落ちこぼれ予言者と、世界を救うただの少年

春夜夢

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逃走と誓い、そして“未来を外す力”

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「……よくやったな。まさか、あんな自然に嘘をつけるとは思わなかった」

 診療所を離れ、村の裏山の獣道を歩きながら、レントがぽつりと呟いた。

「慣れてるんだよ、未来が見えると、“嘘”をつかないと守れないことが多くてさ」

 フィノは足を止め、振り返る。

「でも……今のは、賭けだった。あの人、“ただの騎士”じゃない。未来が見えなかったの、あの人が初めて」

「未来が、見えない?」

「うん。私の“未来視”が通じなかったの。つまり、あの人の周囲には“普通じゃない何か”があるってこと」

 空は茜色に染まりつつあり、木々の影が二人を包み込む。
 その中で、フィノの瞳だけが静かに燃えていた。

「──私さ。今まで、“未来を外すこと”が怖かった」

「え?」

「未来が見えたとき、“それを変えようとすること”で、どんどん自分の予言が信じられなくなったんだ。
 でもね、今なら分かる。予言って、“その通りになるもの”じゃなくて、“変えるためにあるもの”だって」

 レントは黙って聞いていたが、やがて小さく頷いた。

「……僕も、逃げることしか考えてなかった。でも、あのとき──君が“助ける”って言ってくれたから、まだここにいる」

「じゃあさ」

 フィノはまっすぐに彼を見つめた。

「一緒に行かない? 世界を“未来通りに終わらせない”ために」

 レントの瞳が揺れた。けれどその中には、確かな決意が生まれつつあった。

「……分かった。君の未来視が“外れる”なら、僕はその“例外”になってやる」

 二人の間に交わされたのは、誰にも知られない、小さな誓い。

 けれどそれが──
 やがて世界の命運を左右する、“始まりの一歩”となることを、まだ誰も知らなかった。
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