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第一四話 散った國に残ったもの
しおりを挟む「敵ロケット、突っ込んできます!」
「なに!?あれは敵のジズモだ。全艦最優先で狙え!絶対に通すな!」
敵へ向かった数十の砲門が火を噴く、その信管はVT信管近くを通過しただけで敵を落とせる…はずだった。
頼みのVT信管は敵の後方で炸裂し、機銃弾はみな照準が追い付かず掠りもしない……
「ダメだ。早すぎる……!」
「総員、衝撃に備え……」
船体が揺れ、倒れた直後
轟音が耳を襲う。
視界が歪み、耳鳴りが世界を支配する。
ようやく回復した後に周りを見渡すとそこにかつての壮言な艦の姿はなかった。
ガラスは粉々に割れ、計器類もほとんど生き残っていない。配管は折れ曲がり、警報音が艦内に鳴り響いている。もう、この船はだめだろうな……
「司令部より緊急電!」
「こんな時になんだ!」
「広島に、新型爆弾が投下された模様!」
「っな!あれを、本気で投下したのか…狂ってる。皆、狂ってやがる……」
― 一九四五年 八月九日午前一一時〇二分 長崎県長崎市 ―
その時、世界が光りに包まれた。
一発の爆弾は
空を焼き
大地を焼き
町を焼いた。
土はガラスとなり
木の葉は燃え尽き
その場に延々と燃える炎を残した
そしてやってきたのは灼熱の業火だけではなかった。
同時にやってきたのはあらゆるものを吹き飛ばす暴風
たとえ離れていても
当前のごとくガラスは吹き飛び
家屋は倒壊し
町を一瞬にして焦土へと変えた。
それでもまだ、それは物足りなかった。
最後に、放射能という置き土産をしていったのだ。
気づかぬうちに体を破壊し
逃れられぬ苦しみと死を置いていった。
何年何十年と残る痛みを置いていった。
そして、暴風と灼熱の業火の中に残ったのは町ではなく地獄であった。
死体がそこら中に転がり、瓦礫が散乱し、川は水を求める人で赤黒く染まった。
逃れられぬ死を目前にある者は焼け死に、ある者は渇き死に、ある者は傷口に沸いた蛆虫に苦しみながら死んだ。
そんな惨状を生み出したその名は
原子力爆弾「ファットマン」
通常爆弾の数万倍の威力を誇るそれはたったの一発で街を滅ぼしたのだった。
それから月日は流れ
八月一五日、日本は事実上
降伏した。
本土決戦を予期していた国民は天皇直々の降伏宣言に崩れ落ちた。
今までの努力は何だったんだ?
家族、友人の犠牲は?
俺たちは、何のために……
しかし、そんな、泣いてばかりもいられなかった。アメリカによる占領政策が開始されたのである。
日本は敗戦国であるため、アメリカに何をされても文句は言えない。
否、日本はアメリカの物になるのだ。
皆奔走した。
技術者たちはその努力の結晶を奪われまいと
汗水たらして作った研究資料を燃やし
試作品を破壊し
その身分を隠してその場を離れた。
北の兵士たちは捕虜になるまいと必死に逃げた。
逃げ遅れたものは極寒のシベリアへと送られた。
諸島の兵たちはすでに大半が散り、遺品を預かる兵が白旗を上げた。
親達は必死に生き抜くすべを子に教え、自らも身を粉何して働いた。
男達は自らの家族を隠し、米兵に捕まらぬかと肝を冷やした。
孤児は集い、ここの持つ力を生かし合い自分たちの社会を形成していった。
たとえ戦が終わろうともたくさん死んだし、傷ついた。
しかし、日本という新しい國は確実にたとえ歩幅はバラバラでも確実にどこかへ進んでいっていた。
― 戦争終結から数カ月後 長崎県 長崎市 某所 ―
生き残った。俺は、生き残ったんだ。鈴木を守り抜き、いや、守ってもらったの方が正しいかもしれない。
それでも俺は任務を果たし基地へと帰還した。
やがていつの間にか戦争は終わり、俺は死ぬこともなく家族のもとへ帰ってきた……はずだった。
目の前に広がっているのは……焦土だった。
建物一つ残っていない焦土
和子も鉄男も晴也もいないただただ広がる焦土
落ちているのは白く変わり果てた骸が三つ……
理解した。理解……してしまった。
「なぜ……自分はどこで間違っていたんだ?
長崎まで、ついてこさせたことか?
軍に入ったことか?この國に居続けたことか?
なぁ、何が間違いだったんだよ。和子、教えてくれよ。
鉄男、晴也、笑って、出迎えてくれよ。父ちゃん、帰ってきたぞ……」
完
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最後まで読んでいただきありがとうございました。
世が平和になることを祈っております。
3/19日タコ爺
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