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24.【絶対値(absolute value)】
しおりを挟む======== この物語はあくまでもフィクションです =========
ここは、『静の国』。
俺の名は、「異次元の殺し屋・万華鏡」。次元を渡り歩く殺し屋だが、殺すのは、人間とは限らない。
俺には聞こえる。殺してくれ、と。
どこの次元でも聞こえている。
跳んで来たのは、ある海岸沿いの遊歩道。
ベンチで『黄昏れている』中年男性がいた。
「貴方が呼んだのですね?」俺は遠慮無く声をかけた。
いつもなら、南極ぼけを装ったり名刺を出したりするのだが、止めた。
心を読んだからだ。
「貴方は?誰?」
俺は、自分のことを少し話した。次元を越えて旅する者だ、と説明し、ショックにならない程度の話をした。
「貴方のことは、ちょっとしたイメージだけでしか分からない。『奸計』に嵌められたことぐらい。」
彼は素直に話し始めた。止まっていた時間が動いた。
堰を切ったように話し始めた。
「私は、おっしゃる通り、嵌められた。最初は、有りもしない『不倫疑惑』。無かったことが証明されたら、『パワハラ疑惑』。普通に『ガンバレよ』程度のことを言って、檄を飛ばしていただけなのに。第三者委員会は、『第三者』では無かった。所謂『出直し選挙』をして再選したにも関わらず、彼らは網を張りまくった。黒幕に気づいた時は遅かった。私を押しのけて知事になろうとしている、隣国系、玉虫国人の団体だった。パワハラを告発した人物は、スパイだった。そして、住民の署名活動が盛んになり、リコールに至った。知事の仕事をしたのは、延べ1ヶ月にも満たなかった。2回目の『出直し選挙』は立候補しなかった。名目上、その人物の『対抗馬』も立候補したが、裏で繋がっている。」
「殺したほど憎い。でも、殺すなんて出来ない。」
「一つ確認しますが、その人物または中央政府ともパイプがありますか?」
「あります。」その時、地面が揺れた。
「地震ですね。」彼は冷静に、スマホでニュースを探った。
「震源地は・・・ガム着火半島?オトロシヤじゃないか。『静の国』の北東です。ここまで響くんだ。津波警報が出ている。」
俺は、すぐに行動に移した。
国家議事堂近くの、内郭館邸。
「つ、つなみだってえ?・・・逃げろ!!」
内郭首謀大臣はスタッフと共に、すたこら逃げ出した。
記者会見を待っていた記者達は呆れた。
「地震があるから辞めない」と言っていた当人が、『自分の命』を優先したのだ。
報道管制が敷かれ、この『逃亡』は報道されなかった。
畿西県。県知事選挙対策本部。
桐山候補は、部下から送られた館邸映像を見ながら、内郭首謀大臣を脅していた。
「なあに。応援演説に来て下さればいい、それだけのことです。SNSの情報は、早いですよー。びゅーん!!」
夕方のTVニュース。
突然、内郭館邸の映像と、桐山候補の脅迫映像が流れた。
SNSでも、同時に流れた。
SNSに国境はない。
翌日。
畿西県知事選の両候補者は、立候補を辞退した。
国家議事会。野党一致で、『内郭不信任案』が提出された。
津波は収まった。玉虫国からの『ちょっかい』は途絶えた。
『静かな国』になった。
皆藤知事。後は任せたよ。
俺の名は、「異次元の殺し屋・万華鏡」。次元を渡り歩く殺し屋だが、殺すのは、人間とは限らない。
さ、今度はどんな世界かな?
―完―
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