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不測の事態
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耳元で響く子どもたちの泣き声に申し訳ないと思いつつ、もうすぐ帰るからと約束し通話を切る。
「………なんで帰んないんだよ」
拗ねたように口を尖らせつつも、普段と違いその声に覇気はない。
サウルが熱を出し倒れたのは昨日の夕方過ぎ。
朝から咳をしているなとは思っていたが、特に何も言わないことから喉の調子が悪いだけかと思っていた。
しかし夕食も済み、では風呂に入ろうと子どもたちが駆けていく中ゆったりとした足取りでサウルも立ち上がったかと思えば、ふらふらした足取りで皆の後を追おうとし次の瞬間倒れた。
反射的に近くにいたアレンが支えてくれ頭を打ち付けることはなかったが、どうしたのかと慌てて駆け寄り確認すれば熱い額にすぐ様ベッドに運んだ。
「サウルが心配で仕方ない私の我儘ですよ。君が気にすることはありません」
これは自分の勝手な行動であり、気にすることはないと水を絞ったタオルを額に乗せてやる。
本当ならば今日にも家に帰る予定だったのだが、待ってくれている家族にも頼みサウルが治るまでともう少し残ることにしたのだ。
やっと帰ってくると待ってくれていた子どもたちには申し訳ないが、もう少し我慢して欲しいと頼み込んだ。
「こんなのなんでもねぇよ」
ここへ来てからというもの他の子たちの世話を率先してやってくれていたサウルだが、自分が人に甘えるというのは苦手らしく彼の生い立ちを考えれば無理もないことだろう。
だからこそこれは縁の我儘だと言うと流れる汗を拭いてやる。
「前に約束しましたよね?無理をしないと。いつから我慢していたんですか?」
「………………」
だからと言って体調が悪いのを隠していたサウルを怒らないのは別だが。
看病されるのを嫌がるのは構わないが、体調が悪いのを我慢し無理をしていたのは褒められることではない。
「軽い風邪でも悪化すれば命に関わる時もあるんです。そんなことで命を落とすなんてバカなことだと賢い君なら分かるでしょう?」
「…………わかってる」
自分でもよくなかったと分かっているのだろう、バツが悪そうに顔を背ける。
「ふふふ、流石の貴方もエニシさんには言い返せないみたいね」
喉が渇いただろうからと水を持ってきてくれたお婆さんに礼を言うと、飲みやすいようサウルを起こしてやり水を飲ませる。
「エニシさんがいてくれて良かったわ。私が言ってもこの子はきっと聞かないもの」
その言い方からこうして何度か同じことがあったのが分かった。
サウルも否定の言葉を言わないことから事情なのだろう。
「サウル」
「……なに?」
まだ説教が続くのかと思ったのか俯くサウルに苦笑いするとポンポンと膝を叩く。
「黙っていた罰として膝に乗りなさい」
「は?」
以前より大きくなった身体は膝に乗せるには問題ないだろうが抱え上げるには少々力がいるため自分で乗ってもらうことにする。
何言ってんだと顔をし動かないサウルに、ならばとアレンに頼み膝に乗せてもらう。
「約束、覚えてますか?」
優しく背を撫でながら聞けば、言葉はなかったが腕の中で頷いたのが分かった。
「優しい君のことです。みんなに心配かけたくなかったんですよね?」
頼ることにまだ抵抗があるのもそうだが、言ってみんなに心配かけたくなかったというのもあるのだろう。
「でもそれで君に何かあったらみんなどれだけ悲しむと思います?私だってそのために君をここに連れてきたわけじゃありません。言ったでしょう?君に幸せになってほしいと」
辛くとも過去はなかったことには出来はしない。
それは縁が両親を突然失い悲しんだことも、サウルが父の暴力と母に無理心中させらせそうになったこともだ。
過去があるからこそ今があり、辛かったこそ幸せになりたいと思える。
「私は君の親ではありませんけど誰より君の幸せを願っています。君に与えたのは仲間でもあり家族です。家族に頼って何が悪いんですか。君より下の子がいても、君自身だってまだ未成年で子どもなんです。周りに頼っても、甘えても許されるんですよ。だからーー我儘になりなさい」
あれが欲しい、これが欲しいと求めることは何も悪いことだけではない。
サウルの場合何かを願い求めるということが難しくもあり、だからこそそれは悪いことではない教える。
「願ったからといって叶うものも叶わないものもある。けど願うことは悪いことじゃありません。叶えようと求めることが力になります」
縁自身、世界は違えどずっと願っていたものをこちらで手に入れることが出来た。
だからーー
「サウル……幸せになりなさい」
泣いているのだろう小さく震える背中をそっと抱きしめる。
しっかりしていると言ってもまだ子どもなのだ。
身体も心も成長しきってはいない。
遠慮がちにだが伸びてきた手は縁の背中に回され、よく出来ましたと褒めるようにポンポンと背を叩いてやるのだった。
「さぁゆっくり休んでいつもの元気なサウルの姿を早く私に見せて下さい」
「うん。…………ねるまでそばにいて」
やっと聞けたお願いに笑って頷くのだった。
「………なんで帰んないんだよ」
拗ねたように口を尖らせつつも、普段と違いその声に覇気はない。
サウルが熱を出し倒れたのは昨日の夕方過ぎ。
朝から咳をしているなとは思っていたが、特に何も言わないことから喉の調子が悪いだけかと思っていた。
しかし夕食も済み、では風呂に入ろうと子どもたちが駆けていく中ゆったりとした足取りでサウルも立ち上がったかと思えば、ふらふらした足取りで皆の後を追おうとし次の瞬間倒れた。
反射的に近くにいたアレンが支えてくれ頭を打ち付けることはなかったが、どうしたのかと慌てて駆け寄り確認すれば熱い額にすぐ様ベッドに運んだ。
「サウルが心配で仕方ない私の我儘ですよ。君が気にすることはありません」
これは自分の勝手な行動であり、気にすることはないと水を絞ったタオルを額に乗せてやる。
本当ならば今日にも家に帰る予定だったのだが、待ってくれている家族にも頼みサウルが治るまでともう少し残ることにしたのだ。
やっと帰ってくると待ってくれていた子どもたちには申し訳ないが、もう少し我慢して欲しいと頼み込んだ。
「こんなのなんでもねぇよ」
ここへ来てからというもの他の子たちの世話を率先してやってくれていたサウルだが、自分が人に甘えるというのは苦手らしく彼の生い立ちを考えれば無理もないことだろう。
だからこそこれは縁の我儘だと言うと流れる汗を拭いてやる。
「前に約束しましたよね?無理をしないと。いつから我慢していたんですか?」
「………………」
だからと言って体調が悪いのを隠していたサウルを怒らないのは別だが。
看病されるのを嫌がるのは構わないが、体調が悪いのを我慢し無理をしていたのは褒められることではない。
「軽い風邪でも悪化すれば命に関わる時もあるんです。そんなことで命を落とすなんてバカなことだと賢い君なら分かるでしょう?」
「…………わかってる」
自分でもよくなかったと分かっているのだろう、バツが悪そうに顔を背ける。
「ふふふ、流石の貴方もエニシさんには言い返せないみたいね」
喉が渇いただろうからと水を持ってきてくれたお婆さんに礼を言うと、飲みやすいようサウルを起こしてやり水を飲ませる。
「エニシさんがいてくれて良かったわ。私が言ってもこの子はきっと聞かないもの」
その言い方からこうして何度か同じことがあったのが分かった。
サウルも否定の言葉を言わないことから事情なのだろう。
「サウル」
「……なに?」
まだ説教が続くのかと思ったのか俯くサウルに苦笑いするとポンポンと膝を叩く。
「黙っていた罰として膝に乗りなさい」
「は?」
以前より大きくなった身体は膝に乗せるには問題ないだろうが抱え上げるには少々力がいるため自分で乗ってもらうことにする。
何言ってんだと顔をし動かないサウルに、ならばとアレンに頼み膝に乗せてもらう。
「約束、覚えてますか?」
優しく背を撫でながら聞けば、言葉はなかったが腕の中で頷いたのが分かった。
「優しい君のことです。みんなに心配かけたくなかったんですよね?」
頼ることにまだ抵抗があるのもそうだが、言ってみんなに心配かけたくなかったというのもあるのだろう。
「でもそれで君に何かあったらみんなどれだけ悲しむと思います?私だってそのために君をここに連れてきたわけじゃありません。言ったでしょう?君に幸せになってほしいと」
辛くとも過去はなかったことには出来はしない。
それは縁が両親を突然失い悲しんだことも、サウルが父の暴力と母に無理心中させらせそうになったこともだ。
過去があるからこそ今があり、辛かったこそ幸せになりたいと思える。
「私は君の親ではありませんけど誰より君の幸せを願っています。君に与えたのは仲間でもあり家族です。家族に頼って何が悪いんですか。君より下の子がいても、君自身だってまだ未成年で子どもなんです。周りに頼っても、甘えても許されるんですよ。だからーー我儘になりなさい」
あれが欲しい、これが欲しいと求めることは何も悪いことだけではない。
サウルの場合何かを願い求めるということが難しくもあり、だからこそそれは悪いことではない教える。
「願ったからといって叶うものも叶わないものもある。けど願うことは悪いことじゃありません。叶えようと求めることが力になります」
縁自身、世界は違えどずっと願っていたものをこちらで手に入れることが出来た。
だからーー
「サウル……幸せになりなさい」
泣いているのだろう小さく震える背中をそっと抱きしめる。
しっかりしていると言ってもまだ子どもなのだ。
身体も心も成長しきってはいない。
遠慮がちにだが伸びてきた手は縁の背中に回され、よく出来ましたと褒めるようにポンポンと背を叩いてやるのだった。
「さぁゆっくり休んでいつもの元気なサウルの姿を早く私に見せて下さい」
「うん。…………ねるまでそばにいて」
やっと聞けたお願いに笑って頷くのだった。
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