3 / 10
3
しおりを挟む
翌朝、吉岡はスマホの通知音で目を覚ました。
まだカーテンの隙間から差し込む光は柔らかく、時計は午前9時を指している。
寝ぼけたまま手を伸ばし、画面を見た瞬間――心臓が一気に冷えた。
> 【#桐生翔真】
「人気女優・西崎彩香とお泊まり!?」
「“親密そうな様子”とファンがSNSに投稿」
#熱愛疑惑 #芸人 #ランナウェイズ #桐生翔真
スクロールする指が震える。
画面には、桐生と見知らぬ女性が並んで歩く写真。
夜の街、帽子とマスクで顔を隠してはいるけれど――桐生の歩き方を、吉岡は知っている。
間違いなく、本人だった。
「……なんだよ、これ」
胸の奥がぎゅっと締め付けられる。
“ただの噂”だと分かっていても、冷静ではいられなかった。
いつも隣にいるはずの桐生が、自分の知らない顔で誰かといる。
その事実だけで、こんなにも息苦しくなるなんて。
枕元のスマホが震えた。
着信――桐生。
「……おはよ」
「おい、起きたか?」
いつもの軽い声。
まるで何もなかったかのような調子に、余計に心がざらついた。
「……ああ。ニュース見た」
「だろ? 朝からマネージャーにめっちゃ電話きた。ウケるよな」
「ウケねぇよ」
一瞬で、空気が変わった。
桐生の笑い声が止まる。
電話越しの沈黙が、数秒だけ続いた。
「……ただの共演者だよ。番組の打ち上げ」
「……ふーん」
「ふーんって」
「別に、どうでもいいし」
言いながら、胸の奥は全然“どうでもよく”なかった。
喉が焼けるみたいに熱い。
心臓の奥が、じくじくと痛む。
「なあ、なんでそんな言い方すんの?」
「してねぇし」
「……吉岡」
桐生の声が、少し低くなる。
舞台の上とは違う、“素”のトーン。
その声に、心臓が反応してしまう自分が悔しかった。
「お前、もしかして……嫉妬してんの?」
「は!? してねぇし!」
「してるじゃん、声でバレバレ」
「……ふざけんな」
桐生が小さく笑った。
けれど、それはいつもの軽口じゃなかった。
甘くて、少しだけ優しくて――吉岡の胸をかき乱す声だった。
「俺さ、あのニュース、見て笑っちまった」
「……なんで」
「お前、どう反応するか、ちょっと想像してた」
「……は?」
「嫉妬してくれんの、ちょっと嬉しい」
息が止まった。
冗談みたいに言うのに、声の奥が本気だった。
「……バカじゃねぇの」
「お前、そういうとこ、かわいすぎ」
その瞬間、心臓が――ドクン、と跳ねた。
スマホを持つ指先が熱くなる。
顔が勝手に熱を帯びて、息がうまくできなかった。
「……俺、今、顔真っ赤にしてんだろ?」
「うん。想像できる」
「……やめろよ、そういうの」
「俺、好きなんだよな。お前のそういう顔」
その“好き”という一言が、喉に引っかかる。
まるで、胸の奥に直接押し込まれたみたいに、痛くて、甘くて、苦しい。
「……桐生」
「ん?」
「……そういうこと、簡単に言うな」
「簡単じゃねぇよ」
桐生の声が静かになった。
息の混じる低い声。
本気の声。
「俺、お前にしか言わねぇから」
息が、止まった。
言葉が、出てこなかった。
胸の奥で何かが――静かに音を立てて崩れていくのを感じた。
「今夜、いつものとこ、来いよ」
「……ネタ合わせ?」
「それもあるけど……それだけじゃねぇ」
桐生の声が、ほんの少し、低く笑った。
その音だけで、吉岡の身体の奥が熱くなる。
「……分かった」
「んじゃ、あとでな」
通話が切れたあと、吉岡はしばらくスマホを握りしめたまま、動けなかった。
胸の奥で膨らんでいくのは、はっきりとした嫉妬と――抑えきれない“想い”。
相方以上の存在。
それを、もう認めないわけにはいかなかった。
まだカーテンの隙間から差し込む光は柔らかく、時計は午前9時を指している。
寝ぼけたまま手を伸ばし、画面を見た瞬間――心臓が一気に冷えた。
> 【#桐生翔真】
「人気女優・西崎彩香とお泊まり!?」
「“親密そうな様子”とファンがSNSに投稿」
#熱愛疑惑 #芸人 #ランナウェイズ #桐生翔真
スクロールする指が震える。
画面には、桐生と見知らぬ女性が並んで歩く写真。
夜の街、帽子とマスクで顔を隠してはいるけれど――桐生の歩き方を、吉岡は知っている。
間違いなく、本人だった。
「……なんだよ、これ」
胸の奥がぎゅっと締め付けられる。
“ただの噂”だと分かっていても、冷静ではいられなかった。
いつも隣にいるはずの桐生が、自分の知らない顔で誰かといる。
その事実だけで、こんなにも息苦しくなるなんて。
枕元のスマホが震えた。
着信――桐生。
「……おはよ」
「おい、起きたか?」
いつもの軽い声。
まるで何もなかったかのような調子に、余計に心がざらついた。
「……ああ。ニュース見た」
「だろ? 朝からマネージャーにめっちゃ電話きた。ウケるよな」
