3 / 20
第3話 “愛してる”は言わない。なのに毎晩、キスで支配される
「今日から、書類審査は一任する。午後には使者の応対だ」
「……かしこまりました」
朝。
淡々と交わされる業務的な言葉。
私たちは結婚していて、昨夜も同じベッドで何度も肌を重ねたというのに――
この男は、まるで何事もなかったかのような態度だった。
私はただ、静かにうなずくだけ。
“それが彼の流儀だ”と、わかっているつもりだったから。
けれど。
(……どうして、こんなに胸がざわつくの)
昨夜、彼は何度も私の名を呼んだ。
触れられるたび、熱を刻まれるたびに、私は彼のものになっていったのに。
それでも――
「愛してる」なんて、彼の口からは一度も聞こえてこない。
その夜も、彼は何も言わずに私の寝室に現れた。
無言のままベッドに腰かけ、私を腕で引き寄せる。
「カイル、様……」
小さく呼ぶと、彼は私の髪をそっとかき上げて――
いきなり唇を塞いできた。
深く、甘く、舌を絡め、唾液を分け合うように。
まるで、言葉など必要ないとでも言うような、熱のこもった口づけだった。
「……君は、キスされるたびに、素直になるな」
「だって、あなた……いつも無口で……っ」
「言葉よりも、俺は触れることで支配したい」
彼の手が頬をなぞり、首筋、鎖骨へと滑る。
その指先は、私の理性ごと柔らかく、ねじ伏せてくる。
「“愛してる”なんて言葉より、身体の方がずっと正確だ」
「……でも、私は……聞きたいです。ちゃんと、言葉で」
ぽつりと漏らした声に、彼は数秒の沈黙の後、ふっと笑った。
「なら、俺の口から聞けるように、もっと俺に夢中になれ」
「え……」
「“お前から俺以外が消えた時”……そのとき、言ってやる」
再び落とされたキスは、さっきよりも深く、
私の“呼吸”そのものを奪っていくような熱だった。
(ずるい人……)
愛してるとは言わない。
だけど、毎晩こうして抱かれて、キスされて、
私は確実に、彼に堕ちていく。
たとえ“愛”が与えられなくても。
もう、離れられない。
その日の夜。
彼は私の首筋にそっと歯を立て、囁いた。
「……印をつける。誰のものか、一目でわかるようにな」
私の身体に残された牙の跡は――
まるで、“飼い主の証”のようだった。
(続く)
「……かしこまりました」
朝。
淡々と交わされる業務的な言葉。
私たちは結婚していて、昨夜も同じベッドで何度も肌を重ねたというのに――
この男は、まるで何事もなかったかのような態度だった。
私はただ、静かにうなずくだけ。
“それが彼の流儀だ”と、わかっているつもりだったから。
けれど。
(……どうして、こんなに胸がざわつくの)
昨夜、彼は何度も私の名を呼んだ。
触れられるたび、熱を刻まれるたびに、私は彼のものになっていったのに。
それでも――
「愛してる」なんて、彼の口からは一度も聞こえてこない。
その夜も、彼は何も言わずに私の寝室に現れた。
無言のままベッドに腰かけ、私を腕で引き寄せる。
「カイル、様……」
小さく呼ぶと、彼は私の髪をそっとかき上げて――
いきなり唇を塞いできた。
深く、甘く、舌を絡め、唾液を分け合うように。
まるで、言葉など必要ないとでも言うような、熱のこもった口づけだった。
「……君は、キスされるたびに、素直になるな」
「だって、あなた……いつも無口で……っ」
「言葉よりも、俺は触れることで支配したい」
彼の手が頬をなぞり、首筋、鎖骨へと滑る。
その指先は、私の理性ごと柔らかく、ねじ伏せてくる。
「“愛してる”なんて言葉より、身体の方がずっと正確だ」
「……でも、私は……聞きたいです。ちゃんと、言葉で」
ぽつりと漏らした声に、彼は数秒の沈黙の後、ふっと笑った。
「なら、俺の口から聞けるように、もっと俺に夢中になれ」
「え……」
「“お前から俺以外が消えた時”……そのとき、言ってやる」
再び落とされたキスは、さっきよりも深く、
私の“呼吸”そのものを奪っていくような熱だった。
(ずるい人……)
愛してるとは言わない。
だけど、毎晩こうして抱かれて、キスされて、
私は確実に、彼に堕ちていく。
たとえ“愛”が与えられなくても。
もう、離れられない。
その日の夜。
彼は私の首筋にそっと歯を立て、囁いた。
「……印をつける。誰のものか、一目でわかるようにな」
私の身体に残された牙の跡は――
まるで、“飼い主の証”のようだった。
(続く)
あなたにおすすめの小説
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
コワモテ軍人な旦那様は彼女にゾッコンなのです~新婚若奥様はいきなり大ピンチ~
3月5日コミカライズ配信♡二階堂まや
恋愛
政治家の令嬢イリーナは社交界の《白薔薇》と称される程の美貌を持ち、不自由無く華やかな生活を送っていた。
彼女は王立陸軍大尉ディートハルトに一目惚れするものの、国内で政治家と軍人は長年対立していた。加えて軍人は質実剛健を良しとしており、彼女の趣味嗜好とはまるで正反対であった。
そのためイリーナは華やかな生活を手放すことを決め、ディートハルトと無事に夫婦として結ばれる。
幸せな結婚生活を謳歌していたものの、ある日彼女は兄と弟から夜会に参加して欲しいと頼まれる。
そして夜会終了後、ディートハルトに華美な装いをしているところを見られてしまって……?
下賜されまして ~戦場の餓鬼と呼ばれた軍人との甘い日々~
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王宮から突然嫁がされた18歳の少女・ソフィアは、冷たい風の吹く屋敷へと降り立つ。迎えたのは、無愛想で人嫌いな騎士爵グラッド・エルグレイム。金貨の袋を渡され「好きにしろ」と言われた彼女は、侍女も使用人もいない屋敷で孤独な生活を始める。
王宮での優雅な日々とは一転、自分の髪を切り、服を整え、料理を学びながら、ソフィアは少しずつ「夫人」としての自立を模索していく。だが、辻馬車での盗難事件や料理の失敗、そして過労による倒れ込みなど、試練は次々と彼女を襲う。
そんな中、無口なグラッドの態度にも少しずつ変化が現れ始める。謝罪とも言えない金貨の袋、静かな気遣い、そして彼女の倒れた姿に見せた焦り。距離のあった二人の間に、わずかな波紋が広がっていく。
これは、王宮の寵姫から孤独な夫人へと変わる少女が、自らの手で居場所を築いていく物語。冷たい屋敷に灯る、静かな希望の光。
⚠️本作はAIとの共同製作です。
唯一の味方だった婚約者に裏切られ失意の底で顔も知らぬ相手に身を任せた結果溺愛されました
ララ
恋愛
侯爵家の嫡女として生まれた私は恵まれていた。優しい両親や信頼できる使用人、領民たちに囲まれて。
けれどその幸せは唐突に終わる。
両親が死んでから何もかもが変わってしまった。
叔父を名乗る家族に騙され、奪われた。
今では使用人以下の生活を強いられている。そんな中で唯一の味方だった婚約者にまで裏切られる。
どうして?ーーどうしてこんなことに‥‥??
もう嫌ーー
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
男嫌いな王女と、帰ってきた筆頭魔術師様の『執着的指導』 ~魔道具は大人の玩具じゃありません~
花虎
恋愛
魔術大国カリューノスの現国王の末っ子である第一王女エレノアは、その見た目から妖精姫と呼ばれ、可愛がられていた。
だが、10歳の頃男の家庭教師に誘拐されかけたことをきっかけに大人の男嫌いとなってしまう。そんなエレノアの遊び相手として送り込まれた美少女がいた。……けれどその正体は、兄王子の親友だった。
エレノアは彼を気に入り、嫌がるのもかまわずいたずらまがいにちょっかいをかけていた。けれど、いつの間にか彼はエレノアの前から去り、エレノアも誘拐の恐ろしい記憶を封印すると共に少年を忘れていく。
そんなエレノアの前に、可愛がっていた男の子が八年越しに大人になって再び現れた。
「やっと、あなたに復讐できる」
歪んだ復讐心と執着で魔道具を使ってエレノアに快楽責めを仕掛けてくる美形の宮廷魔術師リアン。
彼の真意は一体どこにあるのか……わからないままエレノアは彼に惹かれていく。
過去の出来事で男嫌いとなり引きこもりになってしまった王女(18)×王女に執着するヤンデレ天才宮廷魔術師(21)のラブコメです。
※ムーンライトノベルにも掲載しております。
婚活に失敗したら第四王子の家庭教師になりました
春浦ディスコ
恋愛
王立学院に勤めていた二十五歳の子爵令嬢のマーサは婚活のために辞職するが、中々相手が見つからない。そんなときに王城から家庭教師の依頼が来て……。見目麗しの第四王子シルヴァンに家庭教師のマーサが陥落されるお話。
【4話完結】 君を愛することはないと、こっちから言ってみた
紬あおい
恋愛
皇女にべったりな護衛騎士の夫。
流行りの「君を愛することはない」と先に言ってやった。
ザマアミロ!はあ、スッキリした。
と思っていたら、夫が溺愛されたがってる…何で!?