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翌朝、吉岡はスマホの通知音で目を覚ました。
まだカーテンの隙間から差し込む光は柔らかく、時計は午前9時を指している。
寝ぼけたまま手を伸ばし、画面を見た瞬間――心臓が一気に冷えた。
> 【#桐生翔真】
「人気女優・西崎彩香とお泊まり!?」
「“親密そうな様子”とファンがSNSに投稿」
#熱愛疑惑 #芸人 #ランナウェイズ #桐生翔真
スクロールする指が震える。
画面には、桐生と見知らぬ女性が並んで歩く写真。
夜の街、帽子とマスクで顔を隠してはいるけれど――桐生の歩き方を、吉岡は知っている。
間違いなく、本人だった。
「……なんだよ、これ」
胸の奥がぎゅっと締め付けられる。
“ただの噂”だと分かっていても、冷静ではいられなかった。
いつも隣にいるはずの桐生が、自分の知らない顔で誰かといる。
その事実だけで、こんなにも息苦しくなるなんて。
枕元のスマホが震えた。
着信――桐生。
「……おはよ」
「おい、起きたか?」
いつもの軽い声。
まるで何もなかったかのような調子に、余計に心がざらついた。
「……ああ。ニュース見た」
「だろ? 朝からマネージャーにめっちゃ電話きた。ウケるよな」
「ウケねぇよ」
一瞬で、空気が変わった。
桐生の笑い声が止まる。
電話越しの沈黙が、数秒だけ続いた。
「……ただの共演者だよ。番組の打ち上げ」
「……ふーん」
「ふーんって」
「別に、どうでもいいし」
言いながら、胸の奥は全然“どうでもよく”なかった。
喉が焼けるみたいに熱い。
心臓の奥が、じくじくと痛む。
「なあ、なんでそんな言い方すんの?」
「してねぇし」
「……吉岡」
桐生の声が、少し低くなる。
舞台の上とは違う、“素”のトーン。
その声に、心臓が反応してしまう自分が悔しかった。
「お前、もしかして……嫉妬してんの?」
「は!? してねぇし!」
「してるじゃん、声でバレバレ」
「……ふざけんな」
桐生が小さく笑った。
けれど、それはいつもの軽口じゃなかった。
甘くて、少しだけ優しくて――吉岡の胸をかき乱す声だった。
「俺さ、あのニュース、見て笑っちまった」
「……なんで」
「お前、どう反応するか、ちょっと想像してた」
「……は?」
「嫉妬してくれんの、ちょっと嬉しい」
息が止まった。
冗談みたいに言うのに、声の奥が本気だった。
「……バカじゃねぇの」
「お前、そういうとこ、かわいすぎ」
その瞬間、心臓が――ドクン、と跳ねた。
スマホを持つ指先が熱くなる。
顔が勝手に熱を帯びて、息がうまくできなかった。
「……俺、今、顔真っ赤にしてんだろ?」
「うん。想像できる」
「……やめろよ、そういうの」
「俺、好きなんだよな。お前のそういう顔」
その“好き”という一言が、喉に引っかかる。
まるで、胸の奥に直接押し込まれたみたいに、痛くて、甘くて、苦しい。
「……桐生」
「ん?」
「……そういうこと、簡単に言うな」
「簡単じゃねぇよ」
桐生の声が静かになった。
息の混じる低い声。
本気の声。
「俺、お前にしか言わねぇから」
息が、止まった。
言葉が、出てこなかった。
胸の奥で何かが――静かに音を立てて崩れていくのを感じた。
「今夜、いつものとこ、来いよ」
「……ネタ合わせ?」
「それもあるけど……それだけじゃねぇ」
桐生の声が、ほんの少し、低く笑った。
その音だけで、吉岡の身体の奥が熱くなる。
「……分かった」
「んじゃ、あとでな」
通話が切れたあと、吉岡はしばらくスマホを握りしめたまま、動けなかった。
胸の奥で膨らんでいくのは、はっきりとした嫉妬と――抑えきれない“想い”。
相方以上の存在。
それを、もう認めないわけにはいかなかった。
