おじさん錬金術師、金を錬成する。出奔する。

双葉珠洲

文字の大きさ
4 / 12

4話。おじさん、頑張る。

しおりを挟む

 コービー市を出ておよそ20日。

 私の出奔はひとりキャンプ生活として落ち着いていた。

 断じて逃走が面倒になったわけではない。

 決してキャンプ生活が楽しくなって目的を忘れているわけではない。

 慢性的な筋肉痛によりスムーズな行動が出来なくなってしまったのでとりあえずは体力回復に注力しようというだけのこと。
 初動で距離を稼げなかったので出来るだけ潜伏期間を伸ばして動ける時が来たら一気に動こうという作戦だ。

 おじさんの体力は簡単に戻らないのだよ。


 おじさんのキャンプ生活は決して楽ではない。

 錬金術のおかげで火と水に困ることはない。
 けれど食料確保は努力が必要。
 運動不足なおじさんが簡単に狩猟できるはずもない。

 一応錬金術で罠や器具を作ることが出来るのだけれど私にはそれを活用する体力がない。
 猪や熊などを狩れるはずもなく、ウサギやネズミの小動物だって難しい。

 それに体力のないおじさんが動き回るのは無謀というもの。
 ウサギやネズミであれば頑張って追い回せば捉えられるかもしれない。
 けれどその時に熊などに襲われれば目も当てられない。
 万全な状態で襲われても危ないのに体力を減らした中で獣に会おうとするのは自殺行為ともいえる。

 一応野草や茸類は確保できているので飢えに苦しむことはなかった。

 けれどそれだけでは満ち足りない。
 おじさんとはいえ肉類も少しは食べたいのだ。

 色々と探した結果、肉っぽいものとして落ち着いたのは蛇と蛙。

 蛇は骨っぽく食べるのに大変ではあるが味は悪くない。
 蛙は草木から抽出した油があるのでそこそこは美味しく頂ける。
 両方とも多少の油があり食べ応えがあるので手に入れられた日は少し生活が豊かになる。

 他にはときおり蟹や川魚が取れるので多少は満足できている。


 決してキャンプが楽しいわけではない。


 住居については木の上に小屋を作った。

 動物除けの香を焚いたところで全てを避けられるわけではない。
 風向きにもよるので安全な道具とは言えない。

 おじさんは疲れて眠れば襲われても起きられない。

 一応罠とかも作れるのだけれど全方位に作るくらいなら小屋を作った方が速い。

 それに地面で寝起きすると虫の餌食になるので対策が必須だった。
 山中の虫は下手な熊や猪より厄介。
 簡単に衣服内に侵入して刺してくるので対処が難しい。
 それも麻痺や場合によっては死に至るような毒を持つものもいるので大変。
 毒だけではなく痒みやかぶれは日常に支障をきたす。

 イライラは全てを投げ出したくなってしまうもの。

 虫の対策にも香が作れないことはないけれど虫ごとに効くものが異なる。
 しっかりとした対策をしようとすると複数必要になり作る手間や時間を考えると効率が悪い。
 素材が集まるかも不明だし材料があったところで生活の大半が香を作るだけで終わってしまう。

 そんなわけで快適な睡眠のために気の上に小屋を建てた。


 木の上であれば集まる虫の数も搾れるので香の量を減らせる。
 加えて余程の獣でなければ襲われることはない。
 屋根も壁も完備しているので雨風もしのげる。
 雨が降り行動できない日などは日がな一日のんびりとすることも出来る。

 ツリーハウスの建築はそこそこ大変だった。
 知識としては前世のおぼろげな記憶があるくらいでそもそも建築は専門外。
 体力の無いおじさんには木の切り出しも簡単ではない。
 一応錬金術を応用すれば木の切断や加工は出来るのだけれど持ち運びは自力なのでかなりの重労働。

 それでも快適な生活のためには大事なので頑張った。


 決してキャンプを楽しんでいる訳ではない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

部屋で寝てたら知らない内に転生ここどこだよぉぉぉ

ケンティ
ファンタジー
うぁー よく寝た さー会社行くかー あ? ここどこだよーぉぉ

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

鬼の兵法伝承者、異世界に転世せしむる

書仙凡人
ファンタジー
俺の名は桜木小次郎。 鬼一法眼を祖とする鬼一兵法の令和の伝承者。 だがある時、なぜか突然死してしまったのだ。 その時、自称神様の変なペンギンが現れて、ファンタジー世界の転生を持ちかけられた。 俺はヤケになって転生受け入れたら、とんでもない素性の奴にログインする事になったのである。 ログイン先は滅亡した国の王子で、従者に毒盛られて殺されたばかり。 なにこれ? クーリングオフねぇのかよ!

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

処理中です...