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落ちるまであと
三、
しおりを挟む「どうしたら、許してくださるんですか?」
「許すも何も、砂が全て落ちたら拘束を外してあげるし、おしっこがしたいならそこでしていいよって言っているんだよ」
蝶は天藍に尋ねたが、天藍はそう言って微笑むだけだ。
「………………」
砂時計をもう一度確認するが、砂の量はあと少しで四分の一に達するところだ。
蝶は前を抑えたまま、ぎゅっと目を瞑った。
……もう、これ以上我慢できないのに……!
そう蝶が思った途端、しゅわりと、下着がぬるく湿った。
「!!!」
慌てて、必死にそこを揉んだり抑えたりするが、しゅわり、しゅわりと少しずつ溢れ出してくる液体は止まらない。
「あ、あっ、あ」
服の上から股を押さえている蝶の手が、じわじわと確かに濡れていく。
こんなところでしてはいけない、という蝶の意思に反し、限界を超えた膀胱が既に排泄を始めてしまった。
このままでは衣服どころか、寝室のカーペットを汚してしまう。そんなことをしてしまえば、天藍にどんな責任を取らされるのかわからない。
……もう、言う通りに、洗面器にするしかない。
蝶は床に膝をつき、洗面器を片手に取った。
「洗面器にしてくれるんだね? いいよ」
「……っ……」
蝶はその言葉を無視して、焦る手つきで下着を脱ぎ始める。
しかし天藍がこちらの動作をじっと見続けていることに、ついに羞恥に耐えきれなくなって叫んだ。
「もう、こっちを見ないでください!」
「どうして見てたらいけないの?」
「み、見られるの、恥ずかしいってわからないんですか?!」
そう叫んだ蝶に、天藍はとびきり美しい笑みを見せた。
「恥ずかしいなら、砂が落ちるまで我慢したら?」
そう煽るように言われるが、しかし蝶はもう十秒も我慢などできない。
それを知って、天藍はそう提案しているのだ。
「っ~~~、この、鬼……!!」
蝶は羞恥で顔を真っ赤にしながら、服をたくし上げ、洗面器に素股で跨った。
すぐに、ビシャビシャと洗面器に勢いよく水が落ちる音が、寝室に響き始めた。
「はあ、はあ……っ」
溜め込んだ多量の水分のせいで、その水音の激しさは一向に弱まらない。
恥ずかしくてたまらないのに、身体は開放感に満たされ、蝶は頭がおかしくなりそうだった。
「可愛い」
天藍は蝶の姿を見つめ、恍惚な表情でそう呟く。
蝶はそれが悔やしくて、憎たらしくてしょうがなかったが、しかし水流を止めることなどできず、天藍の見つめる中で放尿を続けた。
洗面器の半分程に水が溜まったところで、蝶の排泄が終わった。
「これでおあいこだよ」
蝶の拘束器具を外し、洗面器を片付けた後。天藍は寝台の上に横になってそう微笑む。
蝶は、天藍から借りた寝巻きに腕を通しながら、持ち主の彼をちらりと見て、
「旦那様は、日頃あれだけ身勝手なことを強いる癖に、無理やり犯してくるようなことだけはなさらないですよね」
「へえ、無理やり犯されたい趣味なの?」
「違います。ただ、微妙な良心が疑問なだけです」
そう蝶が言うと、天藍はくすくすと笑って、
「だって、無理やり押し倒すだけじゃ簡単すぎて面白くないじゃないか。君が抱いて良いと首を縦に振るまで、僕は抱かないよ」
「そんな許可、私がすると本気でお思いですか?」
蝶は呆れてそう言って、枕に頭を乗せる。
天藍は目を細め、
「まあ僕も、君にいくら抱いて欲しいと懇願されても、そのとき抱くかは気分次第だけどね」
その言葉に、蝶は背筋がヒヤリと冷たくなった。
蝶は今、自分の意思でこの天藍の秘書をしている。
蝶がその気なら、今すぐにでもこの仕事を辞めて逃げることだってできるし、天藍の要求を完全に拒否することはできる。
しかし蝶は、天藍の自分への好意を逆手に取って、金銭も経験も快感もこの主人から搾取するだけ搾取する道が、一番利益が大きいと見て選んだのだ。
……だが、もし万が一、今後天藍のことを本当に好きになってしまったら、天藍は蝶のその好意まで好き勝手に弄び、玩具にするつもりだ。
間違っても自分の心だけは絶対に落としてはならないと、蝶は改めて強く思った。
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