落ちこぼれ予言者と、世界を救うただの少年

春夜夢

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神の塔・黎明の扉

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高原の果てに、それはあった。
 まるで空に突き刺すようにそびえ立つ、真白な塔──《神の塔》。

 周囲に人影はない。けれど空気には、確かに“何か”の視線が混じっている。

「ここが……神々が最後に姿を見せた場所」

 フィノの声は、風の中に消えた。
 塔は無言で彼女たちを迎えていた。

 正面の扉は閉ざされている。だが、レントが記憶石の欠片を掲げると──

 ──ガガガ……

 白い石の扉が音を立てて開いていく。
 まるで、レントの“中にある何か”を認識したかのように。

「これが、“鍵の資格”……」

 二人は、ゆっくりと塔の中へと足を踏み入れた。

 中は、まるで“空そのもの”を閉じ込めたような静けさと透明さがあった。
 広がる円形の広間。その中央に立つのは、一本の柱と──

 その前に佇む、黒衣の男。

「……やっと来たか」

「ゼイン……!」

 ゼイン・ハルヴァード。導律騎士団・特務隊長。
 フィノの未来視が通じない唯一の存在。

「ここで待っていた。“滅びの器”と、その“導き手”が来るのを」

「どうしてそこまでして、レントを追うの? 彼は、破壊するための存在なんかじゃない!」

「だからだ」

 ゼインは、静かに言った。

「器に“自我”が芽生えた。
 選択の自由を得たその時点で、神々の支配は崩れ始める。
 ──だがそれは、“もう一つの滅び”を意味する」

「もう一つの……?」

「選択肢を持つ者には、必ず“迷い”が生まれる。
 そして迷いが“正解なき未来”を連れてくる。
 我々はそれを、“裁定不能の混沌”と呼ぶ」

「……!」

「器が暴走すれば、この世界は選別されることもなく、ただ滅びる。
 だからこそ、君たちが“本当に鍵たりえるか”を見極める必要がある」

 ゼインが片手を上げると、塔の床が淡く光り始めた。

「第一の試練だ。器と導き手──その絆の強さを証明してみせろ。
 ──さもなくば、ここで“閉ざされる”」

 塔が、震え始める。

 光に包まれた空間の中、レントとフィノは同時に立ち上がった。

「レント、信じてる。未来は変えられるって、あなたが教えてくれたから」

「フィノ……僕はもう、誰かに“選ばれる”存在じゃない。
 君と一緒に、“選ぶ側”に立ちたい」

 二人の意志が重なった瞬間、塔が放つ光が揺れ、形を変えた。

 そして──
 第一の扉が、開かれた。
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