落ちこぼれ予言者と、世界を救うただの少年

春夜夢

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そして、選ばれなかった未来へ

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朝靄が晴れ、風が静かに草原を撫でていく。
 塔のあった場所には、今や何も残っていなかった。
 けれど、そこに“確かに存在していた時間”だけが、やわらかく空気を震わせていた。

 フィノとレントは、なだらかな丘の上に座っていた。

「ねぇ、レント。……もし、あの時“滅び”を選んでたら、どうなってたと思う?」

 フィノの問いに、レントはしばらく空を見上げたまま、そっと答える。

「きっと、世界は終わってたと思う。
 でもね──誰にも知られないまま終わる未来があったとしても、
 今この瞬間、君とこうしていられる“今”を、僕は選んでよかったって思える」

 フィノが、ふっと笑った。

「私も。……未来視なんて、もういらないなって思ったの。
 今のあなたを、ちゃんと“自分の目で見ていたい”から」

 風が、二人の髪をそっと揺らした。

 その後、世界は少しずつ変わっていった。

 神殿の預言士たちは力を失い、人々は“自分たちで未来を選ぶ”という生き方に戸惑いながらも歩き始めた。

 導律騎士団は解体され、ゼインの名は記録から静かに消えた。
 ただ一部の者たちの間では、こう囁かれていた。

 「かつて世界を託された少年と、彼を導いた少女がいた」と。

 ──ある日のこと。

 旅の途中、街の片隅でレントは、古ぼけた預言書の断片を見つける。

 そこには、こう記されていた。

 『世界は選ばれなかった未来の上に成り立っている。
 だからこそ、今を生きるすべての者に、選ぶ資格がある』

 レントは静かにそれを閉じ、フィノと目を合わせた。

「まだまだ、旅は続きそうだね」

「うん。でも、大丈夫。次に迷ったら……また一緒に、選べばいいから」

 その言葉とともに、二人は歩き出す。

 神のいない、新しい時代のはじまり。
 そして選ばれなかった未来の、その先へ──


『落ちこぼれ予言者と、世界を救うただの少年』
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