巡る日常と殺人

すずもと

文字の大きさ
9 / 12

姪っ子が殺したのは

しおりを挟む
私は18歳、この春から大学生になった。

大学生になってからお金が全然足りない。
高校生の頃は、制服だったし、メイク等も禁止だったので、特にそこまでお金を使うことはなかった。
でも、大学生になってからは毎日私服だし、お昼ご飯も自分で買わないといけない。メイクだって大学生ともなればしてない方が浮いてしまう。

「ああ、叔母さんがいればな・・・」
財布を覗きながら呟いた。

私にはなんでも買ってくれる叔母さんがいた。
そう過去形だ。高校生の時に、事故にあって死んでしまった。
緑内障って言っていた。最近目が上手く見えないのって零していた時期だった。
車にぶつかり亡くなってしまったのだ。

しばらく立ち直れなかった。
新しい洋服なんて買いに行く気になんてなれなかった。
しばらく塞ぎ込んでいた時に、ふと叔母さんが残したインスタを思い出した。
叔母さんが大事にしていたアカウントだから、亡くなったこととお礼の投稿をしたところ、会ったこともない多くの人から励ましのメッセージが届いた。

自分も誰かに何かを伝えることをしてみたい…と思って、少しずつ立ち直ってきて、コミュニケーション学科の大学に進んだ。

私もインスタをやっている。叔母さんほどフォロワーがいるわけではないけど。
最近では「ニャンバ」というデザインソフトで動画や画像加工などをして発信している。


ある日のことだった。叔母さんと昔食べに来たお蕎麦屋さんに行った時のことだ。
”アルバイト募集”
という張り紙が貼ってあり、そのまま店長に話を聞き、働くことになった。

中学生の頃から通っているのでメニューは覚えているし、店長さんや常連さんは顔見知りだし、とても楽しい。

しばらく働いた頃、店長がうーん…と唸っている様子を見かけるようになった。
「どうしたんですか?店長」
「実は、メニュー表がボロボロでね。作り直してるんだけど、上手く作れなくて」

店長はもう60歳の還暦だ。どうやらノートパソコンのExcelで作ろうとしていたみたいだが、画面を見るとごちゃごちゃしていた。
「店長、今はニャンバで簡単に作れますよ」
そう言って、私が作ることになった。
メニュー表のテンプレートを選んで、メニュー名と金額、写真を当てはめていくだけ。
素敵なメニュー表ができた。

店長は「ありがとうね」と顔をくしゃっとさせて喜んでくれて、お店のメニュー表になった。
その月の給料はメニュー作りのお金が上乗せされていて、心も財布もホクホクした。

新しいメニュー表になって数週間後、20代の男性がお蕎麦を食べに来た。
初めて見る顔だった。キチッとしたスーツを着て、カッコいい。
「どの蕎麦がおすすめかな?」
と聞かれ、おすすめを頼んでくれた。
営業の仕事周りの最中で、色々な所でランチを食べているらしい。
ここの蕎麦は美味しいね、と言っていた。その笑顔が犬みたいで少し可愛かった。
店長が、実は私がこのメニュー表を作ってくれたんだと言って、びっくりしていた。
他愛ない店員と客の会話をしただけだけど、なぜかドキドキしてしまった。

「また来るね」
と言って去っていった。

その人が帰ってから、周りの常連さんにからかわれてしまった。
「ずいぶん男前だったね。惚れちまったんじゃないかい?」
なんて。

叔母さんが繋いでくれた縁で素敵なバイト先が見つかった。
もしかして、これから何かさらに縁があるのかもしれない。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

不思議なショートストーリーたち

フジーニー
ミステリー
さくっと読める短編集 電車内の暇つぶしに、寝る前のお供に、毎日の楽しみに。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

ある辺境伯の後悔

だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。 父親似だが目元が妻によく似た長女と 目元は自分譲りだが母親似の長男。 愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。 愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

『お前を愛する事はない』なんて言ってないでしょうね?

あんど もあ
ファンタジー
政略結婚で妻を娶った息子に、母親は穏やかに、だが厳しく訊ねる。 「『お前を愛する事は無い』なんて言ってないでしょうね?」

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

処理中です...