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夜明け前の空は、灰色と群青のあいだ。
まだ太陽が顔を出す前の、いちばん静かな時間だった。
廃ビルの一室。
叶多とルカは、肩を寄せ合ったまま、言葉もなく夜の終わりを待っていた。
どちらも、この静けさが長くは続かないと分かっていた。
——それは、音もなくやってきた。
「……叶多」
「……聞こえた」
遠くから響く、低い振動。
ビルの外の道路がわずかに揺れている。
空には、ドローンのセンサー光が薄く走った。
「やっぱり、見つかっちまったな」
叶多が立ち上がると同時に、ルカも反応する。
彼の瞳の奥が、緊張で鋭く光った。
壁に身を寄せ、窓の外を覗くと——
黒い車列が数台、ビルを囲んでいた。
屋上には輸送用の無人機。
そして――中央には、黒いコートの男たち。
〈シーカーズ〉の精鋭部隊だ。
「……あいつら、本気だ」
「ルカ、逃げるぞ」
「うん。君がいるなら、どこへでも」
銃声。
瞬間、割れた窓から閃光弾が投げ込まれた。
室内が真っ白に染まり、轟音が鼓膜を裂く。
「っく……!」
叶多は目を細めながらルカの腕を掴み、非常階段へと駆け出した。
背後からドアを蹴破る音、鉄のブーツが床を踏み鳴らす音。
夜明けの静寂は完全に壊された。
「包囲網、完成まであと二分」
「捕縛優先だ。オリジナルは殺すな!」
通信の声が階下から響く。
追撃は近い。
「こっちだ!」
ルカが先を走り、崩れかけた通路を蹴って飛び越える。
落ちかけた鉄骨が軋む音が響き、粉塵が舞う。
外に出ると、冷たい夜風が顔を打った。
まだ太陽は昇っていない。
だが、追跡の包囲は夜の闇をものともしないほど厳しかった。
「……ルカ、こっちに来い!」
叶多が身を乗り出し、鉄骨を滑るように下へ降りる。
ルカもすぐ後に続いた。
そのとき、頭上に光が差した。
ドローン部隊。
センサーが二人を捉える。
「見つかった……!」
銃声。
火花が地面を走る。
ふたりはビルの影へ飛び込み、壁の裏に身を潜めた。
息が荒い。
鼓動が、耳の奥で鳴っている。
「ルカ……」
「大丈夫、叶多は俺が守る」
ルカが叶多の前に立つ。
その背中は震えていなかった。
“影”なんかじゃない。ひとりの少年として、守ろうとしていた。
遠くから、精鋭部隊が近づいてくる。
銃声と警告音。
夜が終わると同時に、ふたりの“戦い”が再び始まろうとしていた。
まだ太陽が顔を出す前の、いちばん静かな時間だった。
廃ビルの一室。
叶多とルカは、肩を寄せ合ったまま、言葉もなく夜の終わりを待っていた。
どちらも、この静けさが長くは続かないと分かっていた。
——それは、音もなくやってきた。
「……叶多」
「……聞こえた」
遠くから響く、低い振動。
ビルの外の道路がわずかに揺れている。
空には、ドローンのセンサー光が薄く走った。
「やっぱり、見つかっちまったな」
叶多が立ち上がると同時に、ルカも反応する。
彼の瞳の奥が、緊張で鋭く光った。
壁に身を寄せ、窓の外を覗くと——
黒い車列が数台、ビルを囲んでいた。
屋上には輸送用の無人機。
そして――中央には、黒いコートの男たち。
〈シーカーズ〉の精鋭部隊だ。
「……あいつら、本気だ」
「ルカ、逃げるぞ」
「うん。君がいるなら、どこへでも」
銃声。
瞬間、割れた窓から閃光弾が投げ込まれた。
室内が真っ白に染まり、轟音が鼓膜を裂く。
「っく……!」
叶多は目を細めながらルカの腕を掴み、非常階段へと駆け出した。
背後からドアを蹴破る音、鉄のブーツが床を踏み鳴らす音。
夜明けの静寂は完全に壊された。
「包囲網、完成まであと二分」
「捕縛優先だ。オリジナルは殺すな!」
通信の声が階下から響く。
追撃は近い。
「こっちだ!」
ルカが先を走り、崩れかけた通路を蹴って飛び越える。
落ちかけた鉄骨が軋む音が響き、粉塵が舞う。
外に出ると、冷たい夜風が顔を打った。
まだ太陽は昇っていない。
だが、追跡の包囲は夜の闇をものともしないほど厳しかった。
「……ルカ、こっちに来い!」
叶多が身を乗り出し、鉄骨を滑るように下へ降りる。
ルカもすぐ後に続いた。
そのとき、頭上に光が差した。
ドローン部隊。
センサーが二人を捉える。
「見つかった……!」
銃声。
火花が地面を走る。
ふたりはビルの影へ飛び込み、壁の裏に身を潜めた。
息が荒い。
鼓動が、耳の奥で鳴っている。
「ルカ……」
「大丈夫、叶多は俺が守る」
ルカが叶多の前に立つ。
その背中は震えていなかった。
“影”なんかじゃない。ひとりの少年として、守ろうとしていた。
遠くから、精鋭部隊が近づいてくる。
銃声と警告音。
夜が終わると同時に、ふたりの“戦い”が再び始まろうとしていた。
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