まだカーテンの隙間から差し込む光は柔らかく、時計は午前9時を指している。
寝ぼけたまま手を伸ばし、画面を見た瞬間――心臓が一気に冷えた。
> 【#桐生翔真】
「人気女優・西崎彩香とお泊まり!?」
「“親密そうな様子”とファンがSNSに投稿」
#熱愛疑惑 #芸人 #ランナウェイズ #桐生翔真
スクロールする指が震える。
画面には、桐生と見知らぬ女性が並んで歩く写真。
夜の街、帽子とマスクで顔を隠してはいるけれど――桐生の歩き方を、吉岡は知っている。
間違いなく、本人だった。
「……なんだよ、これ」
胸の奥がぎゅっと締め付けられる。
“ただの噂”だと分かっていても、冷静ではいられなかった。
いつも隣にいるはずの桐生が、自分の知らない顔で誰かといる。
その事実だけで、こんなにも息苦しくなるなんて。
枕元のスマホが震えた。
着信――桐生。
「……おはよ」
「おい、起きたか?」
いつもの軽い声。
まるで何もなかったかのような調子に、余計に心がざらついた。
「……ああ。ニュース見た」
「だろ? 朝からマネージャーにめっちゃ電話きた。ウケるよな」
「ウケねぇよ」
一瞬で、空気が変わった。
桐生の笑い声が止まる。
電話越しの沈黙が、数秒だけ続いた。
「……ただの共演者だよ。番組の打ち上げ」
「……ふーん」
「ふーんって」
「別に、どうでもいいし」
言いながら、胸の奥は全然“どうでもよく”なかった。
喉が焼けるみたいに熱い。
心臓の奥が、じくじくと痛む。
「なあ、なんでそんな言い方すんの?」
「してねぇし」
「……吉岡」
桐生の声が、少し低くなる。
舞台の上とは違う、“素”のトーン。
その声に、心臓が反応してしまう自分が悔しかった。
「お前、もしかして……嫉妬してんの?」
「は!? してねぇし!」
「してるじゃん、声でバレバレ」
「……ふざけんな」
桐生が小さく笑った。
けれど、それはいつもの軽口じゃなかった。
甘くて、少しだけ優しくて――吉岡の胸をかき乱す声だった。
「俺さ、あのニュース、見て笑っちまった」
「……なんで」
「お前、どう反応するか、ちょっと想像してた」
「……は?」
「嫉妬してくれんの、ちょっと嬉しい」
息が止まった。
冗談みたいに言うのに、声の奥が本気だった。
「……バカじゃねぇの」
「お前、そういうとこ、かわいすぎ」
その瞬間、心臓が――ドクン、と跳ねた。
スマホを持つ指先が熱くなる。
顔が勝手に熱を帯びて、息がうまくできなかった。
「……俺、今、顔真っ赤にしてんだろ?」
「うん。想像できる」
「……やめろよ、そういうの」
「俺、好きなんだよな。お前のそういう顔」
その“好き”という一言が、喉に引っかかる。
まるで、胸の奥に直接押し込まれたみたいに、痛くて、甘くて、苦しい。
「……桐生」
「ん?」
「……そういうこと、簡単に言うな」
「簡単じゃねぇよ」
桐生の声が静かになった。
息の混じる低い声。
本気の声。
「俺、お前にしか言わねぇから」
息が、止まった。
言葉が、出てこなかった。
胸の奥で何かが――静かに音を立てて崩れていくのを感じた。
「今夜、いつものとこ、来いよ」
「……ネタ合わせ?」
「それもあるけど……それだけじゃねぇ」
桐生の声が、ほんの少し、低く笑った。
その音だけで、吉岡の身体の奥が熱くなる。
「……分かった」
「んじゃ、あとでな」
通話が切れたあと、吉岡はしばらくスマホを握りしめたまま、動けなかった。
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相方以上の存在。
それを、もう認めないわけにはいかなかった。
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