気づいたら日本まるごとゲーム世界でした!?

黒鳥カラス

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第1章_ベースとギルドと大阪と

狙われた低音

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 どうにか裏路地を抜けて、難波ギルドに転がり込んだ。
 全員汗だくで、誰も一言も発さない。
 息が整うまでの数分が、やけに長く感じた。

「……生きて戻ったな」
 堂島龍臣が低く言い、スティックをコン、コンと鳴らした。
 その一拍で、張りつめた空気がようやく解けた。

「でも……見たんだ。南条本人を」雅が声を震わせながら言う。
「奴は、はっきり言った。“遼の低音を奪う”って」智樹が続ける。

「……マジかよ」
 俺はサニーを抱え直し、ストラップを強く握った。
 胸の奥がざわつく。
 確かに南条は俺を狙っていた。



【システム通知】
【メインクエスト進行度:10%】
『梅田ギルドの支配を打ち破れ』
状況:南条がプレイヤー“長谷川遼”を標的に設定しました。



「おいシステム! ターゲットにされたって出るなや!」
「便利やん」智樹が冷静に突っ込む。
「いや全然便利ちゃうやろ!? 命に関わるんやぞ!?」
「でも逆に言えば、南条にとって脅威ってことよ」雅が真剣に言う。
「脅威……?」
「遼の低音は、南条の支配を乱せる。だからこそ狙われるの」

 堂島が腕を組み、低くうなった。
「……つまりや。お前は梅田にとって“切り札の逆”や。放っとかれるわけがない」

「俺、もうただのベーシストちゃうやん……」
「最初からただのベーシストではなかったんやろ」智樹がにやり。
「いや、俺は飯のために戦ってるだけや……!」



 舞さんが会議用のウィンドウを立ち上げた。

【緊急会議:対梅田ギルド方針】
・南条剛は難波の切り札“低音”を狙っている
・支配下プレイヤーの数が増加傾向
・当面は迎撃と情報収集を両立
・遼を単独で行動させないこと



「最後の項目は絶対厳守」舞さんがきっぱり言う。
「……え、俺もう一人でトイレ行けへんの?」
「トイレはいい。戦闘行動の話」
「よかった……」

「でも安心するな遼」智樹が言う。「要はお前、常に俺か雅と一緒ってことや」
「それ、監視されてる気分やねんけど」
「安全第一よ」雅が笑った。



 会議は深夜まで続いた。
 結論はひとつ。
 ――南条に勝つには、俺の低音をさらに鍛えるしかない。

「遼」堂島が最後に言った。「怖いかもしれん。けど、お前の音はもう仲間の命に直結してる。鍛えろ。もっと響かせろ」

 俺は無言で頷いた。
 サニーを抱えたまま、心の奥で決意を固める。

 逃げられへん。
 狙われるんやったら、その分強く鳴らすだけや。
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