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お互いに
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「それにしても本当に不思議ね。あの人も獣人ではあったけど姿は変えられなかったわ」
「そうですね。私もこの子以外に見たことはありません」
どうしてそうなかったのか、もしかしたらアレンたちにも可能なのかは分からないが確かに今までこんなこと見たことはない。
「でも随分縁さんに懐いているみたいだけど本当にいいの?」
「実は…子どもが出来たんです。今お腹の中にいるんですけど、これからこの子にかかりきりになると思うのでどうしてもこの子のことまで見てられるか不安がありまして…」
カイ自身は納得しているのかといえば、納得はしていない。
やはり縁の側にいたいと言ったカイにならばと条件を出したのだ。
「この子が産まれて落ち着くまで、その間だけでもいいので待っていてくれませんか?」
縁とて嫌がるカイに無理強いしたいわけではない。
どうしても嫌だと言うのであれば仕方がないが、もしかしたら人と手を取り合えるいい機会になるかもしれないと期待はしていた。
「カイがどうしても他の子たちと合わないと言うのであれば迎えに来ますから。ここで生活してみて、私と同じようにカイを受け入れてくれる人間もいるんだと知ってほしいんです。全てが全て人間は敵なのではないと知ってほしい」
「おいていかない?」
本当に迎えに来てくれるのかと不安なのだろう。
「どう言うのが正しいのか分かりませんが、カイが嫌いで置いて行こうとしているわけではないんです。君の世界を私だけで終わらせてほしくない。けどそれがカイの望むものなのか、受け入れられないと首を振るなら絶対に迎えに来ます」
カイへ、人と手を取り合って欲しいという希望。
子どもたちへ、獣人への恐怖と蔑みをなくして欲しいという希望。
「カイがいてくれたから私も、お腹の子も無事でした。カイが助けてくれたから今こうして笑っていられる。だからカイにも幸せになってほしい。色んな人と話して、たくさん友達と遊んで、たくさん美味しいものを食べて、毎日楽しいと笑ってほしいんです」
縁に懐いてくれたのは嬉しい。
だが縁を頼り、その他を拒絶していては何も変わらない。
縁が望む通りにならなくても構わないが、何か変わるきっかけにでもなってくれたらと思いはしている。
「色んなものを見て、色んな人と話して、色んなことを考えて、それでももし私といたいと言うのであればその時は迎えに来ます。約束します」
どれだけ縁が望んでも出来ることと出来ないことがある。
カイが望まないならそれを無理強いはしない。
おいでと手を伸ばせば抱きついてきた小さな身体をギュッと抱きしめてやる。
「カイのことが好きだから幸せになってほしい。カイのことが好きだから笑って欲しいんです」
そのために今は少し我慢してほしいと言えば、漸く頷いてくれたのだった。
「あの子たちならきっと大丈夫だと思うわ。ただ戸惑っているだけなのよ」
彼女の言う通り、見たことはあっても自分たちで獣人を買ったことも使ったこともない子どもたちは確かに戸惑っているのだろう。
「きっと貴方以外の人が連れて来てたらこうはいかなかったわ。エニシさんが連れて来たから子どもたちは戸惑ってはいるけど、泣きも怒りもしていないのよ」
それだけ子どもたちの中で縁は信頼が厚いのだと言う。
昔が嘘のように大変だが楽しい毎日をくれた縁を彼らは信頼してくれている。
「みんなエニシさんが大好きなのよ。そう、あの子だって最近毎日のように次はいつ来るのって聞いてきて可愛いったらないわ」
「あの子?」
誰のことだと聞けば、笑って向けられた方向に顔を向けーー
「少し見ない間に大きくなりましたね、サウル」
おいでと手招きすれば、アレンに少し警戒しながらも近寄ってくる。
暫く会わない内に身長も伸び、肉付きもよくなっていた。
「会いに来るのが遅れてごめんなさい。元気にしていましたか?」
「……うん」
素っ気ない返事だが、以前のようにこちらを警戒する態度も睨みつけるような目もしていない。
むしろどこか拗ねているような態度に、どうやらかなり待たせ過ぎてしまったようだと反省した。
「よかった」
先程まで畑仕事でもしていたのか頬に付いていた土を払ってやると、頑張っているようで何よりと頭を撫でてやる。
その手を払いのけることもせず受け入れる姿に微笑む。
「今でも十分頑張ってくれている君に頼むのは申し訳ないですが、この子を任せてもいいですか?」
「そいつ、じゅうじんだろ?」
当たり前だが、先程の変身する姿も揺れる耳と尻尾も彼はずっと見ていたのだ。
「こわい、ですか?」
その姿を珍しそうに見ながらも彼は首を振った。怖くはないと。
「耳と尻尾。少し君たちと違いますがそれだけです。君たちを傷付けるつもりも襲いかかることもありません」
「アンタが連れてきたんだ。そんなこと思ってない。けど使えないやつなら追い出すから」
言い方はいいとは言えないが、素直にいいよと言えない彼なりの言葉なのだろう。
「君ならそう言ってくれると思いました。ありがとう」
人は成長する生き物だとはよくいったものだ。
「そうですね。私もこの子以外に見たことはありません」
どうしてそうなかったのか、もしかしたらアレンたちにも可能なのかは分からないが確かに今までこんなこと見たことはない。
「でも随分縁さんに懐いているみたいだけど本当にいいの?」
「実は…子どもが出来たんです。今お腹の中にいるんですけど、これからこの子にかかりきりになると思うのでどうしてもこの子のことまで見てられるか不安がありまして…」
カイ自身は納得しているのかといえば、納得はしていない。
やはり縁の側にいたいと言ったカイにならばと条件を出したのだ。
「この子が産まれて落ち着くまで、その間だけでもいいので待っていてくれませんか?」
縁とて嫌がるカイに無理強いしたいわけではない。
どうしても嫌だと言うのであれば仕方がないが、もしかしたら人と手を取り合えるいい機会になるかもしれないと期待はしていた。
「カイがどうしても他の子たちと合わないと言うのであれば迎えに来ますから。ここで生活してみて、私と同じようにカイを受け入れてくれる人間もいるんだと知ってほしいんです。全てが全て人間は敵なのではないと知ってほしい」
「おいていかない?」
本当に迎えに来てくれるのかと不安なのだろう。
「どう言うのが正しいのか分かりませんが、カイが嫌いで置いて行こうとしているわけではないんです。君の世界を私だけで終わらせてほしくない。けどそれがカイの望むものなのか、受け入れられないと首を振るなら絶対に迎えに来ます」
カイへ、人と手を取り合って欲しいという希望。
子どもたちへ、獣人への恐怖と蔑みをなくして欲しいという希望。
「カイがいてくれたから私も、お腹の子も無事でした。カイが助けてくれたから今こうして笑っていられる。だからカイにも幸せになってほしい。色んな人と話して、たくさん友達と遊んで、たくさん美味しいものを食べて、毎日楽しいと笑ってほしいんです」
縁に懐いてくれたのは嬉しい。
だが縁を頼り、その他を拒絶していては何も変わらない。
縁が望む通りにならなくても構わないが、何か変わるきっかけにでもなってくれたらと思いはしている。
「色んなものを見て、色んな人と話して、色んなことを考えて、それでももし私といたいと言うのであればその時は迎えに来ます。約束します」
どれだけ縁が望んでも出来ることと出来ないことがある。
カイが望まないならそれを無理強いはしない。
おいでと手を伸ばせば抱きついてきた小さな身体をギュッと抱きしめてやる。
「カイのことが好きだから幸せになってほしい。カイのことが好きだから笑って欲しいんです」
そのために今は少し我慢してほしいと言えば、漸く頷いてくれたのだった。
「あの子たちならきっと大丈夫だと思うわ。ただ戸惑っているだけなのよ」
彼女の言う通り、見たことはあっても自分たちで獣人を買ったことも使ったこともない子どもたちは確かに戸惑っているのだろう。
「きっと貴方以外の人が連れて来てたらこうはいかなかったわ。エニシさんが連れて来たから子どもたちは戸惑ってはいるけど、泣きも怒りもしていないのよ」
それだけ子どもたちの中で縁は信頼が厚いのだと言う。
昔が嘘のように大変だが楽しい毎日をくれた縁を彼らは信頼してくれている。
「みんなエニシさんが大好きなのよ。そう、あの子だって最近毎日のように次はいつ来るのって聞いてきて可愛いったらないわ」
「あの子?」
誰のことだと聞けば、笑って向けられた方向に顔を向けーー
「少し見ない間に大きくなりましたね、サウル」
おいでと手招きすれば、アレンに少し警戒しながらも近寄ってくる。
暫く会わない内に身長も伸び、肉付きもよくなっていた。
「会いに来るのが遅れてごめんなさい。元気にしていましたか?」
「……うん」
素っ気ない返事だが、以前のようにこちらを警戒する態度も睨みつけるような目もしていない。
むしろどこか拗ねているような態度に、どうやらかなり待たせ過ぎてしまったようだと反省した。
「よかった」
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その手を払いのけることもせず受け入れる姿に微笑む。
「今でも十分頑張ってくれている君に頼むのは申し訳ないですが、この子を任せてもいいですか?」
「そいつ、じゅうじんだろ?」
当たり前だが、先程の変身する姿も揺れる耳と尻尾も彼はずっと見ていたのだ。
「こわい、ですか?」
その姿を珍しそうに見ながらも彼は首を振った。怖くはないと。
「耳と尻尾。少し君たちと違いますがそれだけです。君たちを傷付けるつもりも襲いかかることもありません」
「アンタが連れてきたんだ。そんなこと思ってない。けど使えないやつなら追い出すから」
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人は成長する生き物だとはよくいったものだ。
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