まこまも

No.26

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二章 一学期最終日

05

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「……さっき失礼なこと思わなかった?」
「は?別に」
 飲み物とドーナツをもって、席をとるために二階に行く。
 ……と、
「あ、おーい、守ー!」
 そんな声が、近くで聞こえた。
 見ると、そこにはミルクティーみたいな色の髪のヤツ。
 炭酸飲料のグラスを片手に、俺に手を振っていた。
「何だ、はる。一人?」
「そーなんだよー、一緒に飯食わねぇ?」
 はる……木下陽(きのしたはる)は、そのマッシュっぽい髪を揺らす。
「いや、今日は連れが……」
「え、木下くん?」
 まことが、はるの姿を見てそう言った。
 はるは、驚いたようにまことを見て、そして俺たちを指さし、
「え、誠? え、守と一緒? すっげー珍しい組み合わせだな」
「まあ、そうかもな」
 片や優等生、片や不良(……不良じゃないけど)。
 確かに、端から見れば不思議に思うだろう。
 ……だからあんまり、人前で一緒にいたくないんだよなあ。
 一応、デートってことだったし、まことを確認する。
「一緒に食べていいか?」
「うん、もちろんいいよ」
「やったぜ」
 笑顔で頷くまことを見て、はるは嬉しそうにテーブルをバシバシ叩く。
「いやー、いっちーも誘ったんだけど、甘いの嫌いだって帰っちゃってさー。冷てぇよな、あいつ」
「まあ、そういうやつだろ、一ノ瀬は」
 はるも、話の中の一ノ瀬も、俺たちと同じ高校に通う、同学年の男子生徒だ。
 向かい側に座って、そうはると会話していると、隣のまことは興味深そうに聞いた。
「二人とも友達だったんだね。知らなかったよ」
「おう。オレっち同じ中学」
 はるは俺の肩をつかみ、ニッと笑う。
「でな、好きなバンドが一緒なんだよ。マイナーだから、希少価値だぜ」
「はるも、まことと知り合いだったんだな」
「木下くんとは、去年同じクラスだったんだ」
 まことの言葉に、へえと納得する。
 はるは、面白そうに俺たちを交互に見て、
「で、お前ら同じクラスだっけ?仲良いの?」
「ああ、俺たち今日付き合っ――」
 言いかけたとき、まことに手で思いっきり口を塞がれた。
 何事かと睨むと、まことはガタッと急に席を立ち、
「む、虫が!ほら!ちょっとこっち来て!!」
「虫……?」
 まことは、ぽかんとしてるはるを残し、同じくぽかんとしている俺を洗面所まで引っ張った。

 鏡を確認する。
「なんだよ。虫いねぇじゃねぇか」
「守くん天然?天然なの?」
「何が」
「いや、ダメだよ、僕たちが付き合ったって言ったら」
「……はるに?」
「ううん、みんなに。ほら、広まっちゃうかもしれないよ」
 ……そうか、俺たちが付き合ってること、もし学校で広まったら、色々と問題だな。
 居づらくなるし……っていうか、まことのファンの女子に、俺が何されるか……。
 急に恐くなって、謝った。
「悪い。付き合ってること、学校のヤツには言わない方がいいな……気を付ける」
「分かってくれたならいいよ」
 まことはほっとしたように微笑み、再び一緒に席に戻った。
「大丈夫かよ、虫とか言ってたけど」
「うん、なんか勘違いだった」
「そっか~」
 まことが笑顔を見せると、はるはへらっと笑う。
 これで納得するはるも、なかなかアホだ。
 うちの高校、わりと頭良い方なんだけどな。
 自分のことは端に置き、そう思う俺だ。
「けどさ守、それ虫刺されじゃね?」
「え?」
「首んとこ。赤くなってる」
「首?……どこ?」
 自分では見えない、隣に座っているまことに教えてもらおうと、横を見て聞いた。
 だが、まことは何故か「しまった」という表情で、俺を見ていた。
 …………あ。
 それで、俺もようやく気がついた。
「………………」
「………………」
「…………何この沈黙。てか、何で二人とも顔赤いの?」
「べっべべ別に?!?!」
「い、いや、ほら、暑いよな」
「暑いって言いながら守は何でボタンを上まで留めるんだ?」
「だって、あれだ、ちゃんとしとかないと……」
「え~、いつも開けてる癖に、今更?」
 不思議そうに聞いてくる純粋なはるに、俺もまことも目を合わせられなかった。
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