私は逃げます

恵葉

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第二章

本邸への旅 前編

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あれから大急ぎで3日で旅の支度を終えました。
と言っても帰宅した義両親に相談したところ、明後日に出立なさいと言われ、何故?と思ったら、先触れを出して、必要なものは本邸で準備しておくので、移動に掛かる3日分の旅支度でと言われたので。
それなら荷物もさほど嵩張らないし。

なので馬車も、3台で済みました。
私たちが乗る馬車と、侍女や従者が乗る馬車、そしてその荷物の3台です。
他に馬に乗った護衛や馬車の御者数名。
貴族の旅としては少ない方ですが、やっぱり前世と比べると、この世界、旅って大変ね。

領地の本邸までは、馬車で片道約3日掛かります。
往復6日間。
なので現地滞在は、概ね1週間です。
出発して最初のうちは、見慣れぬ風景に、一人で感動して窓に張り付きました。
でも…どこまでも続く、田園風景と、山というか、丘そして森の繰り返し…段々と眠くなってきてしまい、気が付けば眠ってしまっておりました。
おかしな格好で眠っていたようで、昼にアルに揺り起された時には、身体がもうガチガチに固まってしまっていて大変でした。
馬を休ませなくてはいけませんし、馬も人間も、食事も必要です。
しかし私は、何せ寝ていたので、あまりお腹は空いてはいなくて、お茶だけ頂こうと思ったら、体調を心配され。
「動いていないのですから、それほどお腹が空いていなくても、不思議はないですよ?」
と言うも、あまりにも食べるように言われるので、果物を少々頂きました。
多分、私、午後も寝てしまうと思ったんですよね。
我ながらよくそれだけ眠れるものだわとも思いますが。

午後は最初の宿泊地へ向けて、少し急ぎました。
暗くなる前に着きたいですし、出来れば少しでも早く着きたい…なぜなら、やはり薄暗くなると、盗賊とかの危険性が上がるので。
何て事を考えていたら、文字通り何事も無く、無事に到着してしまいました。
何事も無くて良かったわ…。

最初の宿泊地は、小高い丘の上にあり、塀で囲まれた小さな街でした。
塀と言っても、前世の万里の長城のように、中に人が入れて、上を歩けるように前世の軽自動車一台くらいなら通れるのでは?というほどの幅がありました。
宿に到着し、一晩分の荷物を下ろして部屋へ案内していただきました。
大きな宿屋ではないので、アルとアンドレア義兄様は二人で一部屋に。
私も侍女と二人で一部屋にしてもらいました…最初、強く拒否されましたが、私、そもそもそんな大層な育ちでは無いし、一緒の部屋の方が、もしもの時に、防犯上も良いでしょうと説得し、二人で一部屋に。
それでも部屋数はギリギリという状態で、宿屋は前世で言うところのB&Bみたいなものでした。

受付で、手続きをした時、宿の女性の態度が少し、気になりました。
アルやアンドレア義兄様、私たちを上目遣いで見たのです。
それが例えば緊張してとか恥ずかしがってとか、そんな感じではなく、こっそり探るような感じだったのです。
更にその後、私が見ていることに気が付くと、今度は露骨に目を逸らしたのですが、口角が少しだけ上がっていたのです…ニヤリという感じに。
でもそれだけで悪い人とか決めつける事は出来ないし、何か嫌な感じの人だなと思うだけで、何か出来るわけではありませんでした。
それに他の宿に移ろうにも、その街に宿屋は、そこしか無かったのです。
今から他の街へと言っても、既に日が暮れかかっていて、難しいし。
それでも気になったので、アルたちに話してはおきました。
「この宿って、今までに利用したことはあるの?」
「うちが領地へ戻る時とか、毎回ではないけど、割と何回も利用しているよ?
どうかした?」
「ん…あの受付の女性って、いつもあんな感じの人?」
「あぁ…あの女性はあんまり分からないな。
前は老夫婦がやっていたんだよ、あの宿屋。
でももう歳だからと、親戚に宿を譲ると言っていたので、あの女性は前の主の親戚だと思うな。
老夫婦はとても良い人たちだったよ?」
「私の気のせいかもしれないけど、何か違和感を感じるんだよね…。
何か…嫌な感じがするというか…私の勘違いかもしれないけど…。」
アンドレア義兄様も良く分からないという事もあり、一応、警戒はしておこうという事になりました。

部屋に一旦荷物などを置き、食事へ出ました。
食事は、アルとアンドレア義兄様と私は一緒に出ましたが、侍女や従者、御者は二組に分かれて出ました。
この街は、宿屋も一軒しかないけど、食事をする場所も、カフェが一軒、飲み屋が一軒、食堂が一軒あるだけでした。
警戒していることもあり、全員、食堂で食事のみをという事になりました。
食事をし、宿へ戻り、警戒しながらも、ぐっすり眠りました。
翌朝、私たちは早朝に出立すると伝えてあったため、茹で卵やパン、瓶につめた果実水、それにリンゴなどが持って行けるように用意されていました。
荷物を積み、朝食用に用意されたものは、馬車の中で食べるように、中へ持ち込みました。

二日目は、早朝に出たこともあり、一日目よりもかなり予定より早く進むことが出来ました。
昼過ぎには宿泊予定地に到着しそうだったこともあり、急遽、宿泊予定地を変更しました。
当初、泊る予定だったこれまた公爵家が何回も利用していた宿屋には、謝罪し、宿泊費を全額払おうとしたものの、また利用して頂ければと固辞され、せめてと、半額を受け取ってもらって、更に先の街へ向かいました。
夕方少し前に到着した街にも、公爵家御用達の宿があったため、その街へ滞在することになりました。

荷物を下ろし、部屋へ運んでもらいました。
ここは、前世の旅館くらいには部屋数もある、そこそこの大きさの宿でしたが、急な事だったので、ここでも二人一部屋でとお願いしました。
なので私の荷物も、侍女が広げようとした時でした。
「お嬢様…あの…申し訳ございません!」
突然おろおろしながら謝罪するので、何があったのかと思ったら、荷物に入れたと思ったはずの、翌日に着る予定だったドレスが無いと…。
「無いものは仕方がないから、今日、着たドレスを軽く汚れを落として、明日も着れば良いわよ。」
そう答えました。
暫くすると、アルとアンドレア義兄様が部屋へやってきました。
二人とも眉間に皺を寄せ、何かを考えるような顔をしています。
「どうしました?二人とも?」
「リーナちゃん…荷物は何とも無かった?」
「何とも無かったとは?」
「…俺とアンドレアの荷物、入れたはずの明日、着るものが、一部、無いんだよ…。
一人だけなら入れ忘れたのか?って思うけど、二人ともってなるとね…。
しかもここへ来る前に、護衛の者にも聞いたんだけど、皆、何かしらが無くなっているって言うんだよ…。」
「お嬢様のも明日、着る予定だったドレスがありません…。
私の入れ忘れかと思っていたのですが…。」
結局、御者の荷物以外は、全員、何かしらが無くっている事が分かりました。
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