に食わないのだろう。
「繋たちと遊んでいたんだろ?」
「言ってくれればやめてたし!そこはオレの立ち位置だったのに…」
と言われても自分も誘われた立場なのでどうしろと言うのか。
断っていたらいたで何故手伝わないんだと責めてくるに決まっている。
「ありがとうエル。なら今度はエルにお願いしますね」
「うん」
態度が違い過ぎやしないだろうか?
自分にはズルイと睨み付けてくるのに、何故エニシが言えばすんなり納得するのか。
また恨みを買いたくはないため言わないが、「元凶はそいつだ!」と心の中で叫ぶのだった。
「ロンも手伝ってくれてありがとうございました。おかげで美味しいものが出来ました」
笑顔で礼を言われてしまえば文句を言うことも出来なくなり、それを嬉しいとも思ってしまったのだから自分も相当エニシに甘いのだろう。
「まぁ俺もそれなりに楽しかったからな。美味いもの食えたし満足ーー繋?どうした?」
袖を引かれる感触に下を見れば子どもたちがわっと抱きついてきた。
「おいしかった!」
「リンゴすき!」
「バナナも」
「ぎゃう?」
ありがとうと口々に礼を言われ、これは手伝って良かったと心から思えた。
そしてエルがこの場所を譲りたくないと言っていた理由も納得出来るのだった。
「………お前も睨んでないでさっさと食え」
「兄貴ばっかズルイ」
言われるがまま手伝っただけなのに何故自分はこうも睨まれなければいけないのかと元凶であるエニシを少しばかり恨むのであった。
56
あなたにおすすめの小説
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件
表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。
病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。
この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。
しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。
ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。
強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。
これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。
甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。
本編完結しました。
続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
記憶を無くしたら家族に愛されました
レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない…
家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる