婚約者を処刑したら聖女になってました。けど何か文句ある?

春夜夢

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第四話:銀の騎士、跪く

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「……お呼びとのことでしたが」

神託庁の聖女の間。
私の前に跪いたのは、銀の髪と淡い蒼の瞳を持つ、若き騎士だった。

その名は――ユリウス・グランディール。

王宮直属の近衛騎士団、特例任命枠。
貴族出身ではない異例の叩き上げで、戦場での武勲と剣技の冴えから、
「銀嵐(ぎんらん)のユリウス」と呼ばれている男。

「あなたが、私の“専属護衛”に?」

「はい。王命です。ですが――私自身の意思でもあります」

彼は顔を上げ、まっすぐに私を見る。

「エリス様。あなたが処刑されると聞いた時、私は剣を抜こうとしました」

「……何を、今さら」

私は視線を逸らす。
そう。誰も助けなかった。
誰一人、あのとき――

「信じていました。あなたがそんなことをするはずがないと。
……今、こうして生きていてくださることを、私は本当に、嬉しく思います」

その声に、わずかに胸が揺れた。

けれど私は、冷たい仮面を崩さない。

「信じてたなら、なぜ黙っていたの?」

「私一人では、止められませんでした。無力でした。……それでも、今度は違います」

ユリウスは頭を下げ、そっとひざまずいた。

「今度は、命を懸けて、あなたをお守りします。
たとえこの国全てを敵に回しても――私の剣は、あなたのためにあります」

静かなその言葉に、私の胸の奥で、何かが微かに鳴った気がした。

「……期待しないで。私はもう、誰にも頼るつもりはないの」

それでも、私は彼を拒まなかった。

なぜかは、分からない。

ただ、彼の蒼い瞳が、
どこまでも静かに私を見つめていたから――
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