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第4話『祭祀の招待状と、再会する双子』
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「王都より、祭祀の招待状が届いた」
朝、朱煉がそう言って私に差し出したのは、濃紺の封蝋が押された手紙だった。
王族主催の神事。かつては私のような貴族令嬢にとって、誇らしい社交の場だったが――今となっては、忌々しい記憶の残る場所。
「……私を、都へ戻すつもりですか?」
「戻るというより、“晒しに行く”つもりだ」
朱煉は、涼しげに言った。
「断罪された令嬢が、今や“鬼神の花嫁”として生きている。……面白い見世物だと思わんか?」
「性格が悪いですね」
「おまえには言われたくない」
それでも彼がわざわざ王都へ行くと決めたのは、きっと“何か”を見せるためだ。
あるいは――見せつけるために。
王都に近づくにつれ、私の胸はざわめいていた。
あの日、断罪された広場。私に石を投げた令嬢たち。
そして、私の“居場所”を奪った、妹。
──レイリア。
双子の妹。
顔は瓜二つだが、気質はまるで違った。
私は無愛想で地味。彼女は社交的で、愛らしかった。
「……どうせ、王都は今も彼女の味方です」
「なら、ぶち壊せばいい」
朱煉の言葉はいつも極端で、だからこそ私の理性を軽く越えてくる。
「おまえを蔑んだ連中の顔が歪むのを、俺は見たい」
「……性格が悪いですね(再)」
「それは、おまえを選んだ男だからだ」
祭祀は、王都の大神殿で行われた。
厳かな空気。白装束の神官たち。
だがその中に、私は“忌み者”として通された。
そのとき――
「……お姉さま?」
その声に、全身が硬直した。
振り返ると、そこにはかつての“私”がいた。
いや、“私の顔をした彼女”が。
「……久しぶりね、レイリア」
「まさか、本当に朱煉様の……?」
「嫁いだわ」
レイリアの瞳が、僅かに揺れた。
朱煉が後ろから歩み寄り、私の肩に手を置く。
「この女は、俺の“妻”だ。何か文句でも?」
「い、いえ……ただ、驚いて……」
気まずい空気が流れる中、レイリアが突然、無垢な声で言った。
「お姉さま……ごめんなさい。私、ずっと罪悪感があって……本当は、断罪されるべきだったのは私なの。あなたが身代わりになったって、知ってた」
その言葉に、私は凍りついた。
「……それを、今ここで言うの?」
「うん。今なら、赦してもらえるかなって……」
その瞬間、朱煉の手がわずかに震えたのを、私は感じた。
「貴様、ふざけているのか?」
低く、抑えられた声。
殺気を孕んだ冷気が、周囲の空気を締め上げていく。
「謝ったのに……!」
「今さらの謝罪に何の意味がある」
「彼女はもう“俺の女”だ。おまえが切り捨てた命は、俺が拾った」
朱煉の瞳が、血のように燃えていた。
レイリアは一歩、二歩と後ずさる。
その顔から、妹の仮面が剥がれかけていた。
その夜。
私は宿で、朱煉の腕の中にいた。
「……怒ってるのは、私のため?」
「違う」
「じゃあ、何に怒ったの?」
「“おまえの命を軽んじた者”が、のうのうと生きていることに」
「朱煉……」
「俺が喰らうべきだったのは、ああいう“顔だけ似た偽物”だったのかもしれんな」
そう言って、彼は私の髪を掬い、唇を寄せる。
「おまえだけが、俺の“花”だ。誰とも、同じではない」
──その言葉が、呪いのように、嬉しかった。
そして私は決めた。
レイリアを、ただ赦すことはしない。
私の人生を奪った代償を、払わせるまでは。
次回――
第5話『前世の契りと、今夜の誓い』(R18回)
朝、朱煉がそう言って私に差し出したのは、濃紺の封蝋が押された手紙だった。
王族主催の神事。かつては私のような貴族令嬢にとって、誇らしい社交の場だったが――今となっては、忌々しい記憶の残る場所。
「……私を、都へ戻すつもりですか?」
「戻るというより、“晒しに行く”つもりだ」
朱煉は、涼しげに言った。
「断罪された令嬢が、今や“鬼神の花嫁”として生きている。……面白い見世物だと思わんか?」
「性格が悪いですね」
「おまえには言われたくない」
それでも彼がわざわざ王都へ行くと決めたのは、きっと“何か”を見せるためだ。
あるいは――見せつけるために。
王都に近づくにつれ、私の胸はざわめいていた。
あの日、断罪された広場。私に石を投げた令嬢たち。
そして、私の“居場所”を奪った、妹。
──レイリア。
双子の妹。
顔は瓜二つだが、気質はまるで違った。
私は無愛想で地味。彼女は社交的で、愛らしかった。
「……どうせ、王都は今も彼女の味方です」
「なら、ぶち壊せばいい」
朱煉の言葉はいつも極端で、だからこそ私の理性を軽く越えてくる。
「おまえを蔑んだ連中の顔が歪むのを、俺は見たい」
「……性格が悪いですね(再)」
「それは、おまえを選んだ男だからだ」
祭祀は、王都の大神殿で行われた。
厳かな空気。白装束の神官たち。
だがその中に、私は“忌み者”として通された。
そのとき――
「……お姉さま?」
その声に、全身が硬直した。
振り返ると、そこにはかつての“私”がいた。
いや、“私の顔をした彼女”が。
「……久しぶりね、レイリア」
「まさか、本当に朱煉様の……?」
「嫁いだわ」
レイリアの瞳が、僅かに揺れた。
朱煉が後ろから歩み寄り、私の肩に手を置く。
「この女は、俺の“妻”だ。何か文句でも?」
「い、いえ……ただ、驚いて……」
気まずい空気が流れる中、レイリアが突然、無垢な声で言った。
「お姉さま……ごめんなさい。私、ずっと罪悪感があって……本当は、断罪されるべきだったのは私なの。あなたが身代わりになったって、知ってた」
その言葉に、私は凍りついた。
「……それを、今ここで言うの?」
「うん。今なら、赦してもらえるかなって……」
その瞬間、朱煉の手がわずかに震えたのを、私は感じた。
「貴様、ふざけているのか?」
低く、抑えられた声。
殺気を孕んだ冷気が、周囲の空気を締め上げていく。
「謝ったのに……!」
「今さらの謝罪に何の意味がある」
「彼女はもう“俺の女”だ。おまえが切り捨てた命は、俺が拾った」
朱煉の瞳が、血のように燃えていた。
レイリアは一歩、二歩と後ずさる。
その顔から、妹の仮面が剥がれかけていた。
その夜。
私は宿で、朱煉の腕の中にいた。
「……怒ってるのは、私のため?」
「違う」
「じゃあ、何に怒ったの?」
「“おまえの命を軽んじた者”が、のうのうと生きていることに」
「朱煉……」
「俺が喰らうべきだったのは、ああいう“顔だけ似た偽物”だったのかもしれんな」
そう言って、彼は私の髪を掬い、唇を寄せる。
「おまえだけが、俺の“花”だ。誰とも、同じではない」
──その言葉が、呪いのように、嬉しかった。
そして私は決めた。
レイリアを、ただ赦すことはしない。
私の人生を奪った代償を、払わせるまでは。
次回――
第5話『前世の契りと、今夜の誓い』(R18回)
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