AR Chronicle

黒鳥カラス

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第1章―放課後のログイン―

ささやかれる異変

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 戦いを制したのは誰でもなく、天から下った冷徹なシステムだった。
 だが、広場に残された空気は重く澱んでいた。

 村人たちは震えるように武器を下ろす陽斗たちを見つめていた。
 その瞳に宿るのは、感謝ではなく——恐怖。

「……人間じゃ、ない……」
 老人の村人が、震える声でつぶやいた。

 周囲の村人たちもざわめく。
「仲間同士で殺し合うなんて……」
「やはり“外の者”は危険すぎる……」
「ここに置いてはいけない……!」

「待ってくれ!」
 陽斗が必死に声を上げる。
「俺たちは村を守るために戦ったんだ! レイスウルフだって倒した!」

 しかし、その訴えは虚しく響くばかりだった。
 恐怖に支配された人々の目は、理屈を拒んでいた。

「……やっぱり、私たちはこの世界の人から見たら“異物”なんだね」
 美咲が苦しげに呟き、杖を胸に抱きしめる。

 そのとき、蓮が眉をひそめ、広場の外を睨んだ。
「……おい。静かにしろ」

 遠くから、不気味な風の音が聞こえてきた。
 それは自然のものではなく、何かの呻き声のようだった。

 村人たちが怯え、口々に祈りの言葉を唱える。
「まさか……“あれ”が来るのか……?」
「いや、封印されていたはずだ……!」

 陽斗は彼らに詰め寄った。
「“あれ”って何だ!? 何が来るんだ!」

 だが村人たちは首を振るばかりで、誰一人として答えようとはしない。

 代わりに、広場の中央に立つ石碑が淡く光り始めた。
 そこに浮かび上がる、無機質な文字。

——【新クエスト発生:封印の祠を調査せよ】——

 全員の視界に、そのメッセージが重なるように表示された。

「……またクエストか」
 蓮が槍を握り直す。
「しかも“封印”って言葉が気になるな」

「嫌な予感がする……」
 美咲の声が震える。

 陽斗は唇を噛みしめ、石碑を見上げた。
「行くしかない。……俺たちがこの世界で生きるためにも」

 村人たちの怯えの視線を背に、彼らは新たな試練へと歩み出した。
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