11 / 11
リオ視点:第10.5話 「俺が選んだのは、“あなたの隣”でした」
しおりを挟む
――夜が来た。
昼の誓約式の余韻がまだ身体に残っている。
誰にも壊されない“俺たちだけの契約”を結んで、
ようやく、あなたの隣に並ぶことを認められた。
それなのに、
いざこうしてふたりきりになっても、心臓の音がうるさくて、
まともにあなたの顔を見られない。
(……バカみたい。あんなに泣いて笑って、誓い合ったのに)
部屋の灯りは落ちていて、
淡いランプの光だけが、ベッドサイドに静かに灯っている。
ベッドの隣、あなたが静かに立っていた。
「……緊張してるのか?」
問いかけられて、俺は少し首をすくめる。
「緊張っていうか……なんていうか……うん。……どうしようもなく、好きって思ってる」
「……ふ」
あなたが笑うのが、少しだけ聞こえた。
優しい、どこまでも甘やかな笑い方だった。
そのまま歩み寄られて、ベッドの縁に膝をつかれる。
「触れていいか?」
「うん……今日は、俺のほうからお願いしようと思ってたくらい」
言葉にしてしまえば簡単だった。
でも、あなたの目を見ながら言うのは、やっぱりちょっと恥ずかしくて。
「だって俺、あなたに全部もらってきたから。
何度も助けてもらって、守られて、
名前も、居場所も、愛し方すらも……教えてもらったから」
「リオ」
あなたが俺の名を呼ぶ声が、好きだ。
こんなにも優しく、低く、心に染み込む呼び方を、他の誰にも知られたくない。
「だから今日は、俺があなたに“与える番”だよ」
「……与える、だと?」
「……あー、やっぱ恥ずかしい。忘れて。
でも……それでも、ちゃんと抱きしめてほしいって思ったの。
“契約者”としてじゃなくて、
――“恋人”として、ね」
あなたの手が、そっと頬に触れる。
ああ、温かい。
この手に抱かれているかぎり、俺はきっと、どこにも行かない。
唇が重なって、
息を呑むような、
それでいてやさしく胸を撫でられるようなキスが落ちた。
何度も、何度も。
そのたびに俺の中に、
“ああ、本当に、この人は俺のものなんだ”という確信が積もっていく。
「怖くないか」
「……少しだけ。
でもそれ以上に、嬉しい。怖いくらい、嬉しい」
「バカが。そんなことを言うから、
俺の理性が簡単に崩れていくんだ」
「じゃあ、崩してよ。俺のことも、君のことも、
今夜だけは、全部……無防備でいたいんだ」
静かに、唇が下へ降りていく。
首筋に、鎖骨に、そして胸元に――
肌と肌がふれあっていくたび、
心の奥が震えて、
“あなたで満たされていく自分”を、感じていた。
「……愛してるよ、ユリウス」
言葉にした瞬間、
あなたが俺を強く抱きしめてくれた。
(ああ、間違いなかった。俺は、“あなたの隣”を選んで良かった)
その夜。
俺たちはお互いを確かめるように、
何度も何度も、名前を呼び合った。
そして、もう一度だけ誓った。
――これからも、何があっても、
“あなたと生きていく”と。
昼の誓約式の余韻がまだ身体に残っている。
誰にも壊されない“俺たちだけの契約”を結んで、
ようやく、あなたの隣に並ぶことを認められた。
それなのに、
いざこうしてふたりきりになっても、心臓の音がうるさくて、
まともにあなたの顔を見られない。
(……バカみたい。あんなに泣いて笑って、誓い合ったのに)
部屋の灯りは落ちていて、
淡いランプの光だけが、ベッドサイドに静かに灯っている。
ベッドの隣、あなたが静かに立っていた。
「……緊張してるのか?」
問いかけられて、俺は少し首をすくめる。
「緊張っていうか……なんていうか……うん。……どうしようもなく、好きって思ってる」
「……ふ」
あなたが笑うのが、少しだけ聞こえた。
優しい、どこまでも甘やかな笑い方だった。
そのまま歩み寄られて、ベッドの縁に膝をつかれる。
「触れていいか?」
「うん……今日は、俺のほうからお願いしようと思ってたくらい」
言葉にしてしまえば簡単だった。
でも、あなたの目を見ながら言うのは、やっぱりちょっと恥ずかしくて。
「だって俺、あなたに全部もらってきたから。
何度も助けてもらって、守られて、
名前も、居場所も、愛し方すらも……教えてもらったから」
「リオ」
あなたが俺の名を呼ぶ声が、好きだ。
こんなにも優しく、低く、心に染み込む呼び方を、他の誰にも知られたくない。
「だから今日は、俺があなたに“与える番”だよ」
「……与える、だと?」
「……あー、やっぱ恥ずかしい。忘れて。
でも……それでも、ちゃんと抱きしめてほしいって思ったの。
“契約者”としてじゃなくて、
――“恋人”として、ね」
あなたの手が、そっと頬に触れる。
ああ、温かい。
この手に抱かれているかぎり、俺はきっと、どこにも行かない。
