婚約者を処刑したら聖女になってました。けど何か文句ある?

春夜夢

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第五話:親友だった女へ

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「――次に裁くのは、“あの女”よ」

ユリウスとふたりきりの執務室。
私の口からその名が出たとき、彼の表情がわずかに曇った。

「エリス様……。彼女は、あなたのご学友だったのでは」

「“だった”わ。今は違う」

名前はリディア・ベネット。
侯爵令嬢であり、王太子レオンハルトの“現在の婚約者”。

処刑前、私の側にいた唯一の存在。
……そう思っていた。

「私が反逆罪に問われたとき、あの子は何をしたと思う?」

私は笑った。乾いた、哀しい声で。

「“見ていただけ”。黙って、何も言わなかった。
むしろ、レオンの隣に立って、私が引きずられていくのを見ていたのよ。
まるで、最初から――そうなるのが当然だと言わんばかりに」

記憶が、頭の中で痛む。
あの淡い茶色の瞳。
泣きそうな顔をしていたのに、私に手を伸ばしてはくれなかった。

「私は、彼女のために、何度も盾になった。
舞踏会の失敗も、服の染みも、噂話も、全部かばったのに」

私は静かに立ち上がる。

「――だから、あの子には“償わせる”。
聖女の名のもとに、“嘘の友情”を清算してもらうわ」

ユリウスは一歩前に出て、私に問う。

「それは、復讐のためですか?」

その問いに、私は一瞬だけ黙り――そして微笑んだ。

「いいえ。“公正な裁き”よ。
心を偽った者には、それ相応の罰が必要でしょう?」

そのとき、扉がノックされた。

「エリス様、次の御前会議にて――ベネット侯爵令嬢が“聖女様に謁見を願いたい”と申し出ております」

……来たわね。

「通しなさい。私の“初めての友達”に、直接話を聞いてあげるわ」

私の中で、過去が静かに終わりを告げようとしていた。
そしてその先に、新しい自分が立つ。

もう、私は“誰かのために微笑む令嬢”じゃない。

今の私は――
神の名のもとに、真実を暴き出す、“聖女”なのだから。
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