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五章 二学期
01
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九月一日、朝八時。
「おはよう、守くん!」
「うっ?!」
駅の前で携帯を見ていたら、当然まことに飛びつかれた。
「いきなり飛びついてくんな」
「ごめんごめん」
そう言って睨みつけると、まことは俺の腕にくっついたまま、顔を上げてへらっと笑った。
今日は九月一日、新学期。
今日から俺とまことは、同じ最寄駅から一緒に登校することにした。
「宿題忘れてないか心配だよ……」
「わかる」
「ふふ。守くんって、意外と真面目だよね」
「意外で悪かったな」
「あはは、ごめん」
電車に揺られながら、そう何気ない話をする。今日は運のいいことに、二人で並んで座席に座ることができた。
けど、本当に全部宿題持ってきたか? 脳内で確認していると、まことがポツリと言った。
「守くんってさ……」
「……ん?」
少し遅れて、隣の彼を見る。
まことは、真剣な表情をふっと和らげて俺にこう聞いてきた。
「誕生日いつ?」
「なんだよ急に」
「聞いてなかったなって思って」
そう真面目な話でもないだろ、と呆れながらも答えた。
「……九月三日」
まことはそれを聞いて、そして目を丸くした。
「ってことは、明後日じゃないか! 早く言ってよ?!」
「祝われたいみたいでやだろ。別に気遣わなくていい」
「守くんに頼まれなくても祝うよ」
「はいはい」
そう適当にあしらったら、急にまことはくすくす笑い出した。
「何笑ってんだよ」
「すごい偶然だなって思って。ぼくの誕生日、何日だと思う?」
「え? お前も九月三日?」
聞くと、まことは可笑しそうに目を細めた。
「そこまで偶然じゃないよ。三月九日なんだ」
「ふは、すごい偶然」
そう笑ってたら、学校の最寄駅に着いた。
新学期初日といっても、授業は通常通りにしっかりある。
久しぶりの通学路は、まことのおかげで楽しかったけど……これは本人には言わないけど……急に夏休みが恋しくなった。
「うーん……」
「どうした? うどん伸びるぞ」
あっという間に四時限目が終わって、昼休み。今日はまことと一緒に学食に来た。
まことがうどんを頼んでたから、俺も真似してうどんにした。
「守くんの誕生日プレゼント悩んでる」
そう言われて、俺の箸を持つ手が一瞬止まる。
一口食べてから、言った。
「……本人に聞けよ」
まことは顔を上げる。その目はきらきらしていた。
「何が欲しい?」
「そうだな……」
けれど、急に言われてもあまり思いつかない。
欲しいCDはこの前買ったし。好きな漫画の単行本の発売はまだ先だし。
まことがようやくうどんを食べ始めてから、一つ思い浮かんだことがあった。
「……まことは、九月三日暇?」
「土曜日だよね?特になにもないよ」
「ならさ……」
そこまで言いかけて、なんだか急に恥ずかしくなって、うどんに視線を戻した。
「いや、やっぱ急すぎるからなんでもない」
「え、何?言ってよ」
顔をあげると、まことは俺を期待の目で見ている。
諦めて、正直に言った。
「……遊園地、行かないか?」
自分で言ってから、顔が熱い。なんだよ、恋人と遊園地って。馬鹿みたいにテンプレだろ。
けれどまことは、目を輝かせて頷いた。
「いいよ、行こう! 僕も行きたい!!」
「おはよう、守くん!」
「うっ?!」
駅の前で携帯を見ていたら、当然まことに飛びつかれた。
「いきなり飛びついてくんな」
「ごめんごめん」
そう言って睨みつけると、まことは俺の腕にくっついたまま、顔を上げてへらっと笑った。
今日は九月一日、新学期。
今日から俺とまことは、同じ最寄駅から一緒に登校することにした。
「宿題忘れてないか心配だよ……」
「わかる」
「ふふ。守くんって、意外と真面目だよね」
「意外で悪かったな」
「あはは、ごめん」
電車に揺られながら、そう何気ない話をする。今日は運のいいことに、二人で並んで座席に座ることができた。
けど、本当に全部宿題持ってきたか? 脳内で確認していると、まことがポツリと言った。
「守くんってさ……」
「……ん?」
少し遅れて、隣の彼を見る。
まことは、真剣な表情をふっと和らげて俺にこう聞いてきた。
「誕生日いつ?」
「なんだよ急に」
「聞いてなかったなって思って」
そう真面目な話でもないだろ、と呆れながらも答えた。
「……九月三日」
まことはそれを聞いて、そして目を丸くした。
「ってことは、明後日じゃないか! 早く言ってよ?!」
「祝われたいみたいでやだろ。別に気遣わなくていい」
「守くんに頼まれなくても祝うよ」
「はいはい」
そう適当にあしらったら、急にまことはくすくす笑い出した。
「何笑ってんだよ」
「すごい偶然だなって思って。ぼくの誕生日、何日だと思う?」
「え? お前も九月三日?」
聞くと、まことは可笑しそうに目を細めた。
「そこまで偶然じゃないよ。三月九日なんだ」
「ふは、すごい偶然」
そう笑ってたら、学校の最寄駅に着いた。
新学期初日といっても、授業は通常通りにしっかりある。
久しぶりの通学路は、まことのおかげで楽しかったけど……これは本人には言わないけど……急に夏休みが恋しくなった。
「うーん……」
「どうした? うどん伸びるぞ」
あっという間に四時限目が終わって、昼休み。今日はまことと一緒に学食に来た。
まことがうどんを頼んでたから、俺も真似してうどんにした。
「守くんの誕生日プレゼント悩んでる」
そう言われて、俺の箸を持つ手が一瞬止まる。
一口食べてから、言った。
「……本人に聞けよ」
まことは顔を上げる。その目はきらきらしていた。
「何が欲しい?」
「そうだな……」
けれど、急に言われてもあまり思いつかない。
欲しいCDはこの前買ったし。好きな漫画の単行本の発売はまだ先だし。
まことがようやくうどんを食べ始めてから、一つ思い浮かんだことがあった。
「……まことは、九月三日暇?」
「土曜日だよね?特になにもないよ」
「ならさ……」
そこまで言いかけて、なんだか急に恥ずかしくなって、うどんに視線を戻した。
「いや、やっぱ急すぎるからなんでもない」
「え、何?言ってよ」
顔をあげると、まことは俺を期待の目で見ている。
諦めて、正直に言った。
「……遊園地、行かないか?」
自分で言ってから、顔が熱い。なんだよ、恋人と遊園地って。馬鹿みたいにテンプレだろ。
けれどまことは、目を輝かせて頷いた。
「いいよ、行こう! 僕も行きたい!!」
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