女王様!

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お食事の時間

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「サリア様、お食事のお時間です」
工場長室に呼びに来たのは、インキュバス王家執事のルーブル。ルーブルの一家は代々王家に仕えているが、サリア専用の執事兼教育係として幼い頃より付き従っていた。今ではサリアの右腕としてこの工場を支えている。
「…もうそんな時間なのか。これが終わったら行くから、準備させといてくれ。」
「かしこまりました。」
そう言ってルーブルはいつものように提供者たちが働く搾取棟へと向かう。刑務所のように鉄格子の部屋がずらっと並び、提供者たちは夕の労働に励んでいた。

「ぐうあっっっ、はあああっ、あと、1時間もっあるのかよっ、ひゃあいああっ」
「あー、あー、とまんねえーっ、でるでるっ、いあああああっ、でたああああっ」
「きもちいいいっ、あーーっ、いくいくいくいくっっっっ、あああっちんこ壊れるうううううっ」

あたりは吸引による刺激に喘ぐ労働者の声で溢れかえっていた。
そんな中で、吸引機もつけず持ち込んだ椅子に腰掛けて悠々と雑誌を読む男性の姿があった。その部屋の前で止まり鉄格子の扉の前から声をかける。
「サリア様が間も無く食事をなさられる。間宮徹、準備をしろ。」
ルーブルはそれだけ告げるとサッサと搾取棟を後にした。
間宮は、はあ、とため息をつきながら部屋を後にする。シャワールームに向かい、脱衣所で下だけ服を脱ぎ下半身だけ念入りに洗う。特に陰茎は汚れが残らないよう皮の中まで入念に洗浄する。気だるげな雰囲気を漂わせながら思い足取りで歩き、サリアの食事部屋に到着すると、またさらに深いため息をついた。
3日に一度の精液搾取で済むと言うのはこれ以上ないくらい嬉しいことではある。他の提供者たちが労働している間は同じように鉄格子の中にいなければいけない決まりだが、その間は何をしたって良い。これほど楽な仕事は他にはない。だが、サリアに直接精液を提供するというのは、何度経験しようと気が重かった。その人あたりの良さで今まではどんな気難しい人間とでも上手くやってきていた。だが、サリアは間宮がどれだけご機嫌をとろうがいつも無表情で、言動は冷徹を極めている。自分勝手な上に気まぐれで、何度も散々な目にあっていた。できれば顔を合わせたくもないが、『予約』の特権を手放すのは惜しいし、『予約』に選ばれれば拒否権などない。この工場のトップであり、インキュバス王家の末裔である彼に歯向かったりなどした日には、これから生活に困るのは目に見えていた。仕方なく、間宮は目の前にあるドアをノックした。
「間宮です」
「…入れ」
中から声が掛かると間宮はドアを開けて中に入る。すると中のソファに腰を掛けて書類に目を通しているサリアの姿があった。すぐに立ち上がりサリアは部屋の真ん中にある簡易ベッドに歩み寄った。間宮はそれを見て下の服を全て脱ぎ去り、ベッドに乗り上げる。そして肘を立てて上半身だけ起こしたまま、仰向けで寝転ぶ。
「どうぞ。」
間宮は事務的に無表情のままサリアを見上げる。サリアはそんなことを気にもしないようにベッドに乗り上げると、すぐさま間宮の下半身へと顔を埋めた。
「っっふ」
間宮は事務的に済ませようとしたが、やはり陰茎を口に咥えられれば平常心ではいられなかった。そんな間宮に容赦などしないようにサリアは出し入れのスピードをはやくした。射精を促すように舌先で先端を強く舐めいじり、強く吸い上げる。
「っっあっ、いっっっくっっうううっ」
それを合図に間宮は腰をガクガクと震わせ、3日分溜め込んだ精液を思いっきり吐き出す。サリアは出し残しがないように、出した後も入念に吸い上げた。
「っっっっは、うっは、はあっ」
そしてもう何も出なくなったと分かると、サリアは顔を上げて間宮の様子など全く気にも止めることなくすぐにベッドから下りた。そして間宮に何も声をかけることなく、脇に備えられたボトルを手に取り水を飲み、タオルで口を拭うと、そのまま無言で部屋を後にした。間宮はその様子を呆然と眺め、わけのわからない怒りに襲われる。いつものことではあったが、その傲慢な態度は決して許すことなどできなかった。労働者を気遣う気持ちはないのか、俺はただの道具なのか、たくさんの不満が心の中で湧き上がる。だがその怒りをぶつけることなどできず、提供者仲間と愚痴で吐き出すことしかできなかった。



食事室から出て工場長室に戻ると、ルーブルがタイミングを見計らったようにドアをノックして部屋に入ってきた。
「サリア様。お食事はお済みですか。」
「ああ。あいつの精液はやはり上質だ。三日後もまた予約しておけ。」
「かしこまりました。」
サリアは提供者の前では出さないが一日一回の食事を楽しみにしていた。間宮の精液は特にお気に入りで、三日に一回のこの日を待ち遠しく思っていたのが、ルーブルには分かっていた。
「…提供者と何か話しましたか。」
「なんでそんなことを聞く。何も話してないぞ、お前に言われてるからな。」
「それならいいです。人間になめられないように、サリア様は人間の前では毅然とした態度でいてくださいね」
「子供じゃないんだからわざわざ言われなくても分かっている。父さんや兄さんたちからも再三言われているからな」
サリアが女王様と呼ばれるような態度をとるのは半分素ではあったがルーブルや父兄から言いつけられていたというのも要因ではあった。小さい頃から、インキュバスは人間の上に立つ種族であり、いずれはお前はその指導者的立場になるから、人間になめられるような態度をとってはいけない。人間と気安く話してはいけない、人間の前で表情を見せてはいけない、などとあらゆる規則を作られて、実践しているうちにそれが自然になってしまった。人格を形成する幼少期からそんな教育を受けていたため、サリアはインキュバスの前でも人間の前でも無表情であるし、クールなのももとの性格ではあるが、人間が言うような冷徹な部分などは本当はなかった。その誤解は、自然に発生したものなのか、故意に作られたものなのか、知っているのはルーブルたちだけだった。
「最近人間は反抗的な態度を見せますから。注意していただきたいとと思っただけでございます。」
サリアには今更ルーブルがそんなことを気にする意味が分からなかったが、ルーブルが口うるさいのは昔からなのでサリアも大して気にしたりはしない。



「そういえばサリア様、明日は新しい提供者が30人入居いたします。」
「ああ、そうだったな。とりあえず、二週間仕事をさせて様子を見よう。」
一ヶ月の周期で何人かの提供者が入れ替わるため、特に珍しいことではない。いつものように事務連絡として受け流された。
だが、その新人のうちの一人の神白という男が、この工場に波乱を巻き起こすこととなるのは、誰も予想していなかった。
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