古参ぶる欲求

ながめ

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拉麺には血潮

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「すみません!ニンニクマシマシで!」
 そう叫びながら不躾男は店内へ入ってきた。
 私は気圧されながらもルールはルールなので毅然とした態度で話す。
「す…すみませんが、食券を買ってからでお願いします…あと、タイミングになったらこちらでお伺いしますので…」
「そんな悠長なことを言ってる場合じゃないんです!急いでください!事態は一刻の猶予を争うんです!」
 15時の閑散とした時間帯にどういうことだ?と思いつつ、結局剣幕に押されて急いで一杯拵えた。
「ありがとうございます!」
 不躾男はゴクっと唾を飲み込むと食べずに鉢ごと外に出て、あろうことか誰かに投げた!
 流石の私でも看過できない!
「テメェ!どんな教育受けてきたんだ!表に出ろ!」
「はい!急いでください!友人が迎えに来るので!」
 は?
 そう思いながら、並々ならぬ剣幕にはたまた押されて店を出ると町はゾンビだらけ…どういう事態?と思っているとラーメン鉢を頭に被った男がひっくり返ってた。
「あれがゾンビの親玉の吸血鬼らしくて…でもニンニクなんてそんなに都合良くなくて…と思ったらお店を見つけたので…ただ油断はなりません!とりあえず、友人が来たら一緒に行きましょう!」
 と言った瞬間、霊柩車が目の前に急停車した。
「どうだ!ぴったりだろ?」
「ああ!バッチリだ!よし今のうちに吸血鬼を入れるぞ!あ、すみません!ニンニクを持ってきてもらって良いですか?中途半端に目覚めてもらっても困るので一緒に詰めます!」
 そういうと二人は霊柩車から棺を下ろした。そして吸血鬼を投げ込んだ。その間に私はニンニクをペースト状のものも含めて持てるだけ持ってきて一緒にそのなかに投げ込んだ。にしても…
「これ…ニンニク大好き人間でも体調崩しますよ…生き地獄だぁ…」
 と不躾男から漏れるくらいには凄惨だった…が、むかしお得意様からの遺言で花の代わりにニンニクまみれにしたことがある私はデジャビュだった。あの時の遺族の顔は今でも忘れられない。
 そこからまた霊柩車に乗り込みゾンビのなかを突っ切った。余ったニンニクをありったけ塗りたくったからか、勝手に避けていく。愉快愉快。
 にしても、親玉を無くしたゾンビの行動は無秩序のソレ。人間を襲っているのはまだマシで、お互いに痛めつけあってる姿はホントに見てられない…産まれた苦しみをその叫びの中に見てしまう。惨めであり、可哀想であり、それでいて怖さもある。
「そうそう、ここにくる途中でこんな動画があってさ!どうやらこれが原因らしいんだよ!」
 返ってこの不躾男はなんとも楽しそうだ。楽しそうだから生きていられるのではないかと、そう考えもする。
「ん、なになに…『吸血鬼を蘇らせてみた!』?お前マジで言ってんのか?」
「俺も何かの冗談かと思ったんだよ?でも、時刻や場所を見るとぴったり合うんだよ!」
「…確かに」
 そういうと不躾男は動画を再生した。
  
 どーも…××でーす!今回は、吸血鬼を蘇らせよう…ということで。コチラの博物館に来てまーす…で、なんで来たのかって言うと、夢のお告げがありまして…初めはウソだと思っていたんだけど、自分の名前を言い当てられたり、今の現状…苦しみ?みたいなものを言い当てられて…少し信じてみようかなって調べたらドンピシャで…ま?世の中への復讐?(笑)みたいなことかな?で、来ました~。
 …コチラが棺ですね。まぁ、地方の博物館、そしてよく知らない国の宝物ということもあって警備も薄いと…では、やっていきたいと思います…コチラがごま油…これで封印されている “糊” が融和されるらしいです…んっ…おっ…開きました…意外とすんなり行ったな…そして水…硬水ですね…どうやらその国の水じゃないとダメみたいで苦労しました…で、これを包帯の上からかけると…えっと…かけてからの呪文は…『ヘプタミラバ ドルバナルパン』か…
『ヘプタミラバ ドルバナルパン』!
お、動き出した!え!マジで!うわ!本当に吸血鬼だ!これは伸びるぞ…!世の中への復讐だ!は、ははは!はははははは!…おい!待て!オレが蘇らせたんだぞ!オイ!やめろ!オレを!オレを乗っとるなぁぁぁ!
  
「…なるほど、生配信だったのか」
「みたいだな」
「で、どうすんだ?流石にもう一回封印しないといけないんだろ?」
 たしかに。今は時間稼ぎの一環で、本格的な封印…もしくは蘇らせない手段を取らなければならないだろう。
「それだけど、殺せるものなら殺してると思うんだ、始めっから。それができないから “封印” と言う手段をとったと。で、仮説なのだけれど、コレがもといた国は海がなかったらしいんだ。で、その発想がなかったんだと思うんだけど… “海に沈ませて殺し続ける” ってのが最善策なのではないか?」
 残酷だなぁ…とはいえ確かに理に適ってる気がする。
 そういって一晩かけて走らせて、ようやく海に出た。しかし落とすにしても、落ちた衝撃で霊柩車が壊れては元も子もない。それでいてそこそこの深さが欲しい…そして人目がつかない場所…と慎重に3人で場所を選定してベストな場所を探していたら、時刻はいつのまにか夕方あたりになっていた。しかし不思議な話だけれど、吸血鬼がいつ起き出すかわからない緊張感からか眠気は全く来なかった。
「よし、準備万端だ。これだけの石を積めば、深く深く沈むだろう!じゃ、行け!」と運転席にギュウギュウに詰めた岩や石にアクセルを踏ませた後輪を止めているつっかえを取ると勢いよく霊柩車は海へと頭から落ちてった。ざぶーん!とその飛沫を含んだ潮風にニンニクの匂いが混ざって、ふと新作の構想が浮かんだ…
 その後、ゾンビは自衛隊によって残らず駆除された。そして私の新作は人気を博している。変わらず残る動画を漁っていくと配信者が私のラーメンを食べに来ていたこと、そこで海を泳げないことをトクトクと語っているのを見つけた。そこに彼の人生の不幸と主人公になれない人種のおかしみを見つけて、笑ってみたりしている。
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