「ウケねぇよ」
一瞬で、空気が変わった。
桐生の笑い声が止まる。
電話越しの沈黙が、数秒だけ続いた。
「……ただの共演者だよ。番組の打ち上げ」
「……ふーん」
「ふーんって」
「別に、どうでもいいし」
言いながら、胸の奥は全然“どうでもよく”なかった。
喉が焼けるみたいに熱い。
心臓の奥が、じくじくと痛む。
「なあ、なんでそんな言い方すんの?」
「してねぇし」
「……吉岡」
桐生の声が、少し低くなる。
舞台の上とは違う、“素”のトーン。
その声に、心臓が反応してしまう自分が悔しかった。
「お前、もしかして……嫉妬してんの?」
「は!? してねぇし!」
「してるじゃん、声でバレバレ」
「……ふざけんな」
桐生が小さく笑った。
けれど、それはいつもの軽口じゃなかった。
甘くて、少しだけ優しくて――吉岡の胸をかき乱す声だった。
「俺さ、あのニュース、見て笑っちまった」
「……なんで」
「お前、どう反応するか、ちょっと想像してた」
「……は?」
「嫉妬してくれんの、ちょっと嬉しい」
息が止まった。
冗談みたいに言うのに、声の奥が本気だった。
「……バカじゃねぇの」
「お前、そういうとこ、かわいすぎ」
その瞬間、心臓が――ドクン、と跳ねた。
スマホを持つ指先が熱くなる。
顔が勝手に熱を帯びて、息がうまくできなかった。
「……俺、今、顔真っ赤にしてんだろ?」
「うん。想像できる」
「……やめろよ、そういうの」
「俺、好きなんだよな。お前のそういう顔」
その“好き”という一言が、喉に引っかかる。
まるで、胸の奥に直接押し込まれたみたいに、痛くて、甘くて、苦しい。
「……桐生」
「ん?」
「……そういうこと、簡単に言うな」
「簡単じゃねぇよ」
桐生の声が静かになった。
息の混じる低い声。
本気の声。
「俺、お前にしか言わねぇから」
息が、止まった。
言葉が、出てこなかった。
胸の奥で何かが――静かに音を立てて崩れていくのを感じた。
「今夜、いつものとこ、来いよ」
「……ネタ合わせ?」
「それもあるけど……それだけじゃねぇ」
桐生の声が、ほんの少し、低く笑った。
その音だけで、吉岡の身体の奥が熱くなる。
「……分かった」
「んじゃ、あとでな」
通話が切れたあと、吉岡はしばらくスマホを握りしめたまま、動けなかった。
胸の奥で膨らんでいくのは、はっきりとした嫉妬と――抑えきれない“想い”。
相方以上の存在。
それを、もう認めないわけにはいかなかった。
0
あなたにおすすめの小説
悋気応変!
七賀ごふん
BL
激務のイベント会社に勤める弦美(つるみ)は、他人の“焼きもち”を感じ取ると反射的に号泣してしまう。
厄介な体質に苦しんできたものの、感情を表に出さないクールな幼なじみ、友悠(ともひさ)の存在にいつも救われていたが…。
──────────
クール&独占欲強め×前向き&不幸体質。
◇BLove様 主催コンテスト 猫野まりこ先生賞受賞作。
◇プロローグ漫画も公開中です。
表紙:七賀ごふん
入社1ヶ月のワンコ系男子が、知らずのうちに射止めたのはイケメン社長!?
monteri
BL
CM制作会社の新入社員、藤白純太は入社1ヶ月で教育係の先輩が過労で倒れたため、特別なクライアントの担当を引き継ぐことになる。
そのクライアントは、女子禁制ミーハー厳禁の芸能事務所だった。
主人公の無知で純なところに、翻弄されたり、骨抜きにされるイケメン社長と、何も知らない純太がドキドキするお話です。
※今回の表紙はAI生成です
※小説家になろうにも公開してます
なぜか大好きな親友に告白されました
結城なぎ
BL
ずっと好きだった親友、祐也に告白された智佳。祐也はなにか勘違いしてるみたいで…。お互いにお互いを好きだった2人が結ばれるお話。
ムーンライトノベルズのほうで投稿した話を短編にまとめたものになります。初投稿です。ムーンライトノベルズのほうでは攻めsideを投稿中です。
嘘をついたのは……
hamapito
BL
――これから俺は、人生最大の嘘をつく。
幼馴染の浩輔に彼女ができたと知り、ショックを受ける悠太。
それでも想いを隠したまま、幼馴染として接する。
そんな悠太に浩輔はある「お願い」を言ってきて……。
誰がどんな嘘をついているのか。
嘘の先にあるものとはーー?
俺の相棒は距離感がおかしい
夕月ねむ
BL
高ランク冒険者パーティの雑用係だった俺は、養父でもあったパーティリーダーの引退で、新しい仲間を探さなければいけなくなった。現れたのは距離感ゼロの人懐こい男。お試しからと言われてパーティを組んだ。
※FANBOXからの転載です。
※他サイトにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる