15 / 25
第15話「契りの儀式」
しおりを挟む
“契約の印”が浮かび上がったその翌日。
レイグランとセイルは、王宮内の奥深く──かつて“番”が生まれるより前に存在した、古代の誓約殿へと足を運んでいた。
ここでは、血ではなく「意志」によって愛を誓った者だけが、契約を交わすことが許されたという。
「……この場で“契りの儀”を果たせば、国は黙認せざるを得なくなるだろう」
ユリエル王妃が厳かに語る。
「それほどまでに、“契約の印”は重い意味を持つ。古代の“王の証”でもあるから」
だが当然、反発もある。
王族評議会の一部貴族たちは、「番の否定は国家の秩序を揺るがす」として、儀式の中止を求めていた。
「彼らが儀式に干渉してくる可能性があるわ。……特に、“選ばれなかった番”は、危険よ」
王妃の言葉に、セイルは一瞬だけ視線を伏せる。
(エドガー……あのままでは、終わらない)
儀式は満月の夜に行われると決まった。
誓約殿には、ふたりの姿を記録する“見届け役”として、王妃と数名の中立派のみが同席を許された。
白い礼装に身を包んだレイグランは、かつてないほど凛々しく、そして穏やかに見えた。
対するセイルは、深い青の衣に銀の刺繍がほどこされた特別な装束に身を包む。
──まるで、かつての“初代王”と“契りを結んだ伴侶”の姿そのものだった。
「セイル・アーデル。汝は、自らの意志で、この王太子レイグラン・ユールと、魂を重ねることを望むか?」
「はい。どの制度にも、血にも、命令にも縛られず、僕は彼を選びます」
「レイグラン・ユール。汝は、番という定めではなく、この者を、伴侶として認めるか?」
「当然だ。彼以外を望んだことなど、一度もない」
ふたりの言葉が重なったとき、契約の印が鮮やかに輝いた。
セイルの胸から背中へ、レイグランの掌から腕へと、同じ文様が浮かび上がる。
それは“番”の力を超えた、原初の契り。
まばゆい光が天井を突き抜け、夜空へと昇っていった。
だが、その光の先にあったのは──
屋根裏から覗き込む、“もう一人の番”、エドガーの狂気の双眸。
契約の印の輝きが、自分には決して手に入らないことを突きつけた瞬間。
「……ならば、壊すしかない。絆ごと、王国ごと」
抑えきれぬ衝動が、禁術を呼び起こす。
彼が手にしたのは、封印された“番の契約書”の複写。
それは、番に選ばれなかった者が、正統を主張する最後の手段──
“偽りの契り”を押し通すための呪術だった。
その夜。
ふたりが契りを果たし、微睡みに落ちる直前。
セイルの額に、じわりと異様な熱が走る。
「っ……レイグラン、何か……おかしい……!」
見れば、先ほど浮かび上がった“契約の印”が、別の力に侵食されはじめていた。
「これは……っ、干渉されてる……!」
ふたりの絆に、偽りの契約が重ねられようとしている。
――これは、再び“試される夜”の始まり。
レイグランとセイルは、王宮内の奥深く──かつて“番”が生まれるより前に存在した、古代の誓約殿へと足を運んでいた。
ここでは、血ではなく「意志」によって愛を誓った者だけが、契約を交わすことが許されたという。
「……この場で“契りの儀”を果たせば、国は黙認せざるを得なくなるだろう」
ユリエル王妃が厳かに語る。
「それほどまでに、“契約の印”は重い意味を持つ。古代の“王の証”でもあるから」
だが当然、反発もある。
王族評議会の一部貴族たちは、「番の否定は国家の秩序を揺るがす」として、儀式の中止を求めていた。
「彼らが儀式に干渉してくる可能性があるわ。……特に、“選ばれなかった番”は、危険よ」
王妃の言葉に、セイルは一瞬だけ視線を伏せる。
(エドガー……あのままでは、終わらない)
儀式は満月の夜に行われると決まった。
誓約殿には、ふたりの姿を記録する“見届け役”として、王妃と数名の中立派のみが同席を許された。
白い礼装に身を包んだレイグランは、かつてないほど凛々しく、そして穏やかに見えた。
対するセイルは、深い青の衣に銀の刺繍がほどこされた特別な装束に身を包む。
──まるで、かつての“初代王”と“契りを結んだ伴侶”の姿そのものだった。
「セイル・アーデル。汝は、自らの意志で、この王太子レイグラン・ユールと、魂を重ねることを望むか?」
「はい。どの制度にも、血にも、命令にも縛られず、僕は彼を選びます」
「レイグラン・ユール。汝は、番という定めではなく、この者を、伴侶として認めるか?」
「当然だ。彼以外を望んだことなど、一度もない」
ふたりの言葉が重なったとき、契約の印が鮮やかに輝いた。
セイルの胸から背中へ、レイグランの掌から腕へと、同じ文様が浮かび上がる。
それは“番”の力を超えた、原初の契り。
まばゆい光が天井を突き抜け、夜空へと昇っていった。
だが、その光の先にあったのは──
屋根裏から覗き込む、“もう一人の番”、エドガーの狂気の双眸。
契約の印の輝きが、自分には決して手に入らないことを突きつけた瞬間。
「……ならば、壊すしかない。絆ごと、王国ごと」
抑えきれぬ衝動が、禁術を呼び起こす。
彼が手にしたのは、封印された“番の契約書”の複写。
それは、番に選ばれなかった者が、正統を主張する最後の手段──
“偽りの契り”を押し通すための呪術だった。
その夜。
ふたりが契りを果たし、微睡みに落ちる直前。
セイルの額に、じわりと異様な熱が走る。
「っ……レイグラン、何か……おかしい……!」
見れば、先ほど浮かび上がった“契約の印”が、別の力に侵食されはじめていた。
「これは……っ、干渉されてる……!」
ふたりの絆に、偽りの契約が重ねられようとしている。
――これは、再び“試される夜”の始まり。
0
あなたにおすすめの小説
見捨てられた(無自覚な)王女は、溺愛には気付かない
みん
恋愛
精霊に護られた国ルテリアル。精霊の加護のお陰で豊かで平和な国ではあったが、近年ではその精霊の加護も薄れていき、他国から侵略されそうになる。戦いを知らない国王は、スネフリング帝国に助けを求めるが、その見返りに要求されたのは──。
精霊に護られた国の王女として生まれたにも関わらず、魔力を持って生まれなかった事で、母である王妃以外から冷遇されているカミリア第二王女。このカミリアが、人質同然にスネフリング帝国に行く事になり─。
❋独自設定有り。
❋誤字脱字には気を付けていますが、あると思います。すみません。気付き次第修正していきます。
「貧相な小娘」と罵った第一王子へ。番(つがい)は貴方ではなく、国王陛下(お父様)でした
しえろ あい
恋愛
「お父様、わたくし、あの方と目が合った瞬間、分かってしまったのです」
十六歳のデビュタントの夜、ルーセント侯爵令嬢フェリシアを待っていたのは、残酷な罵倒だった。第一王子カシウスは、可憐な白いドレスを纏った彼女を「貧相な小娘」と呼び、己の番(つがい)であることを真っ向から否定する。
会場に響く冷笑と、愛用の刺繍に込めた自信さえ打ち砕くような屈辱。しかし、絶望の淵に立たされた彼女を見つめていたのは、王子ではなく、圧倒的な威厳を放つ「ある男」だった。
魂を焦がすような熱い視線が重なり、静まり返る謁見の間。この出会いが、王室を揺るがす大事件の幕開けになるとは、まだ誰も知らない。自身の価値を否定された少女が、真実の愛によって世界で最も幸福な王妃へと駆け上がる、逆転溺愛ストーリー。
※小説家になろう様にも投稿しています※
【完結】一途すぎる公爵様は眠り姫を溺愛している
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
リュシエンヌ・ソワイエは16歳の子爵令嬢。皆が憧れるマルセル・クレイン伯爵令息に婚約を申し込まれたばかりで幸せいっぱいだ。
しかしある日を境にリュシエンヌは眠りから覚めなくなった。本人は自覚が無いまま12年の月日が過ぎ、目覚めた時には父母は亡くなり兄は結婚して子供がおり、さらにマルセルはリュシエンヌの親友アラベルと結婚していた。
突然のことに狼狽えるリュシエンヌ。しかも兄嫁はリュシエンヌを厄介者扱いしていて実家にはいられそうもない。
そんな彼女に手を差し伸べたのは、若きヴォルテーヌ公爵レオンだった……。
『残念な顔だとバカにされていた私が隣国の王子様に見初められました』『結婚前日に友人と入れ替わってしまった……!』に出てくる魔法大臣ゼインシリーズです。
表紙は「簡単表紙メーカー2」で作成しました。
【完結】「お前を愛することはない」と言われましたが借金返済の為にクズな旦那様に嫁ぎました
華抹茶
恋愛
度重なる不運により領地が大打撃を受け、復興するも被害が大きすぎて家は多額の借金を作ってしまい没落寸前まで追い込まれた。そんな時その借金を肩代わりするために申し込まれた縁談を受けることに。
「私はお前を愛することはない。これは契約結婚だ」
「…かしこまりました」
初めての顔合わせの日、開口一番そう言われて私はニコラーク伯爵家へと嫁ぐことになった。
そしてわずか1週間後、結婚式なんて挙げることもなく籍だけを入れて、私―アメリア・リンジーは身一つで伯爵家へと移った。
※なろうさんでも公開しています。
家族に裏切られて辺境で幸せを掴む?
しゃーりん
恋愛
婚約者を妹に取られる。
そんな小説みたいなことが本当に起こった。
婚約者が姉から妹に代わるだけ?しかし私はそれを許さず、慰謝料を請求した。
婚約破棄と共に跡継ぎでもなくなったから。
仕事だけをさせようと思っていた父に失望し、伯父のいる辺境に行くことにする。
これからは辺境で仕事に生きよう。そう決めて王都を旅立った。
辺境で新たな出会いがあり、付き合い始めたけど?というお話です。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
夫に捨てられた私は冷酷公爵と再婚しました
香木陽灯
恋愛
伯爵夫人のマリアーヌは「夜を共に過ごす気にならない」と突然夫に告げられ、わずか五ヶ月で離縁することとなる。
これまで女癖の悪い夫に何度も不倫されても、役立たずと貶されても、文句ひとつ言わず彼を支えてきた。だがその苦労は報われることはなかった。
実家に帰っても父から不当な扱いを受けるマリアーヌ。気分転換に繰り出した街で倒れていた貴族の男性と出会い、彼を助ける。
「離縁したばかり? それは相手の見る目がなかっただけだ。良かったじゃないか。君はもう自由だ」
「自由……」
もう自由なのだとマリアーヌが気づいた矢先、両親と元夫の策略によって再婚を強いられる。相手は婚約者が逃げ出すことで有名な冷酷公爵だった。
ところが冷酷公爵と会ってみると、以前助けた男性だったのだ。
再婚を受け入れたマリアーヌは、公爵と少しずつ仲良くなっていく。
ところが公爵は王命を受け内密に仕事をしているようで……。
一方の元夫は、財政難に陥っていた。
「頼む、助けてくれ! お前は俺に恩があるだろう?」
元夫の悲痛な叫びに、マリアーヌはにっこりと微笑んだ。
「なぜかしら? 貴方を助ける気になりませんの」
※ふんわり設定です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる