大姪と私

クライングフリーマン

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3.介護士制度

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 ==== この物語はあくまでもフィクションです =========
 私の名前は野本由起夫。姪の名前は如月来夢(らむ)。
 私は、脊柱管狭窄症が進み、車椅子生活になった。私と大姪との同居生活が始まったのだ。
 母が亡くなった後、私は徹底して『終活片づけ』をしていたので、大姪(妹の孫)は2階に居住した。
 私が母と同居していた時の名残の『ナースコール』を復活して、私は必要時に大姪を呼ぶことになった。
「なあ、来夢。後悔してないか?」
「勘違いするなよな、オッサン。」「もういい。介護士学校、楽しいか?」
「うん。」
「ヘルパー2級」という、訳の分からない名前の介護士資格は、看護師の人手不足を補う為始まった。
 人手不足と言っても、看護師は本来、病院やクリニックで働いていて、フリーの看護師や訪問看護師派遣会社は後に生まれた。
 介護士と、一口に言っても、門戸が広いのは「初心者研修(ヘルパー2級)」だけで、ちゃんとした知識や経験を基にした「試験」の合格者の「介護福祉士」とは雲泥の差がある。前者は「講習修了者」であり、実際的な経験研修は現場任せである。
 私の母を介護していた時は、昨日まで「何も知らなかった」若者に「人手」を任せていたため、介護施設でのトラブル、特に虐待などの問題は絶えなかった。
 そこで、新総理発案の介護士学校精度がスタートした。
 看護師は、看護師学校で医療の知識を学び、「インターン」的な修行をするのが常で、ある時期まで存在した「准看護師」精度での准看護師で人手不足を補っていた。
 確か。看護師は高卒以上で、准看護師は中卒以上だったと思う。
「成手」が少なくなったこと(中卒者が減って高校に行くようになった)ことと、知識経験の差による「差別」や、やたら「差別」を叫ぶ団体によって、歴史の闇に消えた。
 さて、先に挙げた数ヶ月の講習だけの修了者には、准看護師の知識経験すらなかった。
 介護制度は待った無しの状態からのスタートだった。
「社会福祉」は名目で、「利権」が確立してからのスタートだった。
 介護に関われば、「ボロもうけ」出来る、そんな風聞に乗って、実態がない幽霊会社も多く存在した。
 各自治体(都道府県)の庁内では、幽霊会社摘発勧告する部署が設けられたが。あまりにも(会社の)数が多くなり、市町村に管理を任せることになった。
 だが、市町村に「権限」を与えなかった為、事業者は見えないところで好き放題するようになった。そんなところに流行病が来た。
 政府や都道府県は反省しなかったが、市町村は、悔いる結果を生むことになった。
「虐待」が減らないのである。安易な「疑似資格」に加えて、外国人労働者が増え、介護士は「売り手市場」になった。
 新総理は、少子化の影響でガラガラになった大学を開放させ、「介護士学校」を都道府県に開設させた。
 新たな制度の下、発足させた介護士学校は、看護師、介護福祉士、医師。ケアマネージャー等を講師で招いた。
 段階別の資格が与えられ、卒業生は、所属組織が名刺にレベルを明記するようにした。
 来夢は、「初心者研修」をすぐ終了したが、在学中に「介護福祉士」や「ケアマネージャー」の資格を取れるので、「介護士学校」に通うことになった。
「初心者研修」修了者には、「即実践」がスローガンだったが、看護師との差別化があった。早い話、患者(被介護者)の爪切りも許されない、いや、事故(怪我をさせる)を回避させる為に「拡大解釈」で介護施設側や介護士が忌避したのである。
 従って、爪が延びて怪我をする確率が高まっているのに、訪問医師や訪問看護師に頼るか、家族が、そっと詰め切るしかなかった。
 先に挙げた、准看護師に爪が切れない者はいない。衛生管理の「初めの一歩」なのだから。
「講師の先生がねえ・・・。」私の世話を焼きながら、来夢の会話の話題は、そういう切り出しが多かった。
 軌道に乗れば、本来の介護を行う施設が増えるかも知れない。
 私は、母の介護生活での「黒歴史」を振り返りながら思った。
「聞いてるの?」「ああ、お前は別嬪だ。」
「当たり前のことを言われても嬉しくないよ。」
 そう言って、大きな口を開けて食事をする大姪だった。
 ―完―

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