きみにふれたい

広茂実理

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悪戯の1月

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 師走って、こんなにあっという間だったかと思うほど、テストもクリスマスも大晦日も過ぎ去って。私たちは無事、新たな年を迎えた。
 元旦には、自転車を走らせてやってきた彼と正門越しに挨拶を交わし、早速行ってきた初詣のおみくじが大吉だったなどと、少し話をした。
 鼻を赤くして、笑うたびに漏れる息が白くて。雪のちらつく中、見つめ合って。そうして、またねと手を振った。
 事故のことを思い出しても、彼が怖がるようなことは何もなかった。変わらなかった。
 彼の一時の迷いが、決断が、私という人間を終わらせたとしても。それでも、事実が発覚したことで私が彼から離れるなんてことは、ありえない。
 今更ながら、よく自分はあの事故の時に動けたなと、驚いた時は声も出せずに固まってしまうタイプだったことを思い出し、淡い苦笑が漏れた。本当に今でも、咄嗟に突き飛ばすことができたその行動が、信じられない。
「もう少し、自惚れてもいいってことを自覚してもらいたいものだ」
 なんて呟いて、私は着物で着飾った女の子たちを見つめるのだった。
「雪……」
 今年は、また一段と寒そうだ。
 初詣に行くのだろう家族連れや、着物姿の人々をずっと横目に見ながら思う。
 ――私は、まだ大事なことを忘れたままだ。
 彼との出会い。抱えているものの片鱗。最後の瞬間。それらは思い出した。そして、私がここにいる理由も。しかし、まだ何かがあるような気がしてならない。
 それは、あの毒林檎のように、かじるしかなかった私の震える想い。
 それは、開いた手のひらに見えた、戦慄の鮮やかな赤色。
 それは、皮膚の薄い左手首に消えた、紛れもない事実。
「きっと、また思い出す日が来る」
 事故の記憶がそうであったように、ふいにそれはやってくるのだろう。
 そうしてそれは、存外すぐに訪れるのだった。
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