唇が重なって、
息を呑むような、
それでいてやさしく胸を撫でられるようなキスが落ちた。
何度も、何度も。
そのたびに俺の中に、
“ああ、本当に、この人は俺のものなんだ”という確信が積もっていく。
「怖くないか」
「……少しだけ。
でもそれ以上に、嬉しい。怖いくらい、嬉しい」
「バカが。そんなことを言うから、
俺の理性が簡単に崩れていくんだ」
「じゃあ、崩してよ。俺のことも、君のことも、
今夜だけは、全部……無防備でいたいんだ」
静かに、唇が下へ降りていく。
首筋に、鎖骨に、そして胸元に――
肌と肌がふれあっていくたび、
心の奥が震えて、
“あなたで満たされていく自分”を、感じていた。
「……愛してるよ、ユリウス」
言葉にした瞬間、
あなたが俺を強く抱きしめてくれた。
(ああ、間違いなかった。俺は、“あなたの隣”を選んで良かった)
その夜。
俺たちはお互いを確かめるように、
何度も何度も、名前を呼び合った。
そして、もう一度だけ誓った。
――これからも、何があっても、
“あなたと生きていく”と。
92
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
【完結】マジで婚約破棄される5秒前〜婚約破棄まであと5秒しかありませんが、じゃあ悪役令息は一体どうしろと?〜
明太子
BL
公爵令息ジェーン・アンテノールは初恋の人である婚約者のウィリアム王太子から冷遇されている。
その理由は彼が侯爵令息のリア・グラマシーと恋仲であるため。
ジェーンは婚約者の心が離れていることを寂しく思いながらも卒業パーティーに出席する。
しかし、その場で彼はひょんなことから自身がリアを主人公とした物語(BLゲーム)の悪役だと気付く。
そしてこの後すぐにウィリアムから婚約破棄されることも。
婚約破棄まであと5秒しかありませんが、じゃあ一体どうしろと?
シナリオから外れたジェーンの行動は登場人物たちに思わぬ影響を与えていくことに。
※小説家になろうにも掲載しております。
君さえ笑ってくれれば最高
大根
BL
ダリオ・ジュレの悩みは1つ。「氷の貴公子」の異名を持つ婚約者、ロベルト・トンプソンがただ1度も笑顔を見せてくれないことだ。感情が顔に出やすいダリオとは対照的な彼の態度に不安を覚えたダリオは、どうにかロベルトの笑顔を引き出そうと毎週様々な作戦を仕掛けるが。
(クーデレ?溺愛美形攻め × 顔に出やすい素直平凡受け)
異世界BLです。
モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中
risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。
任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。
快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。
アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——?
24000字程度の短編です。
※BL(ボーイズラブ)作品です。
この作品は小説家になろうさんでも公開します。
王子様から逃げられない!
一寸光陰
BL
目を覚ますとBLゲームの主人公になっていた恭弥。この世界が受け入れられず、何とかして元の世界に戻りたいと考えるようになる。ゲームをクリアすれば元の世界に戻れるのでは…?そう思い立つが、思わぬ障壁が立ち塞がる。
伯爵令息アルロの魔法学園生活
あさざきゆずき
BL
ハーフエルフのアルロは、人間とエルフの両方から嫌われている。だから、アルロは魔法学園へ入学しても孤独だった。そんなとき、口は悪いけれど妙に優しい優等生が現れた。
王道学園のモブ
四季織
BL
王道学園に転生した俺が出会ったのは、寡黙書記の先輩だった。
私立白鳳学園。山の上のこの学園は、政財界、文化界を担う子息達が通う超名門校で、特に、有名なのは生徒会だった。
そう、俺、小坂威(おさかたける)は王道学園BLゲームの世界に転生してしまったんだ。もちろんゲームに登場しない、名前も見た目も平凡なモブとして。
何故か男の僕が王子の閨係に選ばれました
まんまる
BL
貧乏男爵家の次男カナルは、ある日父親から呼ばれ、王太子の閨係に選ばれたと言われる。
どうして男の自分が?と戸惑いながらも、覚悟を決めて殿下の元へいく。
しかし、殿下は自分に触れることはなく、何か思いがあるようだった。
優しい二人の恋のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる