古参ぶる欲求

ながめ

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皆青へと入棺

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 遠くの戦地の報道が今日もテレビから流れてくる。私の生徒もその戦地に赴いて報国を謳っては死んでいく。アナウンサーは淡々と事実を連ね、そこに人は映らない。移ろわない映像の間にまたドン!とまた爆発音が聴こえる…
「今朝、戦場に謎の飛行物体が墜落しました。両国は一旦戦闘を中止しこの物体の調査を始めるとのこと…」
 そんなニュースが聴こえるのと同時にドアが激しく叩かれる。私は着の身着のまま戦地へ赴く羽目になった。
 凄惨な現場にありもののシャツとジーンズで来るというのはなかなか警戒感が無くてそれはそれは清々しいものだった。ざまぁみろ、私が平和の象徴だ、などと心の中で叫びながら落下物を検分する。
「始めは敵のミサイルかと思ったんです。でも、形が違う。じゃあ飛行機?違う。ドローン?違う。鳥?いや大きすぎる。でもとにかくこちらへ近づいてくる。未確認飛行物体?そんなバカな。こんな戦地に好き好んでくるかよ、と思っている間もすごいスピードで近づいてくる。とりあえず、兵たちに退避を指示していると向こうの兵も退いてるじゃないですか?これはどういうことだ?と思って上層部に連絡したらこのような事態に…で、着弾…まだ何かわからないので大事をとって “弾” としたのですが…まだなんとも言えないのですが、文字通り地面に刺さって今の状態です」
 と、少し興奮気味に話す兵隊さん。死なずに済んだという安堵もあるのだろうか。努めて落ち着いた口調で話そうとしているのは伝わった。
 ふむ…。
「基本的に宇宙に打ち上げられているものってのは記録に残っているものです。つまるところ、空から落ちてきたってなると各国のデータを照らし合わせればそれが “ナニ” かわかるものなのだけれど、今回の場合は打ち上げが直近のものではないので兵器ではないと思って大丈夫でしょう。掘り出してください。あとは全体を見て見ないことには…」
「わかりました」
 そういうと、戦地の機材を総動員して “ソレ” は掘り出された。“ソレ” はそんなに大きくない。町で走っている大きめのトラックで運べるサイズで、民間企業が試しに作れる程度の大きさ…そういう場合の方が照合がめんどくさいのだけれど、同時に戦略兵器でないことは確かだ。企業名は…【青水仙】。
「これは、だいぶ珍しいもんが落ちてきましたなぁ」
「と、言いますと?」
「これは “星の万華鏡” ですよ」
「…なんですかそれは?」
「えっとですね…」
 そういうと私は外部スイッチを探して当て電源が入っていないことを確認し、そこから全体をぐるっと覆っている耐熱素材の目ぼしいところを剥がす。ここら辺は民間企業…おそらくベンチャー企業と老舗の町場工場の合作だろうが…シンプルな作りでわかりやすくて良い。おかげで精密でないところはいとも簡単に解体できる。
 ベリッベリッベリッと剥がすと御名答のモノ。
「これが分かるかな?」
 兵隊さんは首を傾げている。別に見慣れているモノだろうが、こんなに大切に扱ってないからだろう。
 そこにいるのは骸だ。
「…どういうことですか?」
「30年くらい前かな。ナリキンどもの間で “宇宙葬” というのが流行ってね。このような棺型のロケットを飛ばして宇宙に抱かれたまま永眠するってロマンスがあったんだ。これもその一つ。【青水仙】は “星の万華鏡” ってのを作って、簡単に言うと棺の中に入ってる人を回すことで常に星をビーズのように見立てて、その永遠に変わり続ける煌めきの中で死後も安らかに眠らせてあげよう…という棺を作ったわけだ。なかなか悪趣味だろ?」
「はぁ…」
 どっちらけな回答。戦争はロマンまでも奪うようだ。悪趣味は悪趣味を受け付けないな。
「要は金持ちの道楽だよ。結局のところそのあとに来る不況とスペースデブリの問題でだんだん “宇宙葬” 自体のブームが終わって忘れ去られたわけだ…おそらくコレもなんらかで制御されていたはずが、企業の撤退かデブリにぶち当たったかで軌道が逸れてここに落ちたのだろう」
 死んだ人間なのに戦地に赴くなんてついてないわね。
「わかりました、ありがとうございます。ということは即ち危険性はないということですね?」
「まあ、そうだな」
「では、もう帰ってもらって結構です」
「は?いや、これはまだ序の口で、今から本格的な研究をするつもりなのだが…」
「申し訳ありませんがここは戦場です。そんな悠長なことを言っている場合ではありません。相手が油断している今のうちに叩くのが大事だと思いませんか?」
「は?」
 と、私は反論する間もなく、車に押し込まれ戦地から離脱させられた。すると遠くからまた爆音が響く。
 戦地にいると人の死に鈍感になるのだろうか。それともモノの価値がわからない阿呆なのか。価値がわからない人のためにも端的にわかりやすく言ったはずだ。いや、私だって異質なのは確かだ。しかしなんだろう…あの棺の人間がどういう人なのかなどが気にならないのだろうか。いや、銃を向けてる人を気にしないからそれもそうか…そうなのか?
 自宅は朝のままの状態で、テレビからは戦闘再開のニュース。私は馬鹿馬鹿しくなりテレビを消す。すると目に入ったのは地球儀だった。途端にこの星が大きな棺のように思えて笑いが込み上げだ。青い棺で殺しあってろ。
 それからも幾人かの訃報は入ってきたが戦争には勝ち、またそれ以上に新入生も増えていき、彼らのことは忘れるばかりだった。
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