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夜明けの戦いのあと、ふたりは都市の外れにある小さな倉庫へとたどり着いた。
外壁はひび割れ、扉も半分壊れかけている。
それでも、今のふたりには十分すぎる「避難場所」だった。
「……ここなら、しばらくは大丈夫そうだな」
叶多は扉を閉め、荒い息を吐きながら壁にもたれかかった。
身体中が痛い。腕にはかすり傷、膝には血の跡。
ルカも同じように肩で息をしていた。
「叶多……傷、見せて」
ルカが膝をついて、叶多の手をそっと取る。
戦いのときとは違う――やわらかく、震えるような指先。
かすれた皮膚に触れると、叶多は思わず息を詰めた。
「っ……大丈夫、これくらい」
「よくない。君が痛いの、俺がいちばん分かるんだ」
ルカの声はかすかに震えていた。
まるで、叶多の痛みがそのまま自分に流れ込んでいるみたいに。
「……お前、本当に“影”なのかよ」
「君が痛いと、俺も痛い。君が息を詰めると、俺の胸も苦しくなる。……影でも、俺は君の“もうひとり”だから」
ふたりの間に、静かな空気が流れる。
先ほどまで響いていた銃声も、追跡の足音も、今は遠い。
ルカはポケットから小さな布を取り出し、叶多の膝の傷を優しく拭った。
水も消毒もない、完璧じゃない手当て。
けれどその仕草には、誰よりも強い“想い”があった。
「……そんな顔すんなよ」
「顔?」
「まるで、俺が壊れそうなもんみたいに扱うな」
叶多が苦笑すると、ルカも少しだけ笑った。
いつもの、柔らかい笑み。
「君が壊れたら……俺、きっと消える」
「バカ。消えるとか、言うな」
叶多はルカの手首を掴んだ。
そのまま引き寄せるようにして、自分の額をルカの額に押し当てる。
汗と血と息の熱が混ざり合い、ふたりの距離はもう、指先一つもなかった。
「お前は……もう俺の“影”なんかじゃねぇよ」
「……叶多」
「お前は、ルカだ。俺が、お前をそう呼んでんだ」
ルカの瞳が大きく揺れた。
何度も唇を開きかけて、ようやく小さな声で呟く。
「……うれしい」
ふたりの影が、倉庫の薄明かりに重なる。
壊れかけた世界の片隅で、たしかに“ひとつの絆”が灯った。
外壁はひび割れ、扉も半分壊れかけている。
それでも、今のふたりには十分すぎる「避難場所」だった。
「……ここなら、しばらくは大丈夫そうだな」
叶多は扉を閉め、荒い息を吐きながら壁にもたれかかった。
身体中が痛い。腕にはかすり傷、膝には血の跡。
ルカも同じように肩で息をしていた。
「叶多……傷、見せて」
ルカが膝をついて、叶多の手をそっと取る。
戦いのときとは違う――やわらかく、震えるような指先。
かすれた皮膚に触れると、叶多は思わず息を詰めた。
「っ……大丈夫、これくらい」
「よくない。君が痛いの、俺がいちばん分かるんだ」
ルカの声はかすかに震えていた。
まるで、叶多の痛みがそのまま自分に流れ込んでいるみたいに。
「……お前、本当に“影”なのかよ」
「君が痛いと、俺も痛い。君が息を詰めると、俺の胸も苦しくなる。……影でも、俺は君の“もうひとり”だから」
ふたりの間に、静かな空気が流れる。
先ほどまで響いていた銃声も、追跡の足音も、今は遠い。
ルカはポケットから小さな布を取り出し、叶多の膝の傷を優しく拭った。
水も消毒もない、完璧じゃない手当て。
けれどその仕草には、誰よりも強い“想い”があった。
「……そんな顔すんなよ」
「顔?」
「まるで、俺が壊れそうなもんみたいに扱うな」
叶多が苦笑すると、ルカも少しだけ笑った。
いつもの、柔らかい笑み。
「君が壊れたら……俺、きっと消える」
「バカ。消えるとか、言うな」
叶多はルカの手首を掴んだ。
そのまま引き寄せるようにして、自分の額をルカの額に押し当てる。
汗と血と息の熱が混ざり合い、ふたりの距離はもう、指先一つもなかった。
「お前は……もう俺の“影”なんかじゃねぇよ」
「……叶多」
「お前は、ルカだ。俺が、お前をそう呼んでんだ」
ルカの瞳が大きく揺れた。
何度も唇を開きかけて、ようやく小さな声で呟く。
「……うれしい」
ふたりの影が、倉庫の薄明かりに重なる。
壊れかけた世界の片隅で、たしかに“ひとつの絆”が灯った。
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