番ではなく、あなたを選ぶと決めた──王太子と平民の契約から始まる恋

春夜夢

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第4話「禁じられた血」

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翌朝、セイルは王宮の一角にある書庫へと案内された。

 王太子の命により、彼の出生について調査を進めるという。
 名目上は「番制度の医学的背景を知るため」とされていたが、
 内実は──セイルの“ありえない適合率”の理由を探るためだった。

 書庫の奥、禁書扱いされている医療記録が集められた棚。
 レイグランに案内されながら、セイルはひとつの古びた資料を手に取った。

『特異適合型Ωについて』

 そこに書かれていた内容に、セイルの背筋が凍る。

 ──番因子を人為的に組み込まれた被検体番号31。
 ──王都近郊の孤児院出身。
 ──母体は不明、遺伝子提供者の一部に王族由来の因子あり。

 「……これ、まさか」

「君の出生記録だ。……本当は、封印されていた資料だ」

 レイグランは苦しげに目を伏せた。

「王族の一部が、過去に“新たな番”を作ろうと……
 孤児に実験的な遺伝子改変を行っていた。その一人が、君だった」

 目の前が白くなる。
 血が王族のものだから、番になれたわけじゃない。
 制度が“選んだ”のではなく、“作られた”のだ。

「僕は……本物の番じゃ、ないんですね」

 思わず漏れた言葉に、レイグランが強く否定した。

「違う。“番であるかどうか”は、制度が決めることじゃない。
 そして俺にとって、君は“誰かが作った存在”なんかじゃない」

 レイグランの手が、セイルの肩に触れる。

「君が君であること。そのすべてを、俺は信じてる」

 その言葉に、セイルの瞳に涙が滲んだ。

 だがこの出生記録が世に出れば、セイルは“人造番”として糾弾されるだろう。

 王族の罪、そして隠された医療実験。
 多くの者にとって、それは触れてはならない闇だった。

「……こんな記録、燃やしてください。僕は、何者でもなくていい。
 ただ……あなたの傍にいられれば、それだけで」

「それでは、君の過去を否定することになる」

 レイグランは静かに首を振った。

「俺は、“君がどんな過去を持っていても”守りたい。
 制度ではなく、王族でもなく、たった一人の“俺”として」

 そう言い切ったレイグランの手は、震えていなかった。

 彼の“選ぶ覚悟”が、セイルを縛っていたすべての鎖を、少しずつ解いていく。

 ──たとえこの恋が、国を揺るがすものであっても。

 “番ではなく、あなたを選ぶと決めた”
 その言葉は、ふたりの想いの中で、確かに育ち始めていた。
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