最強魔術師の歪んだ初恋

黒瀬るい

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 おじさまに言われるがまま部屋に戻った私は、ベッドの中で熱を持て余していた。
 体が熱い。
 でもこれは熱のものじゃない。体調が悪いときのものでも。どうしてこんなに体が熱いの――と疑問に思いながら、そういえば、月のものがきていたのだと急に思い出す。

 下着を汚してはいけない。
 火照った体をどうにか起こして、回らない頭で下着を脱いで、私は愕然とする。

 ――血なんて流れてない。
 代わりに、透明な液体が、下着に大きな染みを作っていた。

「なんで……」

 初めて見る。これはなに?
 なのに、初めて見るのに。私の体は、答えを知ってるみたいにさらに熱くなる。
 頭まで布団を被って、そろそろと秘所に手を伸ばす。熱い。火傷したみたいに熱い。
 それに――、

「あっ……!?」

 少し指を滑らせただけなのに、経験のない快感が体を染める。さらに指を滑らせれば、透明の液体は溢れる一方だ。

「あっ……ぁあっ……!」

 気持ちいい。秘所を往復する指が止められない。
 それに私は気づいてしまった。今秘所を撫でる指は、先ほどおじさまに舐められた指だということに。

「っ……あっ……おじさま、おじさまぁ……!」

 自分の指なのに。おじさまに舐められただけなのに。おじさまの名前を口にしながら撫でると、快感はいっそう強くなった。
 夢中になって指を滑らせる。息が上がって、布団を被り続けるのが辛くなってきた。どうせ誰かが入ってくる時には扉をノックしてくれる。だから、布団から抜け出した。新鮮な空気を胸いっぱいに吸って、それからまた、ぬるつく秘所に指を伸ばす。

「あっ、……ぁっ、あっ……おじさま……! おじさま……っ……あっ、……ぁあっ……!」
「――そうも熱烈に名前を呼ばれているなんて思いもしなかったな。しかも、私に舐められた指で自慰に耽っているのかい?」

 声が。
 ――おじさまの声が、

「あっ……!? あっ、いやぁっ……待って、おじさま、あっ、いや、ぁっ……なにかきちゃう……っ!?」

 おじさまはなにもしていない。
 ただ、ただ私のベットサイドに立っていただけだ。
 なのに私の体には、抗い切れないなにかが襲ってきた。感じたことのない強い快楽。頭が焼き切れそうなぐらい熱くなって、それから真っ白になった。
 
「ぁ、あ……」

 熱い。全身から汗が吹き出している。
 どうして、私の体、どうなっているの? 疑問を掻き消すかのように、ベッドがぎしりと鳴った。おじさまが、ベッドに腰を下ろしたからだ。

「いけない子だねアリスは。こんな昼間から自慰に耽っているなんて」
「……じい……?」
「1人で性的な快楽を楽しむことだよ。……いけないなぁ。こんなに淫乱では、君のためにと用意した伯爵に対して失礼になってしまう」
「……、……伯爵……? ……一体なんのことですか……?」

 おじさまの指が私の髪を梳く。
 小さい頃から何度もされてきたことなのに、体に甘い痺れが走った。こんなこと、初めてだった。

「君の新しい嫁ぎ先だよ。君のお父上を説得して、せっかく新しい、――普通の、男を用意したのに」
「そ、そんな話、私は聞いていなくて……」
「当然だとも。君には話していないからね。……でも残念だよアリス。こんなに淫らな君は、あの男の元には行かせられないね」

 座っていたおじさまが腰を上げて――私に馬乗りになった。おじさまは髪を解いていて、カーテンみたいに黒い髪が垂れ下がる。昼間なのに夜みたいになって、胸がざわりとうるさくなった。

「さてアリス。君はどうする? 貴族社会において、女性は誰かに嫁がねば生活していけない。けれど困ったことに君は淫乱ときた。そういうのを好む男ももちろんいるが、あの伯爵はどうだろうな」
「お、おじさま……私はもう嫌です、……知らない男性の元に嫁ぐのは……」
「それならどうするというんだ?」
「それ、は……」

 回らない頭で必死に考える。
 おじさまの言うことは正論だ。なんの反論もできない。
 けれどだからといって、もうあまりよく知りもしない男性の元に嫁ぐのも嫌だった。私は、私が私でいれる場所で生きていたい。でもそんな男性、この世にいるはずが――

 ――『おじさま、私、同じおじさんだったら、おじさまと結婚したかった……』

 自分の言葉が脳裏に翻る。
 あのときは、ほんの、慰めのつもりで口にしただけだった。
 でも今は違う。
 この世でただ一人、私の全てを受け入れて、励まして、優しくしてくれる人がいるではないか。

「おじさま……」
「……なにか良い考えが浮かんだかい?」
「おじさま、……私、おじさまと結婚したい……」

 本当に、紛れもない本心からの言葉だった。
 突然こんなことを言って驚かれるかもしれない。
 そう思ったのに、おじさまは全く驚く様子すら見せず、それどころか、それがさも当たり前かのように、鷹揚に頷いてみせた。

「その言葉を待っていたよ。今から君は――私のたったひとりの妻だ」
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