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『第12話:君は誰に“快楽”を捧げる?』
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「お久しぶりですね、聖女リディア殿」
その声は、まるで毒を含んだ蜜のようだった。
黒い外套、整った顔立ち、そして薄く笑う紅い瞳。
「……あなたが、黒の王子……?」
「名乗るほどの者ではありませんよ。ただの、あなたに恋した男です」
エゼル=グレイ。
隣国フロステリアの第三王子。
だがその実態は――快楽と魔導を融合させた“堕天魔導教団”の中心人物だった。
彼は手にした薔薇を私の前に差し出し、跪く。
「あなたの“幸福の波動”、あれは世界を癒せる光だ。けれど、同時に、世界を支配できる闇でもある」
「……!」
「私の元に来ませんか? あなたを神と崇め、愛し、民を幸福で堕落させてあげましょう」
ぞっとするほど甘い声。
なのに、底の見えない黒い欲望が滲んでいた。
「断る」
レオン様の声が響いた瞬間、空気が変わった。
彼はエゼルの前に立ち、剣ではなく、ただ鋭い視線で睨みつける。
「リディアは、俺のものだ。お前に触れさせるつもりはない」
「ふふ……彼女の意思はどうでしょう? レオン殿下、あなたが与える快楽と、私が与える快楽――どちらが上か、一度比べてみませんか?」
「貴様……!」
レオン様の怒りが溢れかけたその時――
私は、レオン様の腕をぎゅっと掴んだ。
「私は、レオン様だけでいい」
「……!」
「誰の甘い言葉より、誰の魔力より、レオン様がくれる“あたたかさ”が一番、心地いいんです」
エゼルの笑みがわずかに歪む。
「……残念ですね。ならば、こちらも少し強引に出るしかない」
その瞬間、彼の背後に立っていた魔導兵たちが魔法陣を起動。
黒い霧が広がり、周囲の空気が震える。
「聖女を奪え。神に選ばれた女の身体は、我らが教団の至宝だ」
「触れるな!!」
レオン様が魔力を解放する。
辺り一帯に氷の嵐が巻き起こり、黒衣の兵たちを次々と凍てつかせていく。
「いいでしょう……今回は引きます。しかし、次は“夢”の中で、会いましょう」
エゼルは一礼し、闇に溶けるように姿を消した。
嵐が止む。
私はレオン様にしがみついた。
「大丈夫だ。……絶対に、渡さない」
「……私も、絶対に離れない」
その言葉は、ただの愛の確認ではなかった。
これから先、もっと深く、もっと強く、互いに“依存”していく予感がして――
私はもう、レオン様以外に“感じる”ことも、“生きる”こともできなくなっていた。
その声は、まるで毒を含んだ蜜のようだった。
黒い外套、整った顔立ち、そして薄く笑う紅い瞳。
「……あなたが、黒の王子……?」
「名乗るほどの者ではありませんよ。ただの、あなたに恋した男です」
エゼル=グレイ。
隣国フロステリアの第三王子。
だがその実態は――快楽と魔導を融合させた“堕天魔導教団”の中心人物だった。
彼は手にした薔薇を私の前に差し出し、跪く。
「あなたの“幸福の波動”、あれは世界を癒せる光だ。けれど、同時に、世界を支配できる闇でもある」
「……!」
「私の元に来ませんか? あなたを神と崇め、愛し、民を幸福で堕落させてあげましょう」
ぞっとするほど甘い声。
なのに、底の見えない黒い欲望が滲んでいた。
「断る」
レオン様の声が響いた瞬間、空気が変わった。
彼はエゼルの前に立ち、剣ではなく、ただ鋭い視線で睨みつける。
「リディアは、俺のものだ。お前に触れさせるつもりはない」
「ふふ……彼女の意思はどうでしょう? レオン殿下、あなたが与える快楽と、私が与える快楽――どちらが上か、一度比べてみませんか?」
「貴様……!」
レオン様の怒りが溢れかけたその時――
私は、レオン様の腕をぎゅっと掴んだ。
「私は、レオン様だけでいい」
「……!」
「誰の甘い言葉より、誰の魔力より、レオン様がくれる“あたたかさ”が一番、心地いいんです」
エゼルの笑みがわずかに歪む。
「……残念ですね。ならば、こちらも少し強引に出るしかない」
その瞬間、彼の背後に立っていた魔導兵たちが魔法陣を起動。
黒い霧が広がり、周囲の空気が震える。
「聖女を奪え。神に選ばれた女の身体は、我らが教団の至宝だ」
「触れるな!!」
レオン様が魔力を解放する。
辺り一帯に氷の嵐が巻き起こり、黒衣の兵たちを次々と凍てつかせていく。
「いいでしょう……今回は引きます。しかし、次は“夢”の中で、会いましょう」
エゼルは一礼し、闇に溶けるように姿を消した。
嵐が止む。
私はレオン様にしがみついた。
「大丈夫だ。……絶対に、渡さない」
「……私も、絶対に離れない」
その言葉は、ただの愛の確認ではなかった。
これから先、もっと深く、もっと強く、互いに“依存”していく予感がして――
私はもう、レオン様以外に“感じる”ことも、“生きる”こともできなくなっていた。
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