二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

文字の大きさ
425 / 475

決まらない

しおりを挟む
 「ママこれ」

 「はい。じゃああと4冊ね」

 「うん」

 渡された本を受け取ると新たな本を探し始めたアズの背中を見守る。
 アズとエル、現在2人のご褒美探しに町まで来ているのだが、本が欲しいと言うアズのため本屋に来ていた。
 それほど欲張りなアズではないが、気になるものを全て買っていては切りがないため5冊までと決め欲しいものを選んでいる。
 パラパラとめくっては中を見また棚に戻していく。
 当たり前だがそれほど発展してないこちらの世界では漫画など娯楽的本は絵本ぐらいである。
 そのためアズが今手にしている本も年齢的に絵本ではなく、小難しい単語や文章が書かれた分厚い本である。
 はっきり言って自分には理解出来る気がしない。
 しかしそれを躊躇いなく手にするアズに感心し、選んでいる辺りから本の中身を大体理解しているらしいことに驚く。
 確かに字の読み書きを教えたのは縁だ。
 だがそこからの努力は彼本人のものであり、そこまでの知識をいつの間にか身に付けていたことに今まで気付かなかった。
 
 「オレも教えられることは教えてたから」

 そう言って笑うエルはどこか誇らしげだった。
 普段の調子から忘れてしまっていたが、エルも元々それなりに教育を受けていたらしく教養もあり弟思いである。
 自分が教えられることがあるならばと喜んで教えていたらしい。

 「まぁあの調子なら大丈夫そうですね。それでエルは何にするんですか?」

 「え。あ、あぁ、うーん、ど、どうしよう。オレまだ全然決まってなくて。というか何も浮かばなくて……」

 アズと違い意外に優柔不断なエルは中々決められないようだ。

 「うーん、そうですね。あっ、お酒とかは?」

 以前酒入りのケーキを喜んで食べていたため言ってみるが首を振られた。

 「そこまで酒好きってわけでもないし。それに子どもたちの前で酒呑むってのもなんか………」

 繊細だなぁと思った自分はかなり図太いのだろう。
 縁的にはそこまで気にしなくていいとは思うが、子どもたちのことを思って言ってくれたのならば喜んで受け取っておこう。
 では他にはないかと色々案を出してみるが、エルの反応はいまいちよろしくない。

 「あとはそうですねぇ……あっ、そういえばジークたちが言ってたんですけどナイフ用のホルスターとかどうですか?何かたくさん持ってたでしょ?」

 それほどの数何に使うんだとばかりに持っていたエル。
 態々用途を聞こうとは思わないが、どうせ持つならば持ち易いようにしてもいいのではと思ったのだ。
 
 「嫌だったら防具とかでもいいですし。リルが狩ってきてくれた魔物やら動物やらの皮とかありますから何かしら使えるんじゃないですか?」

 肉以外必要ないと言うリルに、ならいつか使うかもしれないから貰っとけというアレンたちにまぁいいかと鞄に突っ込んでおいたのだ。

 「…………それ何の魔物だったのか聞くの怖いんだけど。アイツ基本的に大物しか狩ってこないじゃん」

 顔を引き攣らせているエルだが、縁はいまいちよく分からず頭を捻る。

 「みんなよく食べますからね。流石リルです」

 「いや、うん、まぁ、それはそうなんだけどさ……」

 自分の分だけではなく家族分とってきてくれるリルはなんて優しいのだろうと縁は思っていた。

 「この前作った唐揚げ美味しかったですよね。今度は焼き鳥でもしてみましょうか」

 「………………ソウダネ」

 はてさて焼き鳥のタレはどうやって作るのだろうかと考え始めた縁に、隣りでは呆れたような視線をエルが向けてきているのに気付くことはないのだった。

 「まぁホルスターはいいかもね。防具もいいけどオレあんまり着込むの好きじゃないから」

 身を守るものをそんな理由で嫌がるのもどうかと思ったが、本人がいらないと言うならいいのだろう。
 必要になったらなったでその時にでも作ればいい。

 「エニシってオレが武器持ってんの怒ったことないよね。なんで?」

 「?、怒る必要がないからじゃないですか?」

 「危ないとか思わないの?」

 「いや、危ないから持ってるんでしょう?」

 身を守るため、生活するために必要だからこそ持っているだろうにそれを怒る理由がよく分からない。

 「あぁ、もしかして初めて会った時のこと気にしてます?あんなの忘れていいですよ。怪我もなかったですし、何より今こうしてエルが隣りにいてくれることが私は嬉しいんですから」

 「……そんなわけないでしょ。忘れるわけないし。あれは本当に悪かったと思ってる。でも……………許してくれてありがと」

 こうして見ると彼も随分変わったなぁと何とも感慨深い。

 「どういたしまして」

 アレンたちがエルのことを今どう思っているか分からないが、縁にとっては彼は最早かけがえのない大切な家族だ。
 彼が理由もなく人を傷付けることも、以前のように縁を襲おうなんてことを考えるはずがないこともちゃんと分かっている。

 「エルがいてくれないとまたダンジョンで穴に落ちた時に道連れにする人がいなくなっちゃいますからね」

 「そこ!?ってか道連れは確定なわけ?」

 ふふ、冗談ですよ冗談。…………たぶん。
 

 


 





 
 

 
しおりを挟む
感想 121

あなたにおすすめの小説

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件

表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。 病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。 この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。 しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。 ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。 強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。 これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。 甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。 本編完結しました。 続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください

貧乏Ωが御曹司αの将来のために逃げた話。

ミカン
BL
オメガバース

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

処理中です...