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生贄になってしまいました
「アンタが今度の蛇神の贄よ!」
私を指差し、大笑いしながら義姉がそう言い放った。
まぁそうだろうな、と思っていた私は、ただ静かに頷いてみせた。
*
深い深い山奥にあるこの村には、奇妙なならわしがあった。
『12年に一度、蛇神様に生贄を捧げる』
いつ頃から始まったのか定かではない。ただ、12年に一度、女がひとり、生贄として蛇神様の元に行かねばならないのだ。
「なによ!生贄になるのよ!少しは悲しそうにしてみたらどう!?」
私の態度が気に食わなかったのか、義姉が狂ったように叫んだ。周囲の大人はなにも言わない。むしろ、生贄に選ばれた私が泣き出したり逃げ出したりしないことにホッとしている様子すら感じられた。
義姉をよそに、村の長から説明が始まる。
曰く、蛇神様の姿は誰も見たことがない。
曰く、村の外れにある、封じられた洞窟の先に蛇神様はいらっしゃる。
曰く、決まったからには少しでも早く蛇神様の元へ行かなければならない。
生贄という言葉ではあるが、曲がりなりにも神様に献上するもの。神様に失礼がないように着飾ったり身を清める必要はないのか。不思議に思って問いかけると、そんなものは必要ないと一刀両断されてしまった。
「あぁこれでまた12年、村が守られるよ。ありがとう」
これっぽっちも感謝を感じられない言葉だった。
「蛇神様の機嫌を損ねる前に早く行ってくれないか」
そう捲し立てられ、結局私は、松明だけ片手に蛇神様の元へ行くことになったのだ。
*
初めて入った洞窟は、驚くほど細く長い構造をしていた。
歩いても歩いても先がない。ただひたすら長い一本道が続くだけ。途中なにかを蹴ったり踏んだりしながら、続く道をただひたすらに歩いた。
そうして松明の炎が尽きそうになった頃。
見計らったように、遠くに光が見えた。あそこが洞窟の終わりだろうか。終わりが見えたことに安堵し、歩いて、歩いて、
「——やぁ。今年のはちゃんと辿り着いたんだね」
暗闇の先。洞窟の終わりには——上半身は人間。下半身は蛇の——蛇神様がいらした。
*
「へ、へび……」
蛇神様、など、本当はまったく信じていなかったのだ。大方、村で不必要になった女を捨てるための体の良い儀式。だから贄だというのに、若い女、とかの指定もないのだと、そう、思っていたのに。
「蛇だよ?あれ?私のことは聞いていない?」
「な、なにも……ただ私は蛇神様の生贄になれ、と言われだけで……」
「ふうん」
ちろ、と蛇神様が舌を出した。
長くて先の割れた舌は正真正銘蛇のそれで、ひ、と思わず悲鳴が漏れる。
「あ、あの」
「まぁ良いや。なんせ36年ぶりの生きた贄だ。名前はなんて言うの?」
「ねね、です」
「よろしくね、ねね。不便なところだけど楽しんでいってくれ」
*
蛇神様と、蛇神様の住まいは不思議な姿であらせられた。
上半身は——人間である部分は、それまで見た中で、一等顔の良い男のそれだった。人ならざる銀の髪、切れ長の金の瞳。舌だけは蛇のそれ。着物のような、奇妙な服を着ていて、上半身だけ見れば人間と見間違えてしまうだろう。
下半身は——こちらは完全に蛇の形をしていた。長く太く、私ぐらいの人間であれば、すっぽり収まりそうなほど立派な体。足らしきものは見当たらなかった。
「ここは一年中春のような気候だからね」
ここが私たちの住まいだよ、と案内されたのは花々が咲き誇り、清水の湧く池のある不思議な空間だった。外のはずなのに、なぜだかここだけ世界から切り取られているような……いやそもそも洞窟の先にこんな空間があること自体おかしいのだ。もしかしたらここは極楽浄土で、知らぬ間に私は死んだのかもしれない。
そんな馬鹿げた考えがよぎる程度には、理解の及ばない場所に住まわれていた。
こうして私と蛇神様の暮らしは始まった。
とはいってもなにをするわけでもない。この空間には私をいじめる人はいない。家事に精を出す必要もなく、不思議なことに腹も空かなかった。
ただ毎日ぼんやりと、蛇神様のそばで時間を貪る。寝転んで、飛んでる鳥を目で追って、たまにどこからか跳ねてくる兎を追いかけたり。
「蛇神様、36年ぶりの生きた贄だと仰っていましたが、それはどういうことなのでしょう」
「うーん。そうだねぇ。逆に聞くんだけど、ねねの村には蛇神様の信仰なんてあったかい?」
「……、…………そういえば……ない、ですね」
「そうだろそうだろ。ねねの村は私のことなんか信仰してないんだよ。贄というのは、不必要になった婆さんなんかを捨てる、都合の良い儀式ってわけさ。蛇神とかも適当な嘘っぱちで言ってんだろうよ」
「……うわぁ……」
「君も不必要な人間だったんだねぇ」
「えぇ、まぁ、はい。早くに両親が死んだせいで叔母さんの家で面倒見てもらってたんですが……」
「邪魔者にされた?」
「そうですねぇ。なにかと義姉さんは突っかかってきましたし、あとは……叔母さんの旦那が私に色目を使ってきて……それでもう色々ぐっちゃぐちゃになったんです」
「痴情のもつれは怖いことだ」
「本当に。ここではそういうのもなくて安心です」
「本当にそう思うかい?」
「…………まさかこんなところで痴情のもつれが」
「もつれてはないさ。今のところ、ね」
「今のところ……?」
隣の蛇神様が、蛇のような下肢を私の体に巻きつけた。蛇の体は冷たくて気持ちよくて、私は蛇神様にこうされるのが案外嫌ではなかった。
「君は女で、私は雄だからね。そこは自覚しといて欲しいよ」
「……雄……」
「あのねぇ。君がその太ももを曝け出して寝転んでいるのを見て、私がどう思ってるかなんて考えたことなかっただろう」
「……神様も人間に興奮するんですか」
「そりゃあするさ」
そう言われるとなんだか意識してしまう。
今だってまさに太ももをおっぴらに曝け出していたのだし、なんだったら胸元だって少しはだけている。ちょっと気まずくなってせめて胸だけでも、と整えると、んふふ、と頭上から笑い声が聞こえた。
「意識した?」
「そりゃあ……」
「でも残念だねぇ。今更遅いよ」
「おそ……」
「私はねぇ、ねねを、こう、ぱくっと食べて自分のものにしたいと思っちゃったから」
「ぱ、ぱく……た、食べないでください!私は美味しくありませんから!」
「例え話だよ。ぱくっと食べるって言うのはね」
ちろり。と長い舌が顔を覗かせる。蛇神様の顔も私の側に寄ってきて、——耳を舐められた。
「ひ……!」
「蛇の舌はながぁいからね。それに、蛇の体ってのは便利なもので、」
どんな動きをしたんだろう、ぐるん、ととぐろの中で私の体が回転した。対面するように向かされてしまう。
「こういうこともできるし」
蛇神様が私の胸に顔を埋めた。大丈夫、服は直した、そう思っていたのに、
「こういうことだってできる」
「ひ、あっ……!?」
長い舌が、服の隙間からするりと入り、胸を舐めた。それだけならまだ良かったのに、あろうことか乳頭まで捕らえ、長い舌が乳頭に絡みついた。
「あっ、蛇神様っ、そこはっ……」
柔らかな乳頭を丹念に蛇の舌がほぐしていく。かと思えば舌先で乳頭の先端をほじられ、味わったことのない刺激に体が勝手に震えた。
「ぁ、っあ、」
もう片方の胸もほじり返され、ぴん、と乳頭が立ち上がってしまった。すると今度はその立ち上がった乳頭にぐるりと舌が巻き付いて、牛の乳でも絞るように、きゅう、と締めあげられてしまう。
「あぁあっ……!?」
私の乳頭を締めたまま、蛇の割れた舌先が、触れるか触れないかの具合で先端を舐める。いやいや、便利すぎないか、長すぎないか蛇神様の舌は。そう突っ込みを入れたいのに、快楽を前にそれは全て霧散してしまう。
「ひっ、やだぁっ……ちろちろするのや、ぁっ……」
割れた舌先は少し鋭利な形をしていて、それが絶妙な刺激になってしまう。痛いわけではない。ただ、その尖りがいたずらに乳頭を刺激し、むず痒いような奇妙な感覚が襲ってくるのだ。
「便利だろう?」
しばらく私の乳を弄び、得意げに蛇神様は言った。私はといえば息は絶え絶え、蛇神様を睨むことしかできない。
「そう睨まないでおくれよ。まんざらでもなさそうだったじゃないか」
「……ええその通りですよ。まんざらじゃなかったから悔やしいんです」
「ふふふ、意地っ張りな子は好きだよ。どのぐらいその威勢が持つかねぇ」
それからというもの、なにかあれば蛇神様に弄ばれる日が続いた。
とにかく乳を、体を舐められる。隙を見せれば愛撫される。そう回数をこなされるとこちらもだんだん体が出来上がってしまい、気付けば蛇神様に舐められるのを心待ちにしてしまうほどだった。
しかし蛇神様は絶対に私の股座には触れなかった。触れられないからこそ、私のそこは日に日に熱を孕み、燻るようになっていった。
「ほら、胸はだけてるよ」
「んっ……」
いつものようにちろちろと長い舌が乳頭に絡みつく。私は特に抵抗するでもなく、蛇神様の舌を受け入れた。
「最近さ、わざと胸をはだけさせてない?」
「……そんなことありません」
「本当に?」
「……本当です」
「嘘ついてたら舐めるのやめようかな」
「う、嘘、嘘です!」
「あぁやっぱり嘘だった?」
しまった。思った時にはもう遅い。勝ち誇ったような笑みを蛇神様が浮かべた。
「まぁね。知ってはいたよ。君の女のそこが疼いてることぐらい」
「なっ……」
「匂いがするからねぇ。咽せ帰るような女の匂いだ。花の蜜より甘くて、獣の匂いより生臭い。雄を惑わす匂いだからねぇ」
「わっ、わかってたならどうして触らないんですか!」
「いや、そのぐらいの常識はあるよ?」
神様に常識を説かれる日が来るとは思ってもいなかった。
「舐めて良いなら舐めるけど?こっちもそろそろ我慢の限界でね」
蛇神様が、それこそ蛇のように身を屈めた。内腿を長い舌が這う。それだけでとぷり、とはしたないそれが漏れてしまった。
「……あぁ垂れてきた。勿体無いなぁ」
思わず下を見ると、下履きで吸いきれなかったそれが、糸を引きながら真っ直ぐに垂れていた。蛇神様の舌はそれを器用に掬い、なめとってしまう。
「ねぇ舐めて良い?痛くはしないよ?」
「……好きにしてください」
「あぁ良かった。それじゃあほら、そこに仰向けになって」
ふらつく足取りで仰向けになると、すぐに両足を割り開かれた。蛇神様の頭が股座に埋まり、内腿に、蛇神様の吐息がかかる。
「……あぁすごい……間近で嗅ぐと本当にたまらないね……男を誘惑する匂いだ」
「恥ずかしいこと言うのやめてください!」
「事実を言っているだけなのに」
ぐちょぐちょに濡れていた下履きを剥ぎ取られる。空気にさらされて、濡れているそこがひんやりした。
「お」
「お?」
「触ってもないのに蜜が溢れてきた」
「~~~ばか!蛇神様のばか!神様のくせに変態!」
「好きなだけ言ってると良い」
「ばかば、か、ぁっ……!?」
蛇神様の長い舌が、割れ目に沿ってひと撫でした。
「あぁっ……あっ、あっ、ぁ、」
細く長い舌が、そこを丁寧に丁寧に舐め上げていく。びらびらの皺も一本一本舐められ、隙間という隙間も舐め尽くされる。初めてのことに、私は、どうすることもできず喘ぐほかなかった。
「ぁっ、あぁっ、ひ、ぁっ……っ、あっ……!?」
蛇神様の舌が、穴より少し上の部分を舐めた。違う。舐めんじゃない、ほじった。そこをほじられた途端、びりびりとした快楽が体を襲い、一気に体が熱くなってしまう。
「蛇神様どこ舐めてっ……」
「確か陰核とかいう器官だろう?快楽を得るためだけの器官とかなんとか」
「ちがっ……そうじゃなくて……」
「そうじゃない?あぁ、皮を被ったままほじられるのは嫌だった?皮を剥いてほしいんだな」
「皮……?……っ、ひぁああっ……!?」
ずる、となにかが剥ける感覚。それと同時に、舌がそこを舐め、鋭すぎる快楽が襲ってきたのだ。
「あっ、やめ、ひぅうぅっ……」
ちろちろと舌先で舐めらる。それだけで頭がおかしくなりそうなほど気持ちよかったのに、あろうことか蛇神様は、陰核、というそこに舌を巻きつけてしまった。
「あぁあっ……!?」
きゅうう、と根本を絞り、そのまま器用に舌が上下に動き出した。とんでもない、とんでもない気持ちよさだった。乳頭にされてたことなんてお遊びだった、それぐらい、すごくて、目の前に火花が散って、秘部がきゅうきゅう締まる。蜜が止まらない。体が勝手に震える。気持ちいい。気持ちいい。だめだくる、大きい波がきてしまう、
「やぁっ、……やだやだぁっ、くる、なにかきちゃうからぁっ……!」
しこしこ♡しこしこ♡
まるで陰核を磨くかのような動き。蛇神様の唾液のせいで滑りもよくって、味わったことのない感覚が体を満たしていく。気持ちいい。こんなの耐えられない。くる、きちゃう、だめ、頭がおかしくなる、
「~~~~!!?!」
なにか、きた。それと同時にぷしゃぁぁ、とおしっこが吹き出した。お腹の奥が震えて、体が硬直して、気持ちいいのが一気に体を駆け回る。自分の体じゃないみたいに不規則に痙攣して、そのたびにおしっこを漏らしてしまう。
「おや、潮まで吹いて」
じゅるるるる、と吹き出したそれと溢れ出した蜜を同時に吸われてしまった。でも吸っても舐めても私の蜜は溢れる一方だから終わりがない。声を出すことすらできない気持ちよさ。気持ちよすぎてぶるぶる体を震わせていると、
「中も舐めて良い?」
「っひぃいっ……!?」
女の穴の中に、蛇神様の舌が入りこんできた。
ながぁい舌がうねうねと中で蠢く。さっきびらびらを舐められていたように、中の肉壁を、皺を、丁寧に丁寧に舐められる。腰が勝手に浮いて、蛇神様の舌から逃げようとするのに、その度に押さえ付けられて、中を丹念に嬲られていく。
そうして舌は、まるでなにかを探すように奥へ奥へと入り、——ついに、そこを捕らえられてしまった。
「あぁぁっ……!?あっ、あっ、!?」
蛇神様の舌が、私の中の一番奥、の、そこを、舌でべろりと舐めた。そのひと舐めだけで、深い快楽の波がやってきてしまう。一番奥、奥なのに入り口とわかるそこをこじ開けるように舐められ、蜜と、蛇神様の言う潮が止まらなかった。
「やぁっ、やだぁぁっ……気持ちいいのが止まんなぃぃ……!!頭おかしくなるぅっ……」
だめだ。こじ開けられたら本当に狂ってしまう。耐えられない気持ちよさに足をばたつかせると、ようやく蛇神様は舌を抜いてくれた。蛇神様はたいへんご満悦のようで、今までで一番ご機嫌な様子で股座から顔を上げた。口のまわりにたくさん私のものがついているのに、特に気にした様子もなく、なにやらごそごそ自分の下肢を探り出した。
「せっかくだし、夫婦(めおと)にでもなろうか」
なに?めおと?確認したいのに体が動かない。カエルみたいに足をおっ広げてだらしなく横たわっていると、ぐずぐすに溶けている秘部に、なにやら擦り付けられた。
「ねぇ、ねね。私と夫婦になろう。それから可愛いやや子を産んでくれ」
「は、え、や、やや子……?」
「そうだ。神様の嫁になるんだ、苦労はさせない」
「え、あ」
「あぁもうだめだ。許しておくれ、ねね。早く君を犯したくてたまらない」
「ま、待って、話が見えな、いっ——!」
どちゅん、と圧倒的ななにかが、私の中を貫いた。
「あっああっ……!?」
「あぁたまらない。ねねの中、熱くて狭くて最高だよ。ね、動いても良いよね?」
「あ、っ、ぁあっ……!?あっ、あっ、ああっあ……!?」
蛇神様が腰を引く。すると、棘のような、なにかが中で引っかかった。腰を引けば引くだけそれが引っかかり、それが、気持ちよくて、たまらなくて、
「あぁあっ……!蛇神様、またきちゃうぅっ……」
ぎりぎりまで引き抜かれて、最奥に叩きつけられる。さっき舌で舐められていたところだ。ごりごりと腹の奥の奥を抉られ、今度こそこじ開けられているような感じ気がして、気持ちよくて涙が出てしまう。するとまた蛇神様のそれが引き抜かれて、今度は引っかかりに翻弄されてしまう。
「あぁすごい、すごく良い。ねねもやや子が欲しいんだな。腹の奥にたんと出してやろう」
