乙女ゲーの世界に落ちましたが、目の前には推しのご先祖様!?異世界チートで魔王を倒すはずが、いつの間にか恋に落ちていました。

高崎 恵

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昔は違ったようです。

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 2人は農村地帯の村の出身で家も近かったそうだ。ユーリの家は6人兄弟、ララさんの家は5人兄弟で、2人ともその兄弟の長男長女。

「あの村はみんなで協力して生活しているんです。だから私の兄弟のこともユーリが面倒見てくれたりして、私にとってもユーリは頼れるお兄ちゃんって存在だったんです」

 そんな生活をしている中、村に鑑定士がやってくる。都市部では自ら鑑定場へ行くのだが、地方は年に一回鑑定士が回ってくるらしい。

「それがユーリの時は大変だったんですよ! 勇者なんて見たことないスキルが出たものだから、鑑定する石碑が壊れてるとか、嘘ついてるとか大騒ぎで、ちゃんと鑑定する為に国からリア様が派遣されて……。リア様はリア様で興奮して誰も話が通じずで……」

 なるほど、そこでリア様とユーリは初めて出会ったらしい。興奮したリア様……周りの苦労が目に浮かぶ。ユーリを鑑定したリア様は落ち着きを取り戻すとすぐさま王室に鑑定結果が間違いないことを告げ、王室は魔王復活の予兆の可能性を考え、ユーリを王宮に呼ぶ。

「でも大々的に魔王がいるだとか、復活するかも知れないとか言えないじゃないですか。だからユーリはスキルについて研究させてもらうって名目で王室に呼ばれたんです」

 しかし所詮は名目上のこと。彼の能力を調べ終えたら、ある程度の軍資金を渡されて人知れず1人旅に出たと言う訳だ。事情を知る貴族は彼を陰ながら応援し、何も知らない貴族からは何も役に立たないただの若造として嫌がらせを受けながら……。
 そんな訳でユーリの時に色々あったお陰か、彼女に聖女のスキルが発覚した時はそこまでドタバタせずに色々な調整が整えられたそう。
 彼女はすぐにこちらの神殿へと引き取られた為、ユーリのように貴族からの嫌がらせにも合わず平穏に暮らせているとのことだ。

「本当ユーリばっかり大変な目にあって……。でも悪いことばかりじゃないんです! 私達が国へ奉仕する代わりに、私達の家に国から補助金が毎月入ってるんです!」

 そのおかげで、家族の生活はだいぶ楽になったそう。さらに勇者と聖女のスキルが出た村として、国からも村までの道の整備や、井戸などのインフラの整備も進み、良いこと尽くめなのだそう。

「……でもそれってあなた達の犠牲の上で成り立ってる幸せでしょう? あなた達の幸せは?」

 余計なお世話だと思うのについそんなことを聞いてしまう。
 そんなの覚悟して、乗り越えた上でそうやって生活してるはずなのに。

「私の幸せですか……? 私はみんなが幸せで居てくれたらそれで良いんです。元々長女で家の為、働きに出る予定だったし、あまり変わらないですよ」

 聖女として100点満点の回答だ。彼女らしいとも思うが、本当にそう思っているのかと疑ってしまう私は彼女みたいな純粋さを失っているのだろう。
 そんな私の思いを感じ取ったのか、彼女が少し悪戯な笑顔を浮かべ質問を口にする。

「じゃあユリさんの幸せって何ですか? 私からしたら、元々この世界に居たわけでもないのにユーリと旅に出て、魔王を倒す危険な道を進もうとしているユリさんの方がよっぽど疑問ですよ?」

「私の幸せ……?」

 そう問われてすぐには答えられなかった。私の今の目標は、魔王を倒すことでこの後の時代に生まれるであろう推しのユウを救うためだったはずだ。それと同時に今ではユーリやミラー様、リア様達、誰も失うことなく魔王を倒したいと思っている。

 でもそれが私の幸せなの……?やりたいことではあるけど、幸せとは違う気がする。
 一度死んでしまった私は自分の幸せなどもう無いものだとどこかで思っていた。この世界で生き返ることが出来たが、私のいた世界には戻ることは出来ない。もう1回死んでいるんだ。今更どんな希望を持てば良いのだろう。
 この世界での幸せとは。この冒険が終わってしまえば私の居場所はない。異物である私がこの世界で幸せなど得ることが出来るのか……。
 そのことをどこか頭の隅に追いやり、きっと考えないようにしてきたのだ。

「う――ん、前の世界ではいつか結婚して家庭を持ちたいなとか思ってたけどね。あっピザやパスタとかお菓子を手作りするのが好きだったからカフェを開くのも良いかも知らないわね」

 そう言って誤魔化したのだが、人の心の動きに敏感な彼女には私の動揺が伝わってしまったのかも知れない。「それは良いですね」と少し困ったような顔で笑っていたから。

「あっそう言えばユリさん知ってますか? あの神殿にある魔石、昔は緑色だったらしいですよ?」

 「えっ!? 緑色……っ!?」

 そうだ! きっと聖女様の力で浄化をして緑色の魔石になるんだ。洞窟の魔石を浄化しなきゃいけないと思ってたけど、浄化しなきゃいけないのは洞窟だけじゃなかった!
 神殿と、きっと王宮にある魔石も浄化しなきゃいけない。そうしないと魔王を倒してもきっとまた復活してしまう!

「ララさん、緑色だったって言うのは誰から聞いたの?」

「放牧場にいるお爺さんです。昔はこの神殿で神官として働いていたみたいで教えてくれて」

「そのお爺さんの所へ連れて行ってくれる?」

「はい! こっちです」

 いつから魔石が赤くなってしまったのか。それが分かれば魔王に通じる者の手掛かりが得られるかも知れない!

 ララさんが案内してくれたのは、神殿の敷地の隣にある放牧場だった。そこで働いているおじいさんが昔神官として勤めていたそうだ。

「おじいさんお久しぶりですっ! 今お話ししても良いですか?」

「おお、ララじゃないか。今日もまた牛小屋へ寝に来たのか?」

「違いますよっ! この前は知らないうちに寝ちゃってただけで……ってその話は良いんです! おじいさん、こちら落界人のユリさんです」

 牛小屋で寝るというツッコミどころ満載な話があったが、ララさんがおじいさんに私を紹介してくれる。
 落界人だと聞いた瞬間おじいさんは私に「それは大変だったね」と声を掛けてくれて少し泣きそうになってしまう。
 珍しがられたり、そのスキルを羨ましがられることはあっても、こうやって労ってくれる人は居なかった……。

「一度亡くなって、急に知らない世界へ飛ばされて苦労しないはずがなかろう。あなたはあちらでもこちらでもよう頑張っとるのぉ。良いものは出せないが、ちとお茶でも飲むかな?」

 そう言っておじいさんの家に案内してくれるが、おじいさんとララさんの後ろを歩きながら泣きそうになってしまう。
 
 こちらの世界での私は生きているのだ。みんな私が一度死んでしまったという事実をなかなか理解しにくい、忘れてしまうんだと思う。中にはもう一度、生をもらえてラッキーだろうという人も居るだろうが、その本人にとってはそんな簡単に割り切れる話じゃない。
 その思いを今まで隠してきたのに、ララさんといい、このおじいさんといいなんで彼らにはその想いが伝わってしまうのだろう。

「ほれ、採れたての牛乳と卵で作ったクッキーじゃ。上手いぞ」

「ありがとうございます。……美味しい!」

 「ほっほっほっ。おいしいじゃろう。何せお菓子スキルを持ったわしが焼いたのじゃからな」

「お爺さんは昔、神殿で神官として働いていたのではないのですか?」

 てっきり『祈りのスキル』を持っているのかと思っていた。私が会った神官はほとんど祈りのスキル持ちだった。

「昔はわしみたいなでも神官として扱ってくれたのじゃよ」

「はみ出し者……ですか?」
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