巡る日常と殺人

すずもと

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姪っ子が殺したのは

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私は18歳、この春から大学生になった。

大学生になってからお金が全然足りない。
高校生の頃は、制服だったし、メイク等も禁止だったので、特にそこまでお金を使うことはなかった。
でも、大学生になってからは毎日私服だし、お昼ご飯も自分で買わないといけない。メイクだって大学生ともなればしてない方が浮いてしまう。

「ああ、叔母さんがいればな・・・」
財布を覗きながら呟いた。

私にはなんでも買ってくれる叔母さんがいた。
そう過去形だ。高校生の時に、事故にあって死んでしまった。
緑内障って言っていた。最近目が上手く見えないのって零していた時期だった。
車にぶつかり亡くなってしまったのだ。

しばらく立ち直れなかった。
新しい洋服なんて買いに行く気になんてなれなかった。
しばらく塞ぎ込んでいた時に、ふと叔母さんが残したインスタを思い出した。
叔母さんが大事にしていたアカウントだから、亡くなったこととお礼の投稿をしたところ、会ったこともない多くの人から励ましのメッセージが届いた。

自分も誰かに何かを伝えることをしてみたい…と思って、少しずつ立ち直ってきて、コミュニケーション学科の大学に進んだ。

私もインスタをやっている。叔母さんほどフォロワーがいるわけではないけど。
最近では「ニャンバ」というデザインソフトで動画や画像加工などをして発信している。


ある日のことだった。叔母さんと昔食べに来たお蕎麦屋さんに行った時のことだ。
”アルバイト募集”
という張り紙が貼ってあり、そのまま店長に話を聞き、働くことになった。

中学生の頃から通っているのでメニューは覚えているし、店長さんや常連さんは顔見知りだし、とても楽しい。

しばらく働いた頃、店長がうーん…と唸っている様子を見かけるようになった。
「どうしたんですか?店長」
「実は、メニュー表がボロボロでね。作り直してるんだけど、上手く作れなくて」

店長はもう60歳の還暦だ。どうやらノートパソコンのExcelで作ろうとしていたみたいだが、画面を見るとごちゃごちゃしていた。
「店長、今はニャンバで簡単に作れますよ」
そう言って、私が作ることになった。
メニュー表のテンプレートを選んで、メニュー名と金額、写真を当てはめていくだけ。
素敵なメニュー表ができた。

店長は「ありがとうね」と顔をくしゃっとさせて喜んでくれて、お店のメニュー表になった。
その月の給料はメニュー作りのお金が上乗せされていて、心も財布もホクホクした。

新しいメニュー表になって数週間後、20代の男性がお蕎麦を食べに来た。
初めて見る顔だった。キチッとしたスーツを着て、カッコいい。
「どの蕎麦がおすすめかな?」
と聞かれ、おすすめを頼んでくれた。
営業の仕事周りの最中で、色々な所でランチを食べているらしい。
ここの蕎麦は美味しいね、と言っていた。その笑顔が犬みたいで少し可愛かった。
店長が、実は私がこのメニュー表を作ってくれたんだと言って、びっくりしていた。
他愛ない店員と客の会話をしただけだけど、なぜかドキドキしてしまった。

「また来るね」
と言って去っていった。

その人が帰ってから、周りの常連さんにからかわれてしまった。
「ずいぶん男前だったね。惚れちまったんじゃないかい?」
なんて。

叔母さんが繋いでくれた縁で素敵なバイト先が見つかった。
もしかして、これから何かさらに縁があるのかもしれない。

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