二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

文字の大きさ
343 / 475

そう、ですか……

しおりを挟む
 なんだかんだありながらもやはり子どもの順応性は高いものだ。
 あれほど渋っていた双子も、自分たちとは違う耳と尻尾に戸惑っていた子どもたちも、数時間も一緒に過ごせば昔からの友人のように仲良く遊んでいる。

 「ね?大丈夫だったでしょう?」

 「ですね。子どもだからでしょう。大人だったらきっとこうはいきませんでした」

 今までそうだと教えられて育ってきた大人たちに同じことをしてもこう上手くはいかなかっただろう。
 楽ししそうに駆け回る子どもたちに微笑む。

 「さて。あれほど動き回ってはすぐお腹を空かせてしまいますね。アレンももうすぐ帰ってくるでしょうから夕飯の準備をーー」

 「今日は当たりでしたね。お久しぶりです、エニシさん」

 そんな声に振り返れば懐かしい顔に笑みが溢れた。

 「お久しぶりですフレックさん。お元気でしたか?」

 笑顔で挨拶してくるフレックに縁も久しぶりの再会に嬉しくなった。

 「はい。貴方は………少し痩せましたか?」

 「………」

 何故縁の周りにいる人たちは縁の体型を一々覚えているのか?
 押し黙る縁に正解だと察したのかフレックが声を上げて笑う。

 「訓練で近くまで来たので安全確認ついでに挨拶でもと。最近はあまり貴方の顔を見ることが出来なくて隊長も寂しがってますよ」

 ………あの人が?
 フレックの言葉を疑うわけではないが、それはないだろうと笑って返そうとしーー

 「アンタが隊長が言ってたエニシ?」

 「どちら様でしょうか?」

 フレックの背後、数人控えていた男たちの中から1人の男が縁の前に出てきた。
 見覚えのない顔に新しく入った新兵のようだが、誰か尋ねても男は答えることなくジロジロと縁を品定めするかのように見下ろしてくるだけである。
 明らかに見下すような態度に不愉快しかない。

 「ラジいい加減にーー」

 「縁!」

 「アレンお帰りなさい」

 どういうことかと問う縁の視線にフレックが止めようとするが、そこへちょうどアレンが両手いっぱいに捕まえた兎や鹿を手に戻ってきた。

 「すごいですね。子どもたちが喜びます」

 「だろうな。けど縁もちゃんと食えよ。じゃないと腹の子も育たないだろ」

 どうやら子どもたちにというより縁のために獲ってきてくれたらしい。
 頑張りますと笑う縁にアレンもホッと息を吐いていた。

 「何?こいつアンタの?にしても馴れ馴れしいだろ。獣風情が何人間様と対等に立とうとしてんだか。アンタも主人なら躾ぐらいしっかりしとけよ」

 「てっめぇっーー」

 「アレン。アレンありがとう。私のために」

 怒りに男に襲いかかろうとするアレンの手を掴むと大丈夫だと微笑む。
 男が何を言おうと関係ない。
 アレンの縁を想う優しさはきちんと伝わっている。

 「今日は隊長さんはお城ですか?」

 「は?当たり前だろ。隊長はーー」

 「どうやらお忙しいらしい。……自身の犬の躾も出来ないほどに。ねぇ?フレックさん?」

 聞いているのは貴方ではないと男を無視するとフレックを見る。
 ピクリと揺れた肩に縁の言葉の意味を理解したのだろう。
 だが怒ることはせず、逆に申し訳ないと頭を下げていることから男の態度に問題があることは分かっているようだ。

 「これから夕食にするところだったんです」

 「マジで?いいじゃん。隊長に聞いてたんだよ。アンタの作るメシ美味いって。あの隊長が言うんだからさぞかしーー」

 「ですので今日はもうお引き取りいただけますか?」

 「え?」
 「あ?」

 どういうことかとフレックたちが見てくるが、いくらフレックと一緒と言えどこのような男家にあげるつもりはない。
 アレンにもこの態度なのだ、双子に何を言うか分からず近づけたくもなかった。
 いつにない縁の態度にフレックも戸惑っているようだ。

 「子どもたちにご飯を食べさせないと。これ以上遅くなると子どもたちの成長にも悪いですし、彼らには元気で素直に育ってもらわないと」

 この男のせいで変な考えを植え付けられてはたまらない。

 「エニシさんあのーー」

 「お忙しい隊長さんのためにも早く帰ってあげて下さい。ああそれとーー彼は私の大切な家族です。どこぞの躾のなっていない犬と一緒にしないでいただきたい。ね?

 縁の言葉にどう思ったか分からないが、何を言うでもなくフレックたちは帰っていった。
 どこか悲しそうな表情に見えたが、あえて何も言わなかったのは縁も落ち着いてはいたが腹が立っていたからだろう。

 「勝手にすいませんでした」

 「いいのよ。貴方が怒るのは当然だわ。むしろ言ってくれてすっきりしたわ」

 縁の勝手な判断で彼らを帰してしまったが、彼女は怒ることなく許してくれた。
 
 「分かっていたことだけどやっぱり辛いわね」

 理由もなく愛しい人を否定されるのは辛い。
 それが何も知らない赤の他人ならば縁もある程度は流せていたかもしれないが、男の隣で話しを聞いていたはずのフレックが何も言わないことが辛く悲しかった。
 彼もまたそう思っているのかと。
 
 「「ママ~おなかすいた」」

 「はいはい。みんなでご飯にしましょう」 

 子どもたちとは完全に打ち解けたようで、楽しそうに何をして遊んだか話すのを聞きながら夕食の準備を始めるのだった。
 
 
 
 





 
しおりを挟む
感想 121

あなたにおすすめの小説

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件

表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。 病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。 この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。 しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。 ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。 強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。 これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。 甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。 本編完結しました。 続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください

貧乏Ωが御曹司αの将来のために逃げた話。

ミカン
BL
オメガバース

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

処理中です...