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始まりの日

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この世界では悪魔病という病気が蔓延している。
その病気は悪魔にとりつかれ、徐々に手足から黒くなっていき、
やがて全身が黒くなる。そして、人格が崩壊し、狂暴になり、悪魔に乗っ取られる病気だ。
だから、手足などが黒くなっている人は、見つけ次第に処刑される。

見せしめのように、牢屋の中に一人の少年がいる。
まだその顔は幼さを残している。
どこにでもいる普通の少年だが、たった一つ違うところがある。
それは、手が真っ黒に変色していることだ。
可哀想に、異常なほど何回も何回も鎖をまかれている。
首輪もされており、人間の扱いをされていないことが分かる。

蒸し暑くてジメジメする。
全身を鎖につながれていて何もできない。
「水をください、誰でもいいので水をください」
大声で叫び声をあげ続けたせいか声がかすれている。
行きかう人は誰も無視して、素通りしている。

水すら飲ませてもらえないのだ。
少年の唇は乾燥でひび割れ、脱水症状をおこしている。

小さな女の子が「お兄ちゃん喉が渇いたの、飲める?」と少年の口元に水の入った容器を近づけた。
わき目も降らず、必死に水を飲んでいる少年を見て、少女は安心した。
突然、、
「何をしているの」と少女の母親が容器を持っている手をはたいた。
残っていた水が地面に吸い込まれていく。
少年は「あ・・・ああ」と声にならない声をあげた。
お母さんは、少年を悲しげに見ながら、
「ごめんなさいね。
 この子があなたに水をあげたことを知られたら、どんな目にあわされるかわからないから・・・」
嫌がる少女の手を無理矢理引いてその場を立ち去ろうとした。

「ちょっと待ってください。水のお礼を、、、言わせてください。
ありがとう。美味しかったよ」としわがれた声で言った。

それを聞いた母親は気まずそうにしていたが、物音を聞いて、
こんなところを誰かに見られたら大変だと、その場を足早に立ち去って行った。


時間がたち夜になった。
どんよりとした雲が流れてきた。
急に大粒の雨が降り出した。
強風が吹き、落ち葉が吹き飛ばされる。

ボロボロの服を着た二人ずれが少年の前来た。
その二人は少年・悠輝の両親だった。

涙を流し悲痛な顔をして
「悠輝・・明日が・・・あなたの処刑日なの・・・  」

(俺は何も悪いことをしていないのに、どうして死ななければならないんだ。
 両親の涙を見るのがつらい、どうしてこんな病気になってしまったんだ)

「変わってやりたい・・・」母親が血がにじむほど唇をかみ、いった。
父親が「こんなもの」といって悠輝を拘束している鎖を引きちぎろうとした。
何度も何度も…何度も、何度も…鎖で切れて手から血が出る。

「もういいよ、もういいから。お父さん、もういいんだ…」


「そんなあきらめたような悲しいことを言わないでくれ。
まだ希望がある。お前を助けてくれと、ギルドに依頼した。
この国では誰も受けてくれなかったけど …
隣の国のzランクの冒険者が唯一受けてくれたらしい。
最後まで希望を捨てるな」

「わかった。父さん、ありがとう。誰かに見つかると大変だからもう行って」
後ろ髪を引かれるような思いで両親は何度も悠輝の方を振り返った。

一人残された悠輝は ありがとう・・・
名も知らない水をくれた少女、お父さん、お母さん。
もし助けが間に合わなくても、僕は誰も恨まない。

少年の決意は闇へと消えていった。
星は血をはくような家族の思いを知らないかのように静かに光っている。



処刑当日、雲一つない快晴だった
町の広場では処刑を見学しに人がごった返していた。

「なにか言い残したいことはあるか」処刑人が言う。
「悪魔なんか絶対ならない」声の限り悠輝は叫んだ。
「何を言っているのだ」と民衆が石を悠輝に投げつける。
投げられた石のいくつかが悠輝の体に当たる。
黒く、悪魔化したところは傷一つついていないが、生身の所は血が出た。

処刑人は、血が出ている少年を見て、考えた。
こんなことは一度もなかった。
もしかして、この少年を処刑するのは間違っているのかもしれすることはない…
でも、俺にはこの処刑を中止することはできない。

教皇が、席から立ち、「静粛に、今から悪魔を処刑する」と宣言した。
人々は湧きあがった。

その時だった。
「大変です!!悪魔1体が現れ、こちらの方へ向かってきています。
教皇様、早く、お逃げ下さい」血まみれの聖職者が転がり込む。

「何、、悪魔が、、、、。」慌ててその場を立ち去ろうとする。

それを見ていた人たちから、ブ-イングがおこる。
「何をしているんだ!早く処刑しろ!!」

しかし、広場の端の方から、「大変だ!大変だ!悪魔がこちらに来るぞ」
「早く逃げるんだ!」と声があがる。人々は我先にと逃げ惑う。
「この少年の処刑は、どうする・・」
「それどころではない!早く逃げろ!悪魔同士、殺し合いをすればいいんだ!」
処刑人が、「もしかして、お前は悪魔化しないかもしれない。
だが、俺にはお前を逃がすことはできない。悪く思うなよ」
と鎖につながれた少年を残して逃げて行った。

悪魔が目の前に現れた
逃げまとう人の腹から手が生えた。
逃げまとう人々はなすすべもなく殺害されていく。
一呼吸のうちにあっさりと人が亡くなっていく、死とはこんなにも身近にあるのかと思った。

「誰でもいいから助けてください」と藁にも縋る気持ちで言った。
とうとう目の前に悪魔が来て口をガバッと開き、鋭くとがっている歯をのぞかせた。
開いた口から涎がたれて服と肌が溶ける。
「ハッハハハ、小僧ピンチだなあ、助かりたければ俺と契約しろ」
辺りを見回しても誰もいない、幻聴かと思ったが、
次の瞬間、暗闇にひきづりこまれて意識を失った。

悪魔は魂を吸収するほど力が強くなり、身分が上がる。
悪魔は極上の魂を見て、一億人分の魂の価値がある、俺もデモンロードになれるぞ。
だが、かすかに違和感がある、まるで何か別の存在を感じる。
深く考えることもせず殺そうとした。
その時の違和感をもっと深く考えていれば消滅することもなかったのに。

殺そうとした瞬間、圧倒的な力を持った何かに変った.
思わず後ずさりする。
痛みを感じたと思うと手がなくなっている。さっきまであったのにどうして
「探し物はこれか」とちぎれた腕を投げた。

「馬鹿者め、俺の器を狙った罪は重いぞ」

「まさかあなた様は死んだはずではないのですが・・・」と体が勝手に震える
立ち去ろうとするがまだ完全体ではないことに気づく。

卑屈な声で「あなた様はまだ完全体ではないでしょう。なら私にもチャンスがある」

「愚かものめがお前と私では力の差がありすぎる、そんなこともわからないとわ。
切られた手首を魔人が再生させた。

魔力砲をぶつける。「ついに俺様もデーモンロ-ドを飛び越えて魔王か」
「くっくくく、何かしたのか」と魔王が姿を現した。
それを見た途端「申し訳ございません」と助命しようとしたが、
「醜い」と空を掴んで引っ張る動作をした。
悪魔は核を取られて砂のように崩れ去った


「おやおや、悪魔を退治しにきたけど…」
と虹色の髪をした人間がいつの間にか魔王の後ろにいた。
「鑑定、お前は勇者で名は春風創真か」


二人のオーラがぶつかり合いゴンと音がした。
同時に魔力砲を放つ。
悪魔か天使持ちの奴しか使えない技で、魔力を圧縮して放出した光線だ。
強い者だと特殊能力がつく。

初めは互角だったが徐々に魔王の魔力砲が押し出し、勇者の魔力砲の青色に染まった
特殊能力強欲が付いていて触れたものの力を奪うからだ。
勇者はふりを悟り横に逃れるが、
<原型略奪>原型が奪われ魔王の魔力砲が爆発した。それに勇者も巻き込まれる。

勇者の魔力砲、当たったものの時を止めるを吸収していたので、
春風創真の時が止まる。

時の早送りで止まった時間を早送りするが間に合わなかった。
魔王が手で触わった。
しかし、魂が抜けない…
<時限魔法バリヤ>自分の時を止める事で、あらゆる攻撃を無効化する技を使ったからだ。

勇者のカウンターのパンチが迫る。
よけようとしたが急に体が動かなくなった。

<時限掌>時空が全方位からきて押しつぶす技だ。
<フリ-ズパンチ>触れたものの時を止めるパンチが当たる。
間髪入れずに次のパンチが炸裂する。
サンドバック状態だ。

「これでお前は108秒間動けない」
<時限魔法封印>魔王の体を触った。
「封印されろ!!」
「くそ--------、覚えてろよ」

悠輝が目を覚ました、[ここは…天国か」
あまりにも待遇の違いに、思考能力が追い付かない。

周りを見渡すと高級な調度品がある。
すごくここにいることが場違いなような気がする
ベッドから立ち上がろうとするが、体力が持たずたおれてしまう。

扉がノックされた。「入ってもいいかな」と入ってきた。
「ようやく目を覚ましたんだね、君がなかなか目を覚まさないから心配したよ
私の名前は春風創真一応勇者だ
目を覚ましたばっかりで申し訳ないがどうしても、話しておかないといけないことがあるんだ。
「はいわかりました、お・・おれえ、いや、僕もこの状況を教えてもらいたかったんです。
貴方が説明してくださるならありがたいです。」

「君にとっては聞きたくないことがあるかもしれないが全てを話すことにしよう。
実は、信じられないことかもしれないが、君の中には魔王がいる
魔王と融合してしまっていて君も封印されてしまうので完全に封印することができなかった
100パ-セントではないがほぼ封印できる方法があるそれは、天使の力を得ることだ」

まだ突拍子もない話に聞こえるがこの人が噓をついているようには思えない。
「どうしたら天使の力をえれるのでしょうか」

「体力がない君には難しいが1ヶ月後に武術大会がある。その優勝賞品が天使の力だ
まず食事をして体を戻そう、私が師範している道場で修行させてあげよう
優勝できるかどうかは、そこでの君の努力次第だ」

俺は迷わず「ぜひお願いします」
創真は嬉しそうに「じゃあ、君が早く体力を戻すのをまっているよ」

初めは物を吐いてしまっていたが、徐々に胃が大きくなって物が食べれるようになった。
「そろそろ修行してもいいころだな」
地獄のような特訓が始まった。

「何これ体が重い」立っているのもやっとだ。
酸素も薄くて肺が潰れそうだ。
この状態で筋トレをするのか。
ふらふらしながらメニューをこなす。
もう1年過ごしているような気がする。
「先生あと何日ですか」
「あと39年だよ、僕の能力で時の流れを遅くしているんだ」
思わず、ふざけるなよと叫びたくなった。
前向きに前向きに僕の人生がかかっているんだと励ます。
小指だけでも腕立て伏せができるようになった。

次のメニューは魔力の訓練。
全身にはりめぐらせている魔力菅を感じるため座禅をした。
魔力操作に失敗して何度も爆発して髪の毛がアフロのようになった。
失敗するたびにコツをつかんでいき、
魔力砲、魔弾、オーラ、フィルド、武器召喚と使えるようになった。
フィルドとはオ-ラを広げることだ。
フィルド内では特殊な能力がつく。

次のメニューは実戦訓練。
先生が封印した、悪魔と戦った。
倒しても倒しても終わらない日々が続いた。
合計4億体倒した。
倒した悪魔の力を使えることとスキルを具現化できることがわかった。
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