異世界探求者の色探し

西木 草成

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序章の色

第10話 初戦闘の色

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 いや待ってくれよ、普通最初に出会うやつってあのプニプニした愛くるしいやつとかじゃなかったっけ・・・にしてもこいつら揃いも揃ってブスだなぁ、まぁ俺も言えた立場じゃないんだけどね。

「あのぉ・・・これってどうすれば・・・」

「すまない、俺は今動けない・・・一人でやってくれるか?」

 こんのぉ!なんて時にきやがるんだゴブリン共!初戦闘でゴブリンと対峙とかありえないだろ!せめてスライムとか人型じゃないのが良かったよっ!

「・・・わかりました」

「あっ、装備品はちゃんと回収してね!金になるから!」

 お前が戦えぇっ!

 とにかく嘆いていても仕方あるまい、もうガルシアは腰を下ろしてやる気はないようだ、しかしどうだろうか?いきなり剣を構えて斬りつけて装備品を奪うなんて強盗殺人と同等ではないか?まずは信頼関係を築くための第一歩!

「はっ、はろぅ・・・」

「「「キシャァァァアア!!」」」

 うん!、交渉の余地なし!こいつは戦うしかない、にしても何匹だ?ヒィーフゥーミー・・・あぁ!面倒クセェ!

「よぉ~し、お前らも武器持ってんだからこっちも手加減しねぇぞ」
 
 見れば多分15はいるだろうゴブリンは手に刃こぼれしまくった剣やら棍棒などを装備していて、中には簡単ながら胸に薄い鉄板をぶら下げて鎧らしきものまでつけている、チクショオ~ッこちとら作業着に作業ズボンじゃいっ!

「キシャァアア!」

 正面から一匹、大きく剣を振りかぶって結構なスピードで突っ込んでくる、が。

「よっと」

 軽く体を横にずらしその小さい体を躱かわす、そうすると立て続けに。

「「「キシャァアア!」」」

 棍棒に剣、様々な武器を持った奴ら突っ込んでくるがそれらを最小の動作で躱かわして行く。

「フゥ、思ったより結構簡t」

「背後に気をつけろよ」

「!?」

 ガルシアの声で後ろを向くと先ほど躱かわしたゴブリンが棍棒を振り上げて襲いかかろうとしてる、とっさに。

『スクートゥム!』

 バキン!

 鞘が展開され棍棒とぶつかり派手な音を立てる、ちらりとガルシアの方を見ると驚いて目を見開く、ちなみに展開した盾は自然に腰から外れてに収まるので便利極まりない。

「ギッ!?」

 おっ、どうやらこいつも驚いてるな、ならば!

「ギ・・・!?」

「反撃としますか!」

 初めて生き物に剣を入れた瞬間だった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(剣といい、こいつといい一体どうなってやがるんだ・・・)

 額に冷や汗を浮かべながら目の前に起こっている光景に疑問しか湧かないガルシアはただそれを見ているしか術はない。

(にしてもあいつ・・・今まで見たことのない動きをしているがあれがチキュウという星の武術なのか?)

 ショウは前半、敵の攻撃を避けているだけでおそらく初めて出会う魔物に手をくだすのためらったのだろうと思う、しかし謎の魔術を発動した後の攻撃にはしなやかさと同時に相手の隙を読んだ知的なものも感じる。

 それは今の冒険者がただ叩きつける攻撃とは打って変わる洗煉された武術と呼べるものだとガルシアは思った。

(それにあいつの使ってる剣・・・本当に拾ったものか?)

 真っ白な刀身、そこに掘られた図形文字、鞘には謎の穴、見た目は古そうだがその切れ味は魔物を空気のように斬るとこから見ておそらく最高にいいんだろう、その切れ味の良さにはショウ自身も驚いているようだ。

(それにあの魔術だ一体どこで体得したのやら・・・)

 ショウが謎の言葉を放った瞬間、腰に下げていた鞘が広がったと思ったら、彼の腕に収まって盾になっているのだから驚きだ、しかもあれほど大きいのにもかかわらず軽々と片手で持って攻撃を受け止めているのだからまた驚きである。

(さぁて・・・将来が楽しみになってきたなぁ~)

 最初は新たに現れた自分の恋敵に粛清しようと思っていたが今ではすでにショウの行く末を想像するのが楽しくニヤニヤが止まらなくなっていた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「オオォラ!」

 ザシュッ

 確実にゴブリンの肉を割いて絶命させてはいるがまだまだ数は5、6といったところか残っている、まだ体力については問題無い、あるとすれば確実に体力を大幅に削る精神力の消耗だ。

「ハァ・・・ハァ・・・チッ!」

 向こうはまだ手駒が入る、こちらが隙を見せるのは時間の問題だし何より初めて動物を殺す、ましてや人型のをなどと言ったら吐き気の嵐とも戦わなくてはならない。

「ここは一気に片付けるか・・・ガルシアさん!」

「んっ、なんだ?」

「装備品、正直言って無事にならないかもしれませんけど・・・いいですか?」

「まあ、素材だけでも残ってくれるんなら別にいいけど?」

 よかった、これで一気に片付けられる、今このタバコをふかしているジジィには一発、度肝を抜かしてやる。

『レクソス』

 言葉を唱えると剣の刀身の一部の文字が淡く光り、左腕に装着していた盾が元の鞘の形状に戻り腰に収まる、そこでもガルシアは驚いていたが、こっからが俺の真骨頂だ。

「・・・・行きます」

 剣を自分の目線に合わせ複数の相手を正面から睨みつける、いわゆる青眼の構えというやつだ。

「「「ギシャァアアア!!!」」」

 手に斧の、剣などの武器を持ったゴブリンが複数で突っ込んでくる、その姿は地球にいる一般人ならその場にへたり込むだろうが、あいにく俺は一般人じゃあない。

「ハァ・・・・フッ!」

 突っ込んできたゴブリン5匹の剣先を全て読む、それを理解した上で隙のある部位に全て高速な剣で斬りつける対多数、瞬殺必殺の剣術、それはさながら体を叩きつける雨のような斬撃、その技名。            
             
『今一色流いまいしきりゅう 剣術けんじゅつ 時雨しぐれ』

当のガルシアは手からタバコを落としぽっかりと口を開けていた

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「・・・今日だけで17匹のゴブリン・・・ショウは本当に何者なんだ?」

「説明した通り異世界の人間ですよ」

「ハァ~」

 目の前の平原はすでに血の惨劇となっている、たくさんの肉の塊が落ち、草木は青い血に染まってる、この辺りも血の匂いが充満して何度か吐き気がするがそれを飲み込みなんとか平然を保つ。

「よし、装備品は回収したし後処理をして引き上げたいが・・・お前のその服は大丈夫か?」

「えっ?あっ・・・」

 指摘されて自分の体を見てみたがゴブリンの返り血を全身に浴びて真っ青になり、はたから見たら狂的殺人鬼にしか見えない。

「まぁ、今日のこの装備品を金にして新しい服を買うことを勧めるぜ」

「そうですね・・・」

 結構な間使っていたからお気に入りだったけど・・・まぁこの際仕方ない、せっかくの異世界だ、この世界の服を持っていくというのも悪くない、にしても殺った後で言うのはなんだがやっぱりスライム系がよかった・・・

「それじゃあやるか」

『汚れある者たちに火の浄化をもたらしたまえ インキネラーティオ』

 ガルシアが手を前方に向け、何やら厨二病くさいことを言うと一定の範囲で地面が燃え始め、斬り伏せたゴブリンの死体を焼き始める。

 そして死体の焼ける匂いが鼻腔を貫きとうとう地面に吐き戻してしまった。

「おいっ!大丈夫かよ!」

「・・・うっ!大丈夫です・・・一応ゥエェェェ!」

「ま、とにかく今日はお前はよく頑張ったよ・・・お疲れさん」

「ウッェェェェェエ!」

 ちなみに2回目に戻したのは違う意味だ。
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