二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

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初めての戸惑い

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 「お忙しい隊長さんのためにも早く帰ってあげて下さい。ああそれとーー彼は私の大切な家族です。どこぞの躾のなっていない犬と一緒にしないでいただきたい。ね?

 笑ってはいたが、どこか突き放すような言葉に思考が止まった。
 出会った時から丁寧で、自分たちに足りなかったものや美味しい料理も次々と教えてくれ兄のような弟のようなそんな存在に勝手に思っていた。
 呼びにくいからと早々に名前で呼ばれたが全く不愉快ではなく、親しくなれたようで嬉しいとも感じていたほどだ。
 なのに彼はあの時態々フレックのことを副隊長さんと呼んだ。
 顔にこそ出てはいなかったがどこか怒りを含んだ声に手が震えた。
 言葉から部下の態度が悪かったせいだとは分かったが、なぜそこまで怒っているのかが分からず、いつもの彼なら上手く流すぐらいしそうなものだがそうはせず帰れと言われた。

 「おう、帰ったか。なんだ、やっぱり会えなかったのかよ」

 「………いえ」

 彼に言われた言葉がぐるぐる頭の中を駆け巡りながらも何事もなく城に戻ってきていたらしく、お疲れと隊長が出迎えてくれた。

 「お?会えたのか?じゃあお前なんでそんな暗ぇ顔してんだよ」

 明らかに浮かない顔をしているフレックにマルズスも不思議だったのだろう。

 「あの……会えはしたんですけど………その…帰れと言われてしまって………」

 「は?あいつにか?」

 エニシがそんなこと言うとは彼も思っていなかったのだろう、本当にそれはエニシだったのかと確認されたが間違いなく彼に間違いはなかった。

 「なんだよ機嫌でも悪かったのか?つか、お前なんか変なことでも言ったんじゃねぇの?」

 仕事をしろと注意されたことはあれど、それ以外にエニシが自分たちに怒ったことも不快だと言ったこともなかった。
 どういうことなのかと尋ねられ、先程あったことを話していけばマルズスはバツが悪そうに顔を歪める。

 「マジかよ。やっぱりアイツを外に出すのは早かったか。アイツのせいで俺までとばっちり…じゃねぇな。俺の考えが甘かっただけだ。仕方ねぇ今度会う時は素直に叱られてくんよ」

 すんなりと話しを理解したマルズスに、しかしフレックは訳が分からなかった。

 「彼は何を怒っていたんでしょう?確かにラジの態度は褒められたものではありませんでしたけど何も帰れと言うことーー」

 「誰だって大事な家族をバカにされたら怒りもすんだろ」

 ………家族?

 「奴隷ですよ?」

 「首輪してたのか?」

 奴隷である証の首輪をつけていたのかと尋ねられ記憶を探ってみたが男の首にそれらしいものは見受けられなかった。

 「だろうな」

 そうだと思ったと1人納得し笑うマルズスに理解が出来なかった。

 「お前、あいつが奴隷買ってこき使う人間に見えるか?」

 「……いえ。けど他に獣人を側に置く理由なんてなーー」

 「だから家族だってアイツは言ったんだろ。奴隷じゃなくて家族として側にいるから首輪もなけりゃ、普通に話しもすんだろ。馴れ馴れしいなんて当たり前だ、家族なんだからな」

 「……………」

 マルズスの言葉は理解は出来るが、納得は出来なかった。
 自分の中の獣人という存在と彼の隣にいた男の存在が結びつかず戸惑う。

 「まぁ俺も詳しくは知らんし、どうしても理解出来ねぇってんなら宰相んとこでも行って聞いてこい。俺らよかあいつの方が詳しいだろ」

 そう言われ追い出されるように兵舎を後にすると、重い足を引きずりながらも宰相がいるだろう執務室に向かう。
 私事で彼の手を煩わせるのは気が引けたが、このまま放っておけば取り返しのつかないことになりそうで落ち着かず申し訳ないが話しを聞いてもらうことにした。

 「ーーということがありまして」

 「そうか。彼の怒りは最もだ。それで?君は何故彼が獣人なんぞを家族などと呼び側におくか分からないと?」

 「……はい」

 話しを聞き彼も少しは自分の気持ちを理解してくれるかと思ったが、何故か彼もマルズスと同じく苦い顔をしてくる。

 「君は……それほど獣人が憎いか?奴隷という立場にいてもらわなければいけないほどに」

 「は?」

 意味が分からなかった。
 言われた言葉は理解出来たが、言われた言葉の意味が出来ず固まる。

 「これは彼が私を信用したからこそ話してくれたことだが、彼の伴侶は男性であり獣人だ。私も聞いた時は驚いたが、彼はその事を恥じてもいないし、むしろ幸せだと笑っていたほどだ」

 以前男の身で子を産んだ話しは聞いていた。
 そのため相手が男である可能性は考えなくもなかったが、その相手が獣人と聞き更に頭が混乱する。

 「おかげで彼が何故今までその事を言わなかったのか、言えなかったのか考えさせられた。言わなかったのは当たり前だ。この国の獣人たちの扱いを見ていれば誰でもそうするだろう。だがその当たり前が本当はそうではないのかもしれないと気付いたからこそ私は彼のことをそうだと知った上で受け入れた」

 当たり前が本当は当たり前ではなかった?
 人に劣る獣人は生まれながらに奴隷であると教えられてきたが、それは本当に本当なのか?
 当たり前過ぎて考えることすらしていなかった疑問が次々と胸の内に芽生え、挨拶もそこそこにそのまま部屋を後にするのだった。
 


 


 



 
 



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