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11.2-2 裏側エピソード その3
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残されたミイラの横に、砂嵐が現れる。
人ひとり分の大きさの砂嵐から出てきたのは、黒いマントを纏った人間の白骨だ。
そいつはきょろきょろと周りを見る。
ふたつに分かれたミイラを抱えて、鞄に入れるようにマントの中に収納した。
屋敷の外へ移動し、猫や犬が隠れられそうな場所も含めて手当たり次第に探していく。
白骨の後頭部を掻くように手を添えて、屋敷の中へと戻ってきた。
なんの迷いもなく、ある部屋に入る。
そこには、ひび割れた立ち鏡があった。
その前に立ち、眼窩の上を凹ませるように笑った。
そして一気に持ち上げた。
「お前ぇーーー‼ 何してくれてんじゃいぃーーー‼」
陽気でしゃがれた声が、怒りの声音を上げた。
髪はないが、怒髪天だと言わんばかりに。
「つーかっ‼ 雑なマネしてんじゃねぇ‼ 俺なら自殺すら考えられないほどの廃人に追い込むほど心を抉るからなぁ‼ 俺のフリするならせめて攻撃と口調ぐらいしっかりやれよっ‼ やりやがれよぉ‼」
両手をブンブンと振り回し、右足はドンドンと地団太を踏んだ。
「そもそもぉ‼ お前が復讐語んなって話だぁ‼ そのまま引用するんじゃねぇよっ!! お前も困ったちゃんツートップの片割れだろうがぁ‼ 俺の元眷族の体も好き勝手使いやがってぇ‼ 修復するの大変なんだぞぉ‼」
鏡に向かってそう怒りを叫んでも、鏡は怒り叫ぶ姿しか映さない。
その状況に、そいつは盛大な溜息を吐いた。
「ここにきてだんまりかぁ?」
ねっとりとした恨みの声を聞きながら、鏡の両端を持って壁から引き剥がし、乱暴に振り回し始めた。
「俺のやり方が気に食わねぇんだろっ‼ おうおう認めてやるさっ‼ 実に効率が悪いの認めてやるさっ‼ だがお前のためにこっちはやりたくもないのに働いてんだぞっ‼ 復讐代行復讐アドバイスマネージャー南の魔神という最上の優先順位がある中でやってんだぞこっちはぁーーー‼」
鏡に映る姿を数秒見つめ、ポイっと持っていた物を放り出した。
「…………うん。馬鹿馬鹿しくなってきた」
どうでもいいわと言わんばかりの様子で、部屋を出る。
部屋の中から、鏡が割れる音が響く。
「にしても・・・・・・どうすっかねぇ~? 一時的譲ってもらっていた権利取り上げられて追跡できねぇし……」
白骨──南の魔神の本体は困ったような様子で、再び後頭部を掻くように手を添える。
ピエロの分身体に残った記憶を見て、何が起きたのかは把握した。
眷族の亡骸を使ったピエロの姿をした分身体が、あいつに乗っ取られるとは想定していなかった。
その眷族も元は人間だった。
復讐を果たすためだけに全てを投げ捨てて眷族になった。
本人の強い希望もあって、魔族のように消滅することのない亡骸に並列思考を入れて使っていた。
人間の時から使えた幻術と、言葉という凶器で相手を傷つける眷族として能力が残っている分、分身体の中では強い。それもあって、今回は手先の器用さと暴力を必要とする裏方工作に回していた。
同じ理由で眷族になったからこそ、復讐という言葉を借りて死に場所を求めているのが許せないのは知っていた。
いろいろと文句を言っていたが、それでも身の程は弁えていた。
前にその前兆があると別の分身体から連絡はあった。
眷族の体に残った残留意識とは別に、あいつのことも頭にちらついた。だが、あの眷族の体なんだし大丈夫だと過信していた。
乗っ取られたのは、教会にいた全身鎧の分身体が自爆した直後だ。
分身体の調和が乱れた瞬間を狙ったのだろう。
理由は明白。こちらのやり方だ。
問題は、このタイミングが最悪なのだ。
状況が良くないのだ。
暴力頼みの裏方の仕事がまだまだ残っているのに、その戦力になる分身体をほぼ同時に失った。
こういうとき、他の眷族に頼めないのがしんどい。
魔神だって、1人で全てをこなすことはできないのだから。
だが、過ぎたことをずっと考えても仕方が無い。
お邪魔虫野郎を舞台に上がらせただけでも良し。そう前向きに思うことにする。
あちらの復讐が達成できるように、請け負っている復讐代行を進めながら、今まで通り影から準備を行う。
分身体も残り2体。
場合によっては、もう1体追加できるか。
ここからが正念場というものだ。そう気合いをいれた。
何か問題を起こさないかという不安はあるが、考えても仕方ない。
「さーてぇ──続きに戻りますかっと‼」
そう言って、南の魔神は砂嵐と共に消えた。
人ひとり分の大きさの砂嵐から出てきたのは、黒いマントを纏った人間の白骨だ。
そいつはきょろきょろと周りを見る。
ふたつに分かれたミイラを抱えて、鞄に入れるようにマントの中に収納した。
屋敷の外へ移動し、猫や犬が隠れられそうな場所も含めて手当たり次第に探していく。
白骨の後頭部を掻くように手を添えて、屋敷の中へと戻ってきた。
なんの迷いもなく、ある部屋に入る。
そこには、ひび割れた立ち鏡があった。
その前に立ち、眼窩の上を凹ませるように笑った。
そして一気に持ち上げた。
「お前ぇーーー‼ 何してくれてんじゃいぃーーー‼」
陽気でしゃがれた声が、怒りの声音を上げた。
髪はないが、怒髪天だと言わんばかりに。
「つーかっ‼ 雑なマネしてんじゃねぇ‼ 俺なら自殺すら考えられないほどの廃人に追い込むほど心を抉るからなぁ‼ 俺のフリするならせめて攻撃と口調ぐらいしっかりやれよっ‼ やりやがれよぉ‼」
両手をブンブンと振り回し、右足はドンドンと地団太を踏んだ。
「そもそもぉ‼ お前が復讐語んなって話だぁ‼ そのまま引用するんじゃねぇよっ!! お前も困ったちゃんツートップの片割れだろうがぁ‼ 俺の元眷族の体も好き勝手使いやがってぇ‼ 修復するの大変なんだぞぉ‼」
鏡に向かってそう怒りを叫んでも、鏡は怒り叫ぶ姿しか映さない。
その状況に、そいつは盛大な溜息を吐いた。
「ここにきてだんまりかぁ?」
ねっとりとした恨みの声を聞きながら、鏡の両端を持って壁から引き剥がし、乱暴に振り回し始めた。
「俺のやり方が気に食わねぇんだろっ‼ おうおう認めてやるさっ‼ 実に効率が悪いの認めてやるさっ‼ だがお前のためにこっちはやりたくもないのに働いてんだぞっ‼ 復讐代行復讐アドバイスマネージャー南の魔神という最上の優先順位がある中でやってんだぞこっちはぁーーー‼」
鏡に映る姿を数秒見つめ、ポイっと持っていた物を放り出した。
「…………うん。馬鹿馬鹿しくなってきた」
どうでもいいわと言わんばかりの様子で、部屋を出る。
部屋の中から、鏡が割れる音が響く。
「にしても・・・・・・どうすっかねぇ~? 一時的譲ってもらっていた権利取り上げられて追跡できねぇし……」
白骨──南の魔神の本体は困ったような様子で、再び後頭部を掻くように手を添える。
ピエロの分身体に残った記憶を見て、何が起きたのかは把握した。
眷族の亡骸を使ったピエロの姿をした分身体が、あいつに乗っ取られるとは想定していなかった。
その眷族も元は人間だった。
復讐を果たすためだけに全てを投げ捨てて眷族になった。
本人の強い希望もあって、魔族のように消滅することのない亡骸に並列思考を入れて使っていた。
人間の時から使えた幻術と、言葉という凶器で相手を傷つける眷族として能力が残っている分、分身体の中では強い。それもあって、今回は手先の器用さと暴力を必要とする裏方工作に回していた。
同じ理由で眷族になったからこそ、復讐という言葉を借りて死に場所を求めているのが許せないのは知っていた。
いろいろと文句を言っていたが、それでも身の程は弁えていた。
前にその前兆があると別の分身体から連絡はあった。
眷族の体に残った残留意識とは別に、あいつのことも頭にちらついた。だが、あの眷族の体なんだし大丈夫だと過信していた。
乗っ取られたのは、教会にいた全身鎧の分身体が自爆した直後だ。
分身体の調和が乱れた瞬間を狙ったのだろう。
理由は明白。こちらのやり方だ。
問題は、このタイミングが最悪なのだ。
状況が良くないのだ。
暴力頼みの裏方の仕事がまだまだ残っているのに、その戦力になる分身体をほぼ同時に失った。
こういうとき、他の眷族に頼めないのがしんどい。
魔神だって、1人で全てをこなすことはできないのだから。
だが、過ぎたことをずっと考えても仕方が無い。
お邪魔虫野郎を舞台に上がらせただけでも良し。そう前向きに思うことにする。
あちらの復讐が達成できるように、請け負っている復讐代行を進めながら、今まで通り影から準備を行う。
分身体も残り2体。
場合によっては、もう1体追加できるか。
ここからが正念場というものだ。そう気合いをいれた。
何か問題を起こさないかという不安はあるが、考えても仕方ない。
「さーてぇ──続きに戻りますかっと‼」
そう言って、南の魔神は砂嵐と共に消えた。
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