蛇神様がなにか言っているがもう理解できなかった。ただひたすら気持ちよくて、たまらなかった。
「あっ、あっ、蛇神様のっ、ぞりぞりされるの……っ、気持ちいぃっ……おかしくなる、ぅっ……」
「気に入ってくれて良かったよ。私の一物は2本あるからね。しばらくは一緒に気持ちよくなろうね」
「に、にほん……!?っ、ひぁあっ……奥だめぇっ……またきちゃう、っ、漏らしながらきちゃうからぁっ……」
それから長いこと。本当に長いこと交わっていた。全て終わって全て理解した頃には、私の胎には神様の精がしっかり植え付けられていた。
*
「あの、蛇神様、本当の本当に産めるんですか?」
「産めるさ。もし体が適応していなかったから、とっくにねねの腹は破れているはずだぞ」
「ひええ」
あれからさらに月日は過ぎて、気付けば私の腹は、妊婦のように膨れ上がっていた。
しかしそれは人間の母親のようなものではない。ぼこぼこ歪に盛り上がり、傍目から見ればかなり奇妙な形になっていた。
「蛇は卵から産まれるからな。卵の形で孕んだんだろう」
「でも私人間ですよ」
「私は蛇だが?」
「そういう問題ではなくてですね」
とはいえいくら推し問答したところで、膨れた腹が元に戻るわけもないのだ。人間のお産のように産気づくことはあるのだろうか……と悶々とした日々を過ごしていると、唐突にその日はやってきた。
「へ、蛇神様、う、産まれるかもしれません……!」
「なにっ」
とある夜のことだった。突然、きゅうう、と下っ腹が異様な疼き方をしたのだ。
「大丈夫か、大丈夫か」
思ったよりオロオロする蛇神様をよそに、私は、自分の体に訪れた変化をじっと感じ取っていた。
下っ腹の疼き方。……この感覚は覚えがあった。
「ど、どうしよう……」
「どうしよう?」
「へ、蛇神様、こんなとき、なのにっ……イくかもしれませんっ……」
「はぁ!?」
さすがに蛇神様も驚いたようで、それまで聞いたことのない悲鳴を上げた。私だって認めたくない、だがこれは——蛇神様が教えてくれたのだが、絶頂に達する時はイくと言うらしい——イきそうになったときの感覚と酷似している。
「あっ、や、蛇神様っ、イ、っ、いくいくぅっ……」
触られてないのに。愛撫されてないのに。下っ腹がきゅうんと疼いて、蜜が溢れた。立ってられなくなってその場にへたり込む。強制的にイかされたせいで体には快楽の火がともり、ぐらぐら視界が揺れ出した。
「ねね、ねね!大丈夫か!」
「大丈夫、んっ、ですっ……。蛇神様、私のあそこ、どうなってますか……?」
「どうもなにも……濡れて、」
「っう!?あっ、やだぁっ、蛇神様、っ、またイくっ……」
思わず蛇神様にしがみつく。下っ腹が激しく疼き、中が締まるのと同時に、なにかが。なにかが、下へと降りてきた。
「あっ、あっ、蛇神様、た、卵がっ……」
「卵がどうした!?」
「卵が産まれるぅぅ……っ……」
「卵が産まれる!!?!」
疼きが、軽くイくのが止まらない。イクたびに、ぞり、ぞり、と卵が下へ降りてくるのがわかる。蛇神様のちんちんとは違うつるりと滑らかなもの。卵だ。これはきっと卵なのだ。私と、蛇神様の。
「蛇神様ぁっ……卵っ、卵潰しちゃだめだからっ……足を開いててほし、ぃっ、いくいくいく……っ!」
「あ、足、足だな!?」
私を後ろから抱きかかえ、蛇神様に両足を開かれる。良かった、これで、足を閉じて卵を潰してしまう心配はない。ほっとしたのも束の間、すぐにまた絶頂が顔を覗かせた。
「あぁあっ……!?!やぁっ、また、イクぅっ……!」
イクときのうねりを利用して、卵はすぐそこまできている。もう少し、もう少しで出てくる。あと少し、あと少しなのに。
「ひ、っ、蛇神様、卵、もうちょっとで産まれますっ……」
「本当か!?」
「だからっ、だから見ててくださいね、卵が産まれるところっ……」
みち、と秘部が押し開かれる感覚。そうだ、これは、初めて蛇神様に犯されたときと同じだ。入れるか出るかの違いないだけで、
「あぁ、あぁ、見えてきた。白い卵の先が見えているぞ」
「っ、蛇神様っ、見てて、見ててくださ、ぃっ……あぁあっ……イクっ……いくいく……ぁ、あっああっ……!!」
今日一番深い絶頂とともに、ぽん、と真っ白い卵が産まれた。つやつやの卵。私と蛇神様の卵。
「ねね!ねね!産まれたぞ!よくやった!」
「よ、良かっ、た、」
しかし安堵したのも束の間。次の絶頂がやってきた。あぁこれ、もしかして、全部の卵産み終わるまでこうなのかな、そんな嫌な予感がした。そして嫌な予感とは大概当たるものなのだ。
その後、本当に気が狂いそうなほど絶頂を繰り返し、私の初めての産卵は終わりを告げたのだ。
*
「まぁ確かにな。よくよく考えてみれば確かにねねがイくときは、こう、中がうねって、私のものを迎え入れているような、それとも押し出すような感覚はあったがな」
13個のぴかぴかつやつやの卵を前に、蛇神様がもにゃもにゃ話している。
産卵してから2ヶ月。
いろんな意味で壮絶だった産卵話は御法度になっていたのだが、子供が産まれる前に、もう一度きちんと話そう、ということになったのだ。
「いや私だって人間を伴侶にするのは初めてで……でもまさかな、まさか絶頂のうねりを利用して卵を押し出すとは普通思わんだろう」
「……まぁ痛いよりはマシだったかもしれませんが」
「ううーん。異種間同士での交尾かつ産卵だったから、せめて苦痛がないようにと神様が慈悲を与えてくれたのかもしれない」
「蛇神様だって神様でしょうに」
「私はあくまで蛇の神で、産卵や出産の神ではないからなぁ」
「神も不便なんですねぇ」
思わずため息を吐いて、卵を見やる。普通の蛇の卵より少しだけ大きいそれ。蛇神様みたいに上半身人間、下半身蛇ならまだしも、逆だったらどうする……?不吉なことが頭をよぎり、いやいや、と頭を振ると、まるで見計らったように、ぴしりと卵にヒビが入った。
「蛇神様!」
「ねね!」
ぴしり、ぴしり、と次々と卵にヒビが入っていく。固唾を飲んで見守っていると、やがてヒビを突き破り、——それはそれは可愛らしい蛇の赤ちゃんが産まれてきた。
「わーーー!?」
叫んだのは蛇神様の方だ。産まれてきた赤子を前に爛々と目を輝かせ、そしてもう一度叫んだ。
「わぁぁぁ!?」
「もう!なんですか!赤ちゃんがびっくりしますよ!」
「この子ら!普通の蛇じゃない!神聖持ち……神様になる蛇だ!」
「いやだから貴方も神様でしょうに」
「いやいや半分は人間の血なんだ!妖怪みたいな奴が産まれてもおかしくないはずなんだが……!?」
「えええ、でも私は確かに人間で……あれ?」
ふと、蛇神様の体に反射した自分の姿を見る。
黒目だったはずの目が、金色になってる。あれ、いつの間に?あれ?
「え、蛇神様、私、ここに来たとき黒目でしたよね?」
「今は違うけどな」
「いやいやいや、そんなの見ればわかりますって、えっ、いつ、いつから?あれ?」
「そりゃあ私とまぐわい出したときから……?あ、もしかして私の唾液やら精を受けてだんだん人間じゃなくなってた……?」
「うそぉ!?」
あぁそういえば。ここには鏡なんてものなかったし、蛇神様とまぐわいだしてからは、その圧倒的な気持ちよさの虜になってしまい、ずーっとしてたんだった。それこそ、己の姿を客観的に見るのを忘れるぐらいに、夢中でやりまくってたのだ。
「早く教えてくださいよぉ……」
「いやぁ、まぁ、自分のことなんだし気付いてるものだと思って……?」
「目の色なんてそうまじまじと見ませんって!」
「まぁまぁ良いじゃないか。こうしてやや子も無事産まれたんだし……」
蛇神様の下肢が、ぐにょぐにょ私の体に巻き付いた。
「……それに、これならまた卵を孕んでも良いとは思わないか?」
産まれたての子どもたちに聞こえないよう、小さな声で蛇神様が囁いた。それを耳にした私の体は、きゅうん、とはしたなく疼いたのだった。
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