異次元の殺し屋・万華鏡

クライングフリーマン

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10.【永久除草】

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======== この物語はあくまでもフィクションです =========
ここは、『宮の国』。
俺の名は、「異次元の殺し屋・万華鏡」。次元を渡り歩く殺し屋だが、殺すのは、人間とは限らない。

俺には聞こえる。殺してくれ、と。
どこの次元でも聞こえている。

跳んで来たのは、どこかのフィットネスジムだった。
外では、街宣カーが走っている。チラッと、『実の国』の止揚を思い出した。
受付けには誰もいない。
上の階は真っ暗だ。あ、休業日か?
いや、それならエレベーター使えない筈だが。

車座に椅子が並び、その一つに男がポツンと座っている。
「来る時間が不味かったですかね?」
俺は、男に声をかけた。
「いや。フィットネスジムは閉鎖になりました。一階のクリニックは営業しています。」
「閉鎖?何があったんですか?」
俺は、また南極ボケを持ち出し、体調を整えたいのだ、と話した。
男は誰かに聞いて欲しかったのだろう。
淀みなく話し始めた。

今は選挙中だが、クリニックの院長は医師会の偉いさんを支援している。
その男、岩淵は、ここの主任トレーナーだが、オーナー兼社長だ。
誰にも言わなかった筈だが、岩淵が思想的に応援している対立候補のことがばれてしまった。
フィットネスジムは実は実質的に「閉鎖」ではなく「営業中止」だった。
クビになったのは、岩淵だけだった。

俺は、傍らに置いてある、岩淵のタブレットを見て、「ちょっと拝見」と言って、勝手に調べた。
ハッキングされていた。
「ネットは、どこのプロバイダ?」「ああ・・・ここのクリニックにサーバーがあり、医療システムもフィットネスのシステムも、このタブレットも繋がっています。」
詰まり、医療スタッフまたはメンテ会社の人間経由でハッキングされ、岩淵のことを告げ口したのだろう。

俺は、簡単に説諭して岩淵と喫茶店に移動した。
ハッキングされた事実を告げると、岩淵は驚いていた。
「クリニックの受付にIDカードリーダーがありましたね。あ、申し遅れました。実は退職する前はプログラマもやっていたんです。個人でITアナリストを開業しようと思っていて、その前に先ず体力作り、と思って・・・。」
そう言いながら、偽の名刺を差し出した。
「西脇さん、ですか。それだけ資格をお持ちなら、いつでも起業出来るでしょうね。あ。私を雇ってくれませんか。雑用でいいですよ。」
「いいでしょう。で、あのIDカードリーダーのシステムは独立していますか?」
「さあ。でも、時々業者がメンテにきているようですが。」

「今のところ、推測ですが、この国、『宮の国』の医療システム自体、乗っ取られていますね。国の方針として傾倒している国は?」
「些事国です、隣国の。いつの間にか『宮の国』を抜いて経済成長して、政治家は些事国に渡航する度、些事国派になり、院長の押す医師会会長や研究者はドンドン議員になっていきます。僕が押してた候補者は、『不正』と国民負担金を無くそうと運動をしています。」
「それで、クビになったんですね。」

そこまで話した時、喫茶店の扉が開き、数名の男が雪崩込んで来た。
「岩淵幸男さんですね?」と岩淵に確認したので、「私が岩淵ですが?」と俺は偽の運転免許証を見せた。

「そんな・・・。」「そんな筈は無いよね。俺は偽物だもの。でも、どうして本物の人相風体を知っているのかな?偽刑事さん。」

そう言うと、俺はいきなり岩淵の脇を抱えテレポーテーションをした。

そして、公園で野球をして遊んでいる子供達に声をかけた。
「このオジサン、見学していい?俺は、ちょっと買物して戻って来るが退屈だろうから。」
「いいよ。タダで見てて良いよ。」
少年は言った。

俺は、過去にタイムリープした。『宮の国』医師会の会長の就任挨拶の会場に。

「ちょっと待ったあ。『宮の国』医師会の会長が些事国のお役人じゃ、不味いんじゃないのかな?」
半分以上の列席者と当人が俺に拳銃を向け、いきなり撃った。
タマは全て壁にめり込んだ。
すると、医師会会長は、何かの瓶を投げようとした。
俺は、咄嗟に瓶を消した。

俺が壁をすり抜けると、会場自体が消えた。

岩婦のタブレットで、『宮の国』でも流行病があり、医師会会長が持ち込んだ可能性があることが分かった。今の瓶には『流行病』のタネがあったに違い無い。
詰まり、医師会が流行病をばら撒き、予防接種という『体への受け入れ体制』を作り、薬を売りつけ、医療機関への『勧誘』をしていたのだ。マッチポンプだ。

『宮の国』民の『免疫機能』を徹底的に破壊し、何でも言いなりになる国にする『改造計画』の『若い芽』は永久除草した。

さあて、岩淵君の人生も変えてしまったかも知れないが、彼の未来に託そう。

俺の名は、「異次元の殺し屋・万華鏡」。次元を渡り歩く殺し屋だが、殺すのは、人間とは限らない。

―完―
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