331 / 475
知ったからには
しおりを挟む
ご機嫌で自分を洗ってくる双子にリルは苦笑いするしかなかった。
「私がいない時に子どもたちに簡単なお仕事を任せようと思うんですけどリルも手伝ってくれますか?」
「構わない」
彼のことだ、そう無理難題を言う筈がないだろうと出来ることならと頷いたのだがまさかこのことだったとは。
以前にも血を落とすためと双子には洗われたことはあったが、再びその機会が訪れようとは思っていなかった。
こうして彼らと家族になったのも偶然であり奇跡なのだ。
本来ならフェンリルである自身に近づこうと思うものなど人間どころか魔獣ですらそういない。
倒そうと刃を向けてくる者が殆どの中、自分たちは家族だというエニシに負けたのだ。
出会い頭に噛み付き傷付けたにもかかわらず怒ることなく怪我を治し魔力を分け与えてくれた。
こんな人間もいるのかと驚き、そんなお人好しで大丈夫かと心配にもなった。
ふわふわですねと抱きつき笑う彼に毒気を抜かれ、望まれるまま家族になった。
自分が従魔になったのだから危険なことなどありはしないだろうと思っていた矢先、エニシが攫われ救出に向かえば泣き助けを求める彼の姿に自分の無力さを思い知った。
出会ってから初めて見た涙に守ってやれなかったと後悔で胸がいっぱいになり、遅くなってすまなかったと謝れば逆に助けに来てくれてありがとうと礼を言われてしまった。
大切なものを失っていたかもしれないのだと傷付くエニシを見て初めて恐怖というものを感じた。
自分の中でそれほど彼の存在が大きくなっていたのだと。
大好きだと笑う姿。
ふわふわですねと抱き付き顔を埋める姿。
運動がてら狩りに出かけ、帰ってくれば当たり前におかえりと迎えてくれる彼。
初めて出来た帰る場所に自覚はなかったが、居心地の良さは感じていた。
「…………たすけて」
漏らされた震える声に、自身の血で赤く染まるエニシの姿に怒りのまま男に噛み付いた。
自分がもう少し早く着いていれば、自分にもしもっと力があったなら、彼が傷付き涙することはなかったのではと何度も考えた。
「リルがいてくれたから助かったんです。ありがとうリル。助けに来てくれて本当にありがとう」
文句の1つでも言ってくれれば謝ることもできたが、そう言われてはもう何も言うことが出来ずその小さな身体に自分から擦り寄るのだった。
もしかしたら失っていたかもしれない温もりに、ああこれが家族かと実感した。
「リルきもちいい?」
「リルきれいなった?」
エニシほどではないが一生懸命洗ってくれる双子に返事をするように軽く鳴いてやれば、身体を拭かれ完了だと双子が笑顔で駆けていく。
彼に似た愛らしい子どもたち。
母親を目の前で傷付けられながらも自分を家族だと受け入れこうして笑ってくれる。
「偶には頼みも聞いてやらねばな」
誰でもない自分に手伝ってほしいと頼み込んできたエニシ。
自身のふわふわな毛を気に入っている彼だからこそ子どもたちに洗うよう頼んだのだろう。
毛の具合など気にしたことはなかったが、時々一緒にする昼寝はリルも気に入ってたりする。
彼の魔力を感じ寄り添い寝るのはとても気持ちよく、エニシもエニシでふわふわで気持ちいいと眠れるのならば嬉しかった。
「さて我は褒美に何を作ってもらおうか」
以前作ってもらったカラアゲというものも美味かったが、アイスという冷たいものも美味しかった。
それまで魔力で腹を満たしていた自分にとって彼の料理はかなりの驚きであり、それを教えてもらい感謝である。
「両方でいいか。そのためにも食材は多い方がよかろう」
育ち盛りの子どもたちもいるのだ。
彼の番である獣人もいることから作り過ぎて捨てるということにもきっとならない。
少ないより多くあって困ることないだろうと狩りにでもいくかと立ち上がる。
発情期はまだ数日かかるため、それまでに準備をしておこうと決心すると褒美にと作ってもらう材料をとりに森へ向かうのだった。
「私がいない時に子どもたちに簡単なお仕事を任せようと思うんですけどリルも手伝ってくれますか?」
「構わない」
彼のことだ、そう無理難題を言う筈がないだろうと出来ることならと頷いたのだがまさかこのことだったとは。
以前にも血を落とすためと双子には洗われたことはあったが、再びその機会が訪れようとは思っていなかった。
こうして彼らと家族になったのも偶然であり奇跡なのだ。
本来ならフェンリルである自身に近づこうと思うものなど人間どころか魔獣ですらそういない。
倒そうと刃を向けてくる者が殆どの中、自分たちは家族だというエニシに負けたのだ。
出会い頭に噛み付き傷付けたにもかかわらず怒ることなく怪我を治し魔力を分け与えてくれた。
こんな人間もいるのかと驚き、そんなお人好しで大丈夫かと心配にもなった。
ふわふわですねと抱きつき笑う彼に毒気を抜かれ、望まれるまま家族になった。
自分が従魔になったのだから危険なことなどありはしないだろうと思っていた矢先、エニシが攫われ救出に向かえば泣き助けを求める彼の姿に自分の無力さを思い知った。
出会ってから初めて見た涙に守ってやれなかったと後悔で胸がいっぱいになり、遅くなってすまなかったと謝れば逆に助けに来てくれてありがとうと礼を言われてしまった。
大切なものを失っていたかもしれないのだと傷付くエニシを見て初めて恐怖というものを感じた。
自分の中でそれほど彼の存在が大きくなっていたのだと。
大好きだと笑う姿。
ふわふわですねと抱き付き顔を埋める姿。
運動がてら狩りに出かけ、帰ってくれば当たり前におかえりと迎えてくれる彼。
初めて出来た帰る場所に自覚はなかったが、居心地の良さは感じていた。
「…………たすけて」
漏らされた震える声に、自身の血で赤く染まるエニシの姿に怒りのまま男に噛み付いた。
自分がもう少し早く着いていれば、自分にもしもっと力があったなら、彼が傷付き涙することはなかったのではと何度も考えた。
「リルがいてくれたから助かったんです。ありがとうリル。助けに来てくれて本当にありがとう」
文句の1つでも言ってくれれば謝ることもできたが、そう言われてはもう何も言うことが出来ずその小さな身体に自分から擦り寄るのだった。
もしかしたら失っていたかもしれない温もりに、ああこれが家族かと実感した。
「リルきもちいい?」
「リルきれいなった?」
エニシほどではないが一生懸命洗ってくれる双子に返事をするように軽く鳴いてやれば、身体を拭かれ完了だと双子が笑顔で駆けていく。
彼に似た愛らしい子どもたち。
母親を目の前で傷付けられながらも自分を家族だと受け入れこうして笑ってくれる。
「偶には頼みも聞いてやらねばな」
誰でもない自分に手伝ってほしいと頼み込んできたエニシ。
自身のふわふわな毛を気に入っている彼だからこそ子どもたちに洗うよう頼んだのだろう。
毛の具合など気にしたことはなかったが、時々一緒にする昼寝はリルも気に入ってたりする。
彼の魔力を感じ寄り添い寝るのはとても気持ちよく、エニシもエニシでふわふわで気持ちいいと眠れるのならば嬉しかった。
「さて我は褒美に何を作ってもらおうか」
以前作ってもらったカラアゲというものも美味かったが、アイスという冷たいものも美味しかった。
それまで魔力で腹を満たしていた自分にとって彼の料理はかなりの驚きであり、それを教えてもらい感謝である。
「両方でいいか。そのためにも食材は多い方がよかろう」
育ち盛りの子どもたちもいるのだ。
彼の番である獣人もいることから作り過ぎて捨てるということにもきっとならない。
少ないより多くあって困ることないだろうと狩りにでもいくかと立ち上がる。
発情期はまだ数日かかるため、それまでに準備をしておこうと決心すると褒美にと作ってもらう材料をとりに森へ向かうのだった。
52
あなたにおすすめの小説
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件
表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。
病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。
この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。
しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。
ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。
強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。
これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。
甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。
本編完結しました。
続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
記憶を無くしたら家族に愛されました
レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない…
家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる