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第三部「継ぐ者の光、試される未来」
第10話:声を取り戻す朗読会
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朗読会当日。
王都中心部の王政詩学会館――
舞台は落ち着いた灯の中、騎士の衛兵ではなく、文官と聴衆によって静かに満たされていた。
今日の目玉登壇者はただ一人。
エリア・グランデ。
あの「胎の王」と呼ばれた少女が、母の名ではなく“詩人”として登壇するのは、これが初めてだった。
ざわつく周囲。
「グランデ家の娘が出るとは」「盗作問題を語るのか」といった声がささやかれる。
それでもエリアは、怯まなかった。
この舞台は、“戦う場所”ではなく、“帰る場所”。
そう信じていたから。
* * *
開演の鐘が鳴り、舞台中央に少女がひとり立つ。
まだ十一歳。
けれどその背筋は、誰よりもまっすぐだった。
「本日は、お集まりいただきありがとうございます。
わたしは、詩人・エリア・グランデです」
まずは、静かな名乗り。
観客席がそっと静まりかえった。
「この数週間、わたしの詩とよく似た詩が、“別の名前”で広まったことを知りました。
でも――わたしは、その人を責めるためにここに来たのではありません」
ざわっ、と小さなざわめき。
エリアは言葉を重ねる。
「むしろ、わたしはその人に“ありがとう”を言いたい。
だって、わたしの詩が“誰かにとって必要だった”ってことが分かったから」
「だから今日は、その詩を、“本来の声”で読ませてください」
そして、朗読が始まった。
> 『ちいさな剣』
>
> わたしは 剣を持たない
> でも こえがある
>
> だれかが ないたとき
> だれかが ふるえたとき
>
> わたしは こえで守る
> それが わたしの剣
声は震えていなかった。
どこまでも、澄んでいた。
それが「生まれた言葉」だと、誰もがわかっていた。
読み終えたあと、エリアは頭を下げて席に戻った。
一瞬の沈黙――そして、嵐のような拍手が会場を包んだ。
“似ている”ではない。
“同じ構成”でもない。
“これは、エリアの声だ”と、誰もが確信していた。
* * *
その日の夜、王政詩学会館の控え室に、
一通の手紙が届いた。
差出人:イリス(仮名)。
> 『あなたの声は、本当に強かった。
> わたしが、あなたの言葉を“借りた”理由は一つ。
> あなたになりたかった。
> けれど、朗読を聞いて分かりました。
> あなたの詩には、“書いた人間の体温”がある。
> わたしのものには、それがなかった。
>
> これは、返却です。
> あなたの剣を、どうか、持ち続けて』
封筒には、小さな押し花が添えられていた。
レイナが封筒を読み終えると、エリアはただ一言。
「……よかった。“戦い”にならなくて」
「ええ。あなたが“剣を振るわずに守った”ということよ」
* * *
翌朝、詩学局の掲示板にはこう記された。
> 《本年度文芸賞・若手詩部門、エリア・グランデ嬢の詩集に授与決定》
> 《選考理由:“象徴”ではなく“声”として響く詩に、新時代の希望を見出したため》
エリアはその掲示を見て、ただひとこと、呟いた。
「――これからも、書きたい」
王都中心部の王政詩学会館――
舞台は落ち着いた灯の中、騎士の衛兵ではなく、文官と聴衆によって静かに満たされていた。
今日の目玉登壇者はただ一人。
エリア・グランデ。
あの「胎の王」と呼ばれた少女が、母の名ではなく“詩人”として登壇するのは、これが初めてだった。
ざわつく周囲。
「グランデ家の娘が出るとは」「盗作問題を語るのか」といった声がささやかれる。
それでもエリアは、怯まなかった。
この舞台は、“戦う場所”ではなく、“帰る場所”。
そう信じていたから。
* * *
開演の鐘が鳴り、舞台中央に少女がひとり立つ。
まだ十一歳。
けれどその背筋は、誰よりもまっすぐだった。
「本日は、お集まりいただきありがとうございます。
わたしは、詩人・エリア・グランデです」
まずは、静かな名乗り。
観客席がそっと静まりかえった。
「この数週間、わたしの詩とよく似た詩が、“別の名前”で広まったことを知りました。
でも――わたしは、その人を責めるためにここに来たのではありません」
ざわっ、と小さなざわめき。
エリアは言葉を重ねる。
「むしろ、わたしはその人に“ありがとう”を言いたい。
だって、わたしの詩が“誰かにとって必要だった”ってことが分かったから」
「だから今日は、その詩を、“本来の声”で読ませてください」
そして、朗読が始まった。
> 『ちいさな剣』
>
> わたしは 剣を持たない
> でも こえがある
>
> だれかが ないたとき
> だれかが ふるえたとき
>
> わたしは こえで守る
> それが わたしの剣
声は震えていなかった。
どこまでも、澄んでいた。
それが「生まれた言葉」だと、誰もがわかっていた。
読み終えたあと、エリアは頭を下げて席に戻った。
一瞬の沈黙――そして、嵐のような拍手が会場を包んだ。
“似ている”ではない。
“同じ構成”でもない。
“これは、エリアの声だ”と、誰もが確信していた。
* * *
その日の夜、王政詩学会館の控え室に、
一通の手紙が届いた。
差出人:イリス(仮名)。
> 『あなたの声は、本当に強かった。
> わたしが、あなたの言葉を“借りた”理由は一つ。
> あなたになりたかった。
> けれど、朗読を聞いて分かりました。
> あなたの詩には、“書いた人間の体温”がある。
> わたしのものには、それがなかった。
>
> これは、返却です。
> あなたの剣を、どうか、持ち続けて』
封筒には、小さな押し花が添えられていた。
レイナが封筒を読み終えると、エリアはただ一言。
「……よかった。“戦い”にならなくて」
「ええ。あなたが“剣を振るわずに守った”ということよ」
* * *
翌朝、詩学局の掲示板にはこう記された。
> 《本年度文芸賞・若手詩部門、エリア・グランデ嬢の詩集に授与決定》
> 《選考理由:“象徴”ではなく“声”として響く詩に、新時代の希望を見出したため》
エリアはその掲示を見て、ただひとこと、呟いた。
「――これからも、書きたい」
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