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第15話 胎動と陰謀の胎動――愛の子に迫る影
「……今、動いた……!」
夜の静寂の中、カイル様の胸に頭を預けていた私の手の下で、
確かに、小さな“ぴくり”という感覚が走った。
「お腹……この子、今……!」
「……っ」
カイル様の顔が、見たこともないほど、驚きに揺れる。
そして、無言のまま私の手の上に、自分の手をそっと重ねた。
「……生きてる。俺とお前の、命がここにある」
その声は、限界まで抑えた震えに満ちていた。
「……ありがとう、レオナ」
「違います。こちらこそ、……ありがとう、カイル様」
たったそれだけで、涙が零れた。
命が、確かにここにある。
触れられないのに、誰よりも近くにいる。
それが、こんなにも――幸せだなんて。
だがその一方で――王宮はざわついていた。
「そろそろ始末するべきだ。あの“腹の子”が、処刑人の血を継ぐなど言語道断」
「王位に野心はないなどと信じるか? あのカイルが、“子”を持ったのだぞ」
「レオナ・クローディア。……あの女さえいなければ」
政敵たちの会議の中、静かにひとりの名が浮かび上がる。
そして、放たれる。
“毒”と“女の手”――
懐妊中の妃に最も効果的な、“陰謀の刃”。
カイルはその気配に、いち早く気づいた。
護衛強化。使用人全交代。
すべての寝具の毒検査、食器の魔力反応。
誰ひとりとして、寝室の中に入ることすら許されなくなった。
「これではまるで、幽閉じゃ……」
「違う。お前と子の命が、俺の国家より重い」
彼の瞳は、愛ゆえに狂気に近かった。
「誰にも、触れさせない。たとえ、お前自身にすら」
その夜。
私はカイルに言った。
「もし私が、あなたを弱くする存在なら……」
「それでもいい。弱くなったって、お前がそばにいるなら、それが俺の強さだ」
抱きしめられる腕は、震えていた。
恐れていたのだ。
この手から、何かを失うことを。
愛が深くなるほど、守るべきものが増えていく。
その重さは、きっと――
誰よりも、“処刑人”には耐えがたいものだった。
外の世界は、確実に彼女と子を狙っている。
カイルは、それを知りながらも、
その命を、決して“誰にも奪わせない”と誓っていた。
すでに――彼の中では、世界と、妻と子を秤にかける気などなかった。
(続く)
夜の静寂の中、カイル様の胸に頭を預けていた私の手の下で、
確かに、小さな“ぴくり”という感覚が走った。
「お腹……この子、今……!」
「……っ」
カイル様の顔が、見たこともないほど、驚きに揺れる。
そして、無言のまま私の手の上に、自分の手をそっと重ねた。
「……生きてる。俺とお前の、命がここにある」
その声は、限界まで抑えた震えに満ちていた。
「……ありがとう、レオナ」
「違います。こちらこそ、……ありがとう、カイル様」
たったそれだけで、涙が零れた。
命が、確かにここにある。
触れられないのに、誰よりも近くにいる。
それが、こんなにも――幸せだなんて。
だがその一方で――王宮はざわついていた。
「そろそろ始末するべきだ。あの“腹の子”が、処刑人の血を継ぐなど言語道断」
「王位に野心はないなどと信じるか? あのカイルが、“子”を持ったのだぞ」
「レオナ・クローディア。……あの女さえいなければ」
政敵たちの会議の中、静かにひとりの名が浮かび上がる。
そして、放たれる。
“毒”と“女の手”――
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カイルはその気配に、いち早く気づいた。
護衛強化。使用人全交代。
すべての寝具の毒検査、食器の魔力反応。
誰ひとりとして、寝室の中に入ることすら許されなくなった。
「これではまるで、幽閉じゃ……」
「違う。お前と子の命が、俺の国家より重い」
彼の瞳は、愛ゆえに狂気に近かった。
「誰にも、触れさせない。たとえ、お前自身にすら」
その夜。
私はカイルに言った。
「もし私が、あなたを弱くする存在なら……」
「それでもいい。弱くなったって、お前がそばにいるなら、それが俺の強さだ」
抱きしめられる腕は、震えていた。
恐れていたのだ。
この手から、何かを失うことを。
愛が深くなるほど、守るべきものが増えていく。
その重さは、きっと――
誰よりも、“処刑人”には耐えがたいものだった。
外の世界は、確実に彼女と子を狙っている。
カイルは、それを知りながらも、
その命を、決して“誰にも奪わせない”と誓っていた。
すでに――彼の中では、世界と、妻と子を秤にかける気などなかった。
(続く)
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