20 / 28
20.パンケーキ
しおりを挟む
==== この物語はあくまでもフィクションです =========
私の名前は野本由起夫。姪の名前は如月来夢(らむ)。
私は、脊柱管狭窄症が進み、車椅子生活になった。私と大姪との同居生活が始まったのだ。
母が亡くなった後、私は徹底して『終活片づけ』をしていたので、大姪(妹の孫)は2階に居住した。
私が母と同居していた時の名残の『ナースコール』を復活して、私は必要時に大姪を呼ぶことになった。
日曜日の午後。
大姪は、女の子を一人連れて来た。
「学校のお友達の加奈子ちゃん。」
「大北加奈子でーす。素敵な伯父様・・・ああ、大叔父様だっけ?大叔父さんって言い方初めて聞いて、びっくりしました。」
「まあ、そうだね。『核家族化』って言い方流行ってから随分になる。家族も小さな単位になり、親族の集まりも葬式くらいなものだからね。で、どこそこのオジサン、どこそこのオバサンって言い方する。」
加奈子ちゃんは笑った。恐らく親族の付き合いは希薄だろう。
2人は、わいわい言いながら、パンケーキを焼き、おやつに一緒に食べた。
「オッチャン達の子供の頃は、ホットケーキって言ったんだ。確かに、普通のケーキと違ってほくほくだ。でも、もう1つ日本流に言った訳があるんだ。」
「何?」と2人は顔を見合わせた。
「パンケーキなら、パンかケーキか分からない。そう言う人がいたんだ、沢山。パンはパン、ケーキはケーキ。どっちでもない、って言って。」
「ふうん。」
「パンケーキのパンは、フライパンのパン。食パンや菓子パンのパンじゃない。でも、人ってイメージを強くして覚えると修正しにくいんだ。詐欺師が上手く欺すのも、その辺にある。だから、真面目で融通の効かない人ほど脆い。」
「今の政治家さんね。」と、大姪が言った。
「そういうこと。パンは英語じゃなく、ポルトガル語。英語ではブレッド。鎖国していた時の南蛮貿易って社会科・・・って今は言わないんだっけ?学校で習った?」
「習った。宣教師とか鉄砲伝来とか。それで入って来た『外来語』ってことね。」
「うん、パンの他にボタンとかボーロとかもポルトガル語。オッチャンの専攻はポルトガル語。殆どしゃべれないけどね。」
2人は夕方まで、おしゃべりをしていたようだ。
加奈子ちゃんは、帰りに台所に寄って、挨拶をした。
「お邪魔しました。勉強になりました。ありがとうございました。」
夕食時。
大姪に尋ねた。「介護士学校の友達じゃないんだね。」
「小学校の友達。」
「何か、悩んでいた?」
「分かるの?」分かる。」
「加奈子ちゃんに挨拶された時、反応した?」「した。」「スケベ。でも、大好き。」
大姪は私に抱きついた。
「反応した?」「した。」「やっぱり、変態。」
ニッと笑って、大姪は食事の支度を始めた。
いつまでも仲良くな。オッチャンみたいに友達に先立たれると、凄く寂しくなるぞ。
思い出は、いっぱい作っておけ。
―完―
私の名前は野本由起夫。姪の名前は如月来夢(らむ)。
私は、脊柱管狭窄症が進み、車椅子生活になった。私と大姪との同居生活が始まったのだ。
母が亡くなった後、私は徹底して『終活片づけ』をしていたので、大姪(妹の孫)は2階に居住した。
私が母と同居していた時の名残の『ナースコール』を復活して、私は必要時に大姪を呼ぶことになった。
日曜日の午後。
大姪は、女の子を一人連れて来た。
「学校のお友達の加奈子ちゃん。」
「大北加奈子でーす。素敵な伯父様・・・ああ、大叔父様だっけ?大叔父さんって言い方初めて聞いて、びっくりしました。」
「まあ、そうだね。『核家族化』って言い方流行ってから随分になる。家族も小さな単位になり、親族の集まりも葬式くらいなものだからね。で、どこそこのオジサン、どこそこのオバサンって言い方する。」
加奈子ちゃんは笑った。恐らく親族の付き合いは希薄だろう。
2人は、わいわい言いながら、パンケーキを焼き、おやつに一緒に食べた。
「オッチャン達の子供の頃は、ホットケーキって言ったんだ。確かに、普通のケーキと違ってほくほくだ。でも、もう1つ日本流に言った訳があるんだ。」
「何?」と2人は顔を見合わせた。
「パンケーキなら、パンかケーキか分からない。そう言う人がいたんだ、沢山。パンはパン、ケーキはケーキ。どっちでもない、って言って。」
「ふうん。」
「パンケーキのパンは、フライパンのパン。食パンや菓子パンのパンじゃない。でも、人ってイメージを強くして覚えると修正しにくいんだ。詐欺師が上手く欺すのも、その辺にある。だから、真面目で融通の効かない人ほど脆い。」
「今の政治家さんね。」と、大姪が言った。
「そういうこと。パンは英語じゃなく、ポルトガル語。英語ではブレッド。鎖国していた時の南蛮貿易って社会科・・・って今は言わないんだっけ?学校で習った?」
「習った。宣教師とか鉄砲伝来とか。それで入って来た『外来語』ってことね。」
「うん、パンの他にボタンとかボーロとかもポルトガル語。オッチャンの専攻はポルトガル語。殆どしゃべれないけどね。」
2人は夕方まで、おしゃべりをしていたようだ。
加奈子ちゃんは、帰りに台所に寄って、挨拶をした。
「お邪魔しました。勉強になりました。ありがとうございました。」
夕食時。
大姪に尋ねた。「介護士学校の友達じゃないんだね。」
「小学校の友達。」
「何か、悩んでいた?」
「分かるの?」分かる。」
「加奈子ちゃんに挨拶された時、反応した?」「した。」「スケベ。でも、大好き。」
大姪は私に抱きついた。
「反応した?」「した。」「やっぱり、変態。」
ニッと笑って、大姪は食事の支度を始めた。
いつまでも仲良くな。オッチャンみたいに友達に先立たれると、凄く寂しくなるぞ。
思い出は、いっぱい作っておけ。
―完―
0
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
(完結保証)大好きなお兄様の親友は、大嫌いな幼馴染なので罠に嵌めようとしたら逆にハマった話
のま
恋愛
大好きなお兄様が好きになった令嬢の意中の相手は、お兄様の親友である幼馴染だった。
お兄様の恋を成就させる為と、お兄様の前からにっくき親友を排除する為にある罠に嵌めようと頑張るのだが、、、
『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』
鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、
仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。
厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議――
最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。
だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、
結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。
そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、
次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。
同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。
数々の試練が二人を襲うが――
蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、
結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。
そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、
秘書と社長の関係を静かに越えていく。
「これからの人生も、そばで支えてほしい。」
それは、彼が初めて見せた弱さであり、
結衣だけに向けた真剣な想いだった。
秘書として。
一人の女性として。
結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。
仕事も恋も全力で駆け抜ける、
“冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
課長と私のほのぼの婚
藤谷 郁
恋愛
冬美が結婚したのは十も離れた年上男性。
舘林陽一35歳。
仕事はできるが、ちょっと変わった人と噂される彼は他部署の課長さん。
ひょんなことから交際が始まり、5か月後の秋、気がつけば夫婦になっていた。
※他サイトにも投稿。
※一部写真は写真ACさまよりお借りしています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる