二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

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違う想い

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 「…………なぁ」

 「なんだ」

 眠る縁の手を握りながら声をかければ、同じく向かい側から縁の頭を撫でるセインが返事をする。

 「お前ならどうしてた?」

 「さっきのか?」

 頷けば先程の縁の言葉を思い出しているのか考えこんでいる。

 「俺なら…………やめろと言っただろうな。そこまで悩んで辛くなるぐらいならやめればいい。縁があいつらにそこまで構う必要なんてないんだ」

 「だよなぁ」

 きっと自分もそう答えていたことだろう。
 そこまでする価値が彼らにあるのか?辛いと泣くぐらいならあんな奴らさっさと切り捨ててしまえばいい。
 何故そこまで彼らに手を貸すのか、なんとなくはアレンも理解出来ているが納得はしていない。
 彼らという存在のせいで縁の負担が増えているようにしか見えないからだ。

 「だから、ジークなんだろうな」

 たぶん縁もアレンたちならばそう言うだろうと無意識にかジークに手を伸ばしている。
 縁は悪くない、辛いならやめてしまえとある意味無責任でもある言葉をアレンは縁のためなら躊躇いなく口にする。
 何より優先するべき存在が縁だけであるからだ。
 だが縁はそうじゃない。確かに縁もアレンたちという家族を優先してはいるだろうが、その後に続く仲間や友人などの守りたい者たちのために尽くすことを当たり前だと考えている。
 それは獣人という仲間をまとめ、支えてきたであろうジークだからこそ分かってやれることでありアレンは未だに理解が出来ていないでいる。

 「俺は…………俺ならあのガキどもが苦しんでようが、倒れてようが助けようなんて思わねぇ。死にそうだってんならそのまま楽に死なせてやればいい」

 「だな」

 いくら縁が助けたあの子どもたちが自分たちを受け入れてくれているといってもその程度なのだ。
 
 「あのガキたちが他のバカな人間と違うのは分かってる。けど……だから?それでなんだってんだよ。あいつらが俺たちに何をしてくれんだよ」

 縁が言うように彼らが成長し、いつか獣人が人として生きていける未来もあるかもしれない。
 だがそれも約束されたものではないのだ。
 彼らが大人になった時、もしバカな奴らが彼らに要らぬ知識を植え付け信じたとしたら?
 今まで自分たちは同じ存在だと接してきたくせにそれも一瞬で考えが変わるかもしれない。

 「俺は不確かな未来より、今の幸せが一番なんだよ。縁が疲れるって分かってんのにやる意味が分かんねぇ」

 彼の意志を尊重し止めはしないが、縁が少しでも辛い止めたいと言えば即座に止めさせるだろう。
 縁もそれが分かっているからこそジークを選んだのだ。
 止めろと言うのではなく、理解し大丈夫だと言えるジークを。
 勿論ジークのそれが本音ではないと分かってはいる。
 本音ではないが、縁のことを理解し間違ってないと励ましている。

 「ずりぃよなぁ」

 「ジークか?」
 
 「ああ」

 即座に言い当てるあたりセインもそう思っているのだろう。

 「俺たちとは生きてきた環境がちがうからな。それに俺たちとは違って我慢強い」

 「……それは俺が単純バカだっつってのか?」

 ケンカ売ってんなら買うぞと縁越しにセインを睨みつければ、何故か笑われた。

 「違う。だが考えてもみてみろ。ジークだって縁の番なのにいつも俺たちに先を譲るだろ」

 番なのだからジークとて縁の一番でありたいはずなのにアレンたちに先を譲ることが殆どだ。
 エリーのこともあるのだろうが、アレンたちに気を使ってもいるのだろう。

 「大人ぶってるだけだろ」

 「実際大人だからな」

 「けっ。どーせ俺はガキだよ」

 「俺もだ。けど縁はそのままの俺たちを愛してくれている」

 これは役割分担なんだとセインは言う。

 「ジークはジークにしか出来ないことで縁を支えてる。だから俺たちも俺たちなりに縁を愛してやればいい」

 何より家族を求めていた縁。
 泣きながらいかないでとアレンに縋ってきた姿は今も脳裏に焼き付いている。
 彼から離れる日など来るはずがないのに。
 我が子は可愛い、だがやはり自分にとって縁が一番なのだ。
 
 「ふん。じゃあーーた~っぷり愛してやらないとな」

 ニヤリと笑い握る指に軽く噛み付けば、寄った眉に微笑み口付けを落とす。
 彼の全てが愛おしい。

 「………お前だけのものじゃないんだからな」

 「なんだよ。先を譲ってくれてもいいんだぜ?」

 俺はガキだから我慢なんてしないけどなと開き直れば、鼻で笑われた。

 「大人なのはジークだけで十分だろ。俺だって我慢するつもりはない」

 けっ、一生我慢してろよと縁を抱き寄せながらセインに悪態をつくのだった。



 

 

 
 
 
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