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166.目黒区図書館システム殺人事件

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======== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
大文字伝子・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。
大文字(高遠)学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。
一ノ瀬(橘)なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。EITO副隊長。
久保田(渡辺)あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。EITO副隊長。
愛宕(白藤)みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。愛宕の妻。EITO副隊長。
愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。
斉藤理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。
夏目警視正・・・EITO副司令官。夏目リサーチを経営している。EITO副司令官。
増田はるか3等海尉・・・海自からのEITO出向。副隊長補佐。
金森和子二尉・・・空自からのEITO出向。副隊長補佐。
馬場力(ちから)3等空佐・・・空自からのEITO出向。
馬越友理奈二曹・・・空自からのEITO出向。
大町恵津子一曹・・・陸自からのEITO出向。
田坂ちえみ一曹・・・陸自からのEITO出向。
浜田なお三曹・・・空自からのEITO出向。
新町あかり巡査・・・みちるの後輩。丸髷署からの出向。副隊長補佐。
結城たまき警部・・・警視庁捜査一課からの出向。
安藤詩三曹・・・海自からのEITO出向。
日向さやか(ひなたさやか)一佐・・空自からのEITO出向。伝子の影武者担当。
飯星満里奈・・・元陸自看護官。EITOに就職。
稲森花純一曹・・・海自からのEITO出向。
愛川静音(しずね)・・・ある事件で、伝子に炎の中から救われる。EITOに就職。
工藤由香・・・元白バイ隊隊長。警視庁からEITO出向。
江南(えなみ)美由紀・・・元警視庁警察犬チーム班長。EITOに就職。
伊知地満子二曹・・空自からのEITO出向。ブーメランが得意。伝子の影武者担当。
葉月玲奈二曹・・・海自からのEITO出向。
越後網子二曹・・・陸自からのEITO出向。
小坂雅巡査・・・元高速エリア署勤務。警視庁から出向。
下條梅子巡査・・・元高島署勤務。警視庁から出向。
高木貢一曹・・・陸自からのEITO出向。剣道が得意。
筒井隆昭・・・伝子の大学時代の同級生。警視庁からEITO出向の警部。伝子の同級生。
青山たかし元警部補・・・以前は丸髷署生活安全課勤務だったが、退職。EITOに再就職した。
渡伸也一曹・・・陸自からのEITO出向。GPSほか自衛隊のシステム担当の事務官。
草薙あきら・・・警視庁からのEITO出向。特別事務官。
河野事務官・・・警視庁からのEITO出向。
財前直巳一曹・・・財前一郎の姪。空自からのEITO出向。
仁礼らいむ一曹・・・仁礼海将の大姪。海自からのEITO出向。
橋爪警部補・・・丸髷署生活安全課刑事。愛宕の相棒。
久保田管理官・・・EITO前司令官。斉藤理事官の命で、伝子達をEITOにスカウトした。
中山ひかる・・・以前、愛宕のお隣さんだった。謎解きが得意な大学生。伝子達の後輩。
中津警部・・・警視庁テロ対策室警部。
椎橋太郎警部補・・・目黒署刑事。
西園寺公子・・・中津健二の恋人。
中津健二・・・中津興信所所長。
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==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==

池上病院。午前10時。伝子の病室。
中津健二が入って来た。連れがいる。
「お久しぶりです。お見舞いがてら、新しい所員を連れて来ました。」と中津が言った。
「西園寺公子です。国枝大学の剣道部です。まだ学生ですが、就職しました。」
「国枝大学の剣道部?ひょっとしたら・・・。」「はい。愛川静音の後輩です。」
「そして、中津所長の夫人。朝イチで区役所行かれましたよね?」と、椎橋警部補が顔を出し、言った。
「やっぱり、尾行されていたか。死体発見時のことには、追加情報はないですよ。実は、大文字さん。先日の目黒区立図書館連続殺人事件の、中目黒の件は、僕らが第一発見者なんですよ。で、椎橋警部補が担当刑事。」
「ん?犯人捕まったって、ニュースで言ってましたけど・・・。」
「中津さん、こちらは?」「大文字伝子さんの夫で、高遠学さんです。」と、中津は、仕方無く紹介した。
「夫婦別姓ってやつですか。」「いえ、高遠は通称です。婿養子なので、戸籍上は大文字学です。」
応えた高遠に頷いた椎橋だったが、「中津さんは、どうしてこの方達に会いに?不躾ですが。」「本当に不躾だなあ。」と、中津は憤慨した。
「大文字さんは翻訳家、高遠さんは小説家。以前、何度か『警視庁のアドバイザー』をして頂いたご縁で、兄共々、ご夫妻とお付き合い頂いております。兄は、副総監直属の刑事です。」
「これは・・・失礼しました。」と椎橋が不承不承謝るのを見て、「中津さんは、妻が流産したので、お見舞いに見えたんですよね。」高遠は取りなした。
「そういうことです。で、まだ、私に対する所用を伺っておりませんが・・・。」と、中津は藪睨みで尋ねた。
「失礼しました。アドバイザーさんなら、捜査状況をお話してもよろしいでしょう。実は、被害者二人の持ち物がないか、目黒川をダイバーでさらいました。2人目の被害者は、中津さんと同じマンションらしいので、彼女の持ち物の確認が出来ないか、と思いまして。親御さんは、今夕上京して、荼毘に付するらしいですが。」
椎橋は、高遠や伝子に見えないように中津達に写真を見せた。
「これ、間違いないわ。ひじりさん、このバッグの端の汚れ、気にしていて、いつも隠すような持ち方していたわ。電車の中で付いた汚れらしいですが、お気に入りだから離せなくてって言っていました。」
「そうですか。助かりました。遺留品特定と凶器特定が出来ました。」
「凶器特定?」「このバッグの中に入っていたんです。助かりました。ありがとうございました。」」高遠の言葉に、思わず情報の一部を漏らしてしまったと感じたのか、椎橋は、そそくさと帰って行った。
「撮れたか?」と中津が公子に尋ねると、スマホの写真を見せた。
「さすが、素早いですね。」と高遠が感心すると、「後でEITOに送りますよ。」と中津は言った。
「それじゃ。」と、出て行こうとする中津に「結婚されたの?中津さん。公子さんと。おめでとうございます。流産したての女が言うと、変かしら?」」と言った。
「いえ、ありがとうございます。EITOのことは、彼女にも話してあります。これからもよろしくお願いします。」
2人が帰ると、「朝から珍客だったね。静音ちゃんの後輩かあ。彼女もEITOに入るかな?」と高遠が言った。
「聞いて無かったの?学。公子さんは興信所就職と永久就職したのよ。3足の草鞋は難しいわ。総子も途中で興信所は辞めたのよ。」「そう言えば、南部さん程じゃ亡いけど、年の差カップルだね。」
「ウチは、年の差カップルじゃなくて、同級生カップルだけどね。」と言いながら、物部と栞が入って来た。
「伝子。落ち着いた?」「うん。また子作りするさ。それより、栞は、しっかり産んでくれよな。」「任せといて。喫茶店は、気晴らしで手伝っているだけだから。」
「辰巳がいるから大丈夫さ。あ、これ、商品券。高遠、見舞いだ。今は、果物カゴや花は敬遠されるからな。TVカードか商品券がベストらしい。」
「ありがとうございます。流石、副部長ですね。」「実は、福本に聞いた、受け売りさ。」
「祥子ちゃん、回復したかなあ。産後の肥立ち、あまり良く無いって言ってたから。」
「回復したら、福本から連絡あるさ。」「物部。私は流産したんだぞ。」
「済まん、大文字。しかし、目立たなかったなあ。気が付かなかった。」
「いろいろあるのよ。」と言いながら、看護師を連れて入って来た池上院長は、物部と伝子の会話を切った。
病室を追い出された高遠は、物部と食堂に行き、早めの昼食を採った。
カレーライスにした。高遠は食べながら、珍客のことを話した。
「そうか。また、仲間が増えたな。いいことだ。しかし、椎橋って刑事、印象良くないな。みちるちゃんの義兄みたいだ、昔の。」
「ああ、高峰さんですね。もう、すっかり人が変わっちゃって。舞子ちゃんの為に、自分を変えたんですね。」
「誰にも歴史はあるのさ。」
ふと、TVの正午のニュースを観ていた2人は驚いた。中津健二のマンションが時限爆弾で火災に遭った、というニュースだ。
EITO本部。司令室。
マルチディスプレイに中津警部が映っている。
「弟の事務所は、あのマンションの一室ですが、実は旧事務所でした。類焼中で不謹慎ですが、事務所はカラです。弟は結婚を機に、事務所兼自宅として、店舗付き住宅を借りて再出発したばかりでした。弟たちも無事です。まだ、登記していなかったから、そこが狙われたのでしょう。」
「不幸中の幸い、とはこの事か。」と、夏目が安堵して言った。
アラームが鳴り、マルチディスプレイに、伝子が映った。実は、伝子の病室の床頭台(しょうとうだい)には、池上病院のPCが乗っていて、EITOとオンラインで繋がっている。
「なぎさはいるか?」「はい。おねえさま。」「椎橋って警部補を探れ。そして・・・。」
伝子の話に、なぎさも理事官も夏目警視正も驚きを隠せなかった。
翌日。午前11時。目黒区立八雲中央図書館前。
図書館から出てきた女性が、めぐろバーシモンホールに向かう途中、一人の男に声をかけられた。
「予約席にいた人ですよね、図書館でお会いしましたよね。」
「そう言えば・・・はい。」「どうやって、予約したんですかあ?あ?」「どうかされましたか?椎橋警部補。」
「観念するんだな、椎橋。確保!」とあつこが言った。
逃げようとする椎橋を結城が一本出青いで投げた。
小坂が椎橋に手錠をかけた。
下條が椎橋に手錠をかけた。
そして、あかりが椎橋に手錠をかけた。
「3つも手錠は要らんだろ?」と椎橋が言ったのを見て、「今の聞いた?警部補。」と愛宕が言った。
「しっかりと。右の耳も左の耳も聴力は正常ですから、警部。彼は捕まることを予期していました。何故なら、やましいことがあるから。」と、橋爪警部補が言った。
「詳しいことは、目黒署で聴こうか。俺の弟の殺人事件の分も含めて。」と、中津警部が言った。
「今日は、ホイッスルは吹かないのか?」と、椎橋は言った。
「ホイッスル?この辺は交通整理、要らないんじゃないかな?ダークレインボーの『枝』さん。」
「分かった。」どこかとスマホで話していた、あつこが言った。
「今、あんたを狙っていたスナイパーも確保した。日本の警察を舐めんなよ、椎橋。」
後から来た久保田管理官が言った。
「通称シーモンス・リー。いつ、椎橋と入れ替わったかも聞かせてもらうよ。」
正午。池上病院。
高遠が、床頭台(しょうとうだい)のPCをサイドテーブルに移して、伝子に向けている。
「おねえさま。愛するおねえさま。何で、椎橋が怪しいって睨んだの?」なぎさが甘えた声で言った。画面の向こうは会議室だが、今は誰もいないようだ。
「愛する妹、なぎさよ。応えてあげよう。中津さんと一緒にここに現れたからだよ。あかりが襲われた時、レイプされなかっただろう?つまり、実行犯が別かも知れないと思った。予約システムで予約すると、予約済みの席は、「予約済み」と表示される。ハッキングなんかしなくても、誰かが予約した事実は確認出来る。予約席は、他の席と隔離されていて、じっと観察していれば、予約した者が分かる。で、ナンパする。どの程度付いてくるかは、女の子次第だ。こう言ってはなんだが、図書館を利用する女の子は、大人しい子が多い、とひかる君が言っていた。署では一匹オオカミだったから、時間は自由に取れた。ところで、あかりが囮に決まった時、逮捕連行するチームに入れられてしまった。相棒とは、『誤認逮捕』に持って行く為の段取りを組んでいた。目黒川で所持品が発見されたのも早すぎる。ドブ川だった頃の目黒川と違い、今は清流で春は花見も出来るようになった。流れが速ければ、もっと下流で発見されてもおかしくないのに、早く所持品が見つかり過ぎた。最後に、中津さんの事務所の時限爆弾だ。まだ捜査本部にいたから、アリバイは出来た。なぎさに、図書館のシステムを一時的に復旧させたら、食いついてきた。那珂国製の『使い捨てケータイ』、いや、『使い捨てスマホ』からのアクセスだと判明した。草薙さんに予約システムにハッキングして貰い、『予約済み』を確認した痕跡を見付けて、あつこ達に逮捕に向かわせた。」
「なぎさちゃん。敵はある程度、我々の情報を得ている。だから、警察組を行かせた。一団が現れるかどうかは駆けだった。だから、なぎさちゃん達には、上空のオスプレイで待機して貰った。こんなところかな?」
「おねえさま、おにいさま。愛しています。なぎさは嬉しいです。未熟な副隊長をフォローして貰って。」と、なぎさは涙ぐんだ。
「さ、美しいきょうだい愛ドラマは、その位にして、大文字さん、食事よ。今日から、おかゆよ。」と、池上院長は、にっこり笑って言った。
「せいては、事をし損じる、ですね。」と言いながら、高遠はPCを床頭台に戻し、電源をオフにし、部屋を出た。
廊下には、物部夫妻、福本夫妻、依田夫妻、山城夫妻、南原夫妻、服部夫妻、愛宕夫妻がいた。
「今から昼食です。我々は時間を潰して来ましょう。」と、高遠は、伝子の取り巻きDDメンバーに声をかけた。
―完―
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