運命のつがいと初恋

鈴本ちか

文字の大きさ
27 / 76
運命のつがいと初恋 第2章

しおりを挟む
「そう。ほらいろいろあるだろ」
「ホントだ。どれも可愛いね。あ、これこの間りんちゃんに買ってきたやつだ」

 東園の指す先に、バースデーケーキと別に買ってきたウサギの形にデコレーションしてあるプリンがあった。
 耳はクッキー、耳飾りに砂糖菓子のマーガレット、チョコチップの目、生クリームとフルーツで飾ってある見た目に可愛いプリンは凛子用で、夕飯後に出したら目を輝かせていた。
 あっという間に食べてしまって、凛子はもう一個欲しいと東園にお願いしていた。
 バースデーケーキは凛子には早いかもと今回は凛子が寝たあと、大人だけで食べたのだが濃厚なチョコクリームと甘酸っぱいフルーツが絶妙で陽向はこのケーキの大ファンになったのだ。陽向の食べたホールケーキは売れてしまったのかなく、生クリーム土台にマカロンとフルーツの乗ったケーキとベイクドチーズケーキがある。

「この間のケーキはないね。この時間だもんね。これ、このクマさんのプリンも可愛いな」
「ホールはないけどほら、ショートケーキはあるぞ。凛子はウサギが好きだから、ウサギが無難かな」
「確かに。この前のが良かったって言うかもしれないね」

 店内はそう広くないが夕方だからか客は陽向達のほかにひと組だけ、ゆっくり見ることが出来て嬉しい。
 しかし完売したケーキも多いようで隙間が目立つ。
 ウサギのプリンとガトーショコラ、チョコのショートケーキ、三浦へのお土産としてマカロンを買って帰ることにした。
「良くこんなところ知っていたね。お店の看板出てなかった」
「ここは高校の同級生が経営しているんだ。今日はいなかったけど」
「高校って、近く?」

 東園が教えてくれたのは地方出身の陽向でも名前を知っている有名私立の高校だった。 
 確か学力が相当に高くないと入れない学校だったような。中学当時も東園はクラスで一、二を争う成績だったような気がするので当然と言えば当然かもしれない。
 小道を引き返しながら店内にあったチラシを眺めていた陽向に東園は転ぶぞと声を掛けた。

「クリスマスケーキはさらにゴージャスだね。いろんな種類がある」
「なにか良さそうなのはあったか?」
「ん? もうすでに×が付いているのもあるね。人気店なんだ、すごいな」
「帰ってゆっくり見よう」

 後ろから言われ陽向は渋々頷きチラシから目を離した。


 夕食後お土産のプリンを見せると、凛子は「わあ、うさちゃん、かわいい」と声を上げ早くスプーンをくれと陽向をせっついた。

「りんちゃんこぼさないようにちゃんと持とうね」
「うん」

 可愛いと甘味の誘惑では後者が強かったようで、凛子は貰ったスプーンで早速食べ始めた。

「りんちゃんホントこのプリン好きだよね」
「美味しいか?」
「うん」

 隣で見ている東園にコーヒーとガトーショコラを、自分の席には紅茶とチョコのショートケーキを置いて急いで座った。

「あのお店のクリスマスツリーも良かったよね」

 いただきますと手を合わせて一口。陽向がほうとため息をつくと正面の東園が吹き出した。

「そんなにか」
「このこってりの一歩手前なクリームが好きなんだよね。スポンジもちょっと違うの。なにか、なんだろう、なにか入ってるよね。馨の友達すごい。これかおちゃんのお友達が作ってるんだって、すごいよね」
「すごいねー」

 凛子は口の周りにクリームとカラメルを付けたままにっこり笑う。
 そんなところも可愛くて、きゅんとくる。あとで拭いてあげようと思っていると、「俺も料理覚えるかな」と東園のすねた呟きが飛んで来た。

「老後にでも始めたら? 馨いつも忙しいじゃん」
「先すぎるだろ」

 なにかと競いたがる性分なのかなと思う。
 何にも動じなさそうな、いかにもαな見かけと子供っぽい言い草とのあいだにギャップがある。
 こういう所もモテる一因に入りそうだなと思う。東園を知る前は羨ましかったが、最近はそう思うことも無くなった。モテて当然だなとつくづく感じるのだ。だっていつ見てもハッとするほど顔がいいし、何を着ていても様になる。そのうえ優しさもあるから。

 食器を片付けながらテレビのホームセンター特集をチラ見していた陽向はねえ、と凛子を抱いた東園に声をかけた。
 
「おもちゃ屋さんよりホームセンターの方がツリーあるかな?」
「そうだな。でも凛子はこっちに来ておもちゃ屋に行ったことがないから連れて行ってあげたいかな。あれもあるし」

 あれってなんだろうと首をかしげた陽向に、東園が口パクでクリスマスプレゼントと教えてくれた。
 そうだ、前々から凛子の欲しいおもちゃをリサーチしていたのだが、いまいち反応が薄く東園とどうしようか頭を悩ませていたのだ。
 確かに、ものを見たら欲しいものがはっきりするかもしれない。
 頷きながら週末は忙しくなりそうだなと思う。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

【BL】『Ωである俺』に居場所をくれたのは、貴男が初めてのひとでした

圭琴子
BL
 この世界は、αとβとΩで出来てる。  生まれながらにエリートのαや、人口の大多数を占める『普通』のβにはさして意識するほどの事でもないだろうけど、俺たちΩにとっては、この世界はけして優しくはなかった。  今日も寝坊した。二学期の初め、転校初日だったけど、ワクワクもドキドキも、期待に胸を膨らませる事もない。何故なら、高校三年生にして、もう七度目の転校だったから。    βの両親から生まれてしまったΩの一人息子の行く末を心配して、若かった父さんと母さんは、一つの罪を犯した。  小学校に入る時に義務付けられている血液検査日に、俺の血液と父さんの血液をすり替えるという罪を。  従って俺は戸籍上、β籍になっている。  あとは、一度吐(つ)いてしまった嘘がバレないよう、嘘を上塗りするばかりだった。  俺がΩとバレそうになる度に転校を繰り返し、流れ流れていつの間にか、東京の一大エスカレーター式私立校、小鳥遊(たかなし)学園に通う事になっていた。  今まで、俺に『好き』と言った連中は、みんなΩの発情期に当てられた奴らばかりだった。  だから『好き』と言われて、ピンときたことはない。  だけど。優しいキスに、心が動いて、いつの間にかそのひとを『好き』になっていた。  学園の事実上のトップで、生まれた時から許嫁が居て、俺のことを遊びだと言い切るあいつを。  どんなに酷いことをされても、一度愛したあのひとを、忘れることは出来なかった。  『Ωである俺』に居場所をくれたのは、貴男が初めてのひとだったから。

肩甲骨に薔薇の種(アルファポリス版・完結済)

おにぎり1000米
BL
エンジニアの三波朋晴はモデルに間違われることもある美形のオメガだが、学生の頃から誰とも固定した関係を持つことができないでいる。しかしとあるきっかけで年上のベータ、佐枝峡と出会い、好意をもつが… *オメガバース(独自設定あり)ベータ×オメガ 年齢差カプ *『まばゆいほどに深い闇』の脇キャラによるスピンオフなので、キャラクターがかぶります。本編+後日談。他サイト掲載作品の改稿修正版につきアルファポリス版としましたが、内容はあまり変わりません。

耳付きオメガは生殖能力がほしい【オメガバース】

さか【傘路さか】
BL
全7話。猪突猛進型な医療魔術師アルファ×巻き込まれ型な獣耳のある魔術師オメガ。 オメガであるフェーレスには獣の耳がある。獣の耳を持つ『耳付き』は膨大な魔力を有するが、生殖能力がないとされている存在だ。 ある日、上司を経由して、耳付きに生殖能力がない原因を調べたい、と研究協力の依頼があった。 依頼をしたのは同じ魔術研究所で働くアルファ……イザナだった。 彼は初対面の場で『フェーレスの番に立候補』し、研究を一緒に進めようと誘ってくる。 急に詰められる距離を拒否するフェーレスだが、彼のあまりの勢いに少しずつ丸め込まれていく。 ※小説の文章をコピーして無断で使用したり、登場人物名を版権キャラクターに置き換えた二次創作小説への転用は一部分であってもお断りします。 無断使用を発見した場合には、警告をおこなった上で、悪質な場合は法的措置をとる場合があります。 自サイト: https://sakkkkkkkkk.lsv.jp/ 誤字脱字報告フォーム: https://form1ssl.fc2.com/form/?id=fcdb8998a698847f

出会ったのは喫茶店

ジャム
BL
愛情・・・ 相手をいつくしみ深く愛すること・・・ 僕にはそんな感情わからない・・・ 愛されたことがないのだから・・・ 人間として生まれ、オメガであることが分かり、両親は僕を疎ましく思うようになった そして家を追い出される形でハイワード学園の寮に入れられた・・・ この物語は愛情を知らないオメガと愛情をたっぷり注がれて育った獅子獣人の物語 この物語には「幼馴染の不良と優等生」に登場した獅子丸博昭の一人息子が登場します。

二人のアルファは変異Ωを逃さない!

コプラ@貧乏令嬢〜コミカライズ12/26
BL
★お気に入り1200⇧(new❤️)ありがとうございます♡とても励みになります! 表紙絵、イラストレーターかな様にお願いしました♡イメージぴったりでびっくりです♡ 途中変異の男らしいツンデレΩと溺愛アルファたちの因縁めいた恋の物語。 修験道で有名な白路山の麓に住む岳は市内の高校へ通っているβの新高校3年生。優等生でクールな岳の悩みは高校に入ってから周囲と比べて成長が止まった様に感じる事だった。最近は身体までだるく感じて山伏の修行もままならない。 βの自分に執着する友人のアルファの叶斗にも、妙な対応をされる様になって気が重い。本人も知らない秘密を抱えたβの岳と、東京の中高一貫校から転校してきたもう一人の謎めいたアルファの高井も岳と距離を詰めてくる。叶斗も高井も、なぜΩでもない岳から目が離せないのか、自分でも不思議でならない。 そんな岳がΩへの変異を開始して…。岳を取り巻く周囲の騒動は収まるどころか増すばかりで、それでも岳はいつもの様に、冷めた態度でマイペースで生きていく!そんな岳にすっかり振り回されていく2人のアルファの困惑と溺愛♡

胎児の頃から執着されていたらしい

夜鳥すぱり
BL
好きでも嫌いでもない幼馴染みの鉄堅(てっけん)は、葉月(はづき)と結婚してツガイになりたいらしい。しかし、どうしても鉄堅のねばつくような想いを受け入れられない葉月は、しつこく求愛してくる鉄堅から逃げる事にした。オメガバース執着です。 ◆完結済みです。いつもながら読んで下さった皆様に感謝です。 ◆表紙絵を、花々緒さんが描いて下さいました(*^^*)。葉月を常に守りたい一途な鉄堅と、ひたすら逃げたい意地っぱりな葉月。

あなたは僕の運命なのだと、

BL
将来を誓いあっているアルファの煌とオメガの唯。仲睦まじく、二人の未来は強固で揺るぎないと思っていた。 ──あの時までは。 すれ違い(?)オメガバース話。

器量なしのオメガの僕は

いちみやりょう
BL
四宮晴臣 × 石崎千秋 多くの美しいオメガを生み出す石崎家の中で、特に美しい容姿もしておらず、その上、フェロモン異常で発情の兆しもなく、そのフェロモンはアルファを引きつけることのない体質らしい千秋は落ちこぼれだった。もはやベータだと言ったほうが妥当な体だったけれど、血液検査ではオメガだと診断された。 石崎家のオメガと縁談を望む名門のアルファ家系は多い。けれど、その中の誰も当然の事のように千秋を選ぶことはなく、20歳になった今日、ついに家を追い出されてしまった千秋は、寒い中、街を目指して歩いていた。 かつてベータに恋をしていたらしいアルファの四宮に拾われ、その屋敷で働くことになる ※話のつながりは特にありませんが、「俺を好きになってよ!」にてこちらのお話に出てくる泉先生の話を書き始めました。

処